遺言とは何か

「遺言」とは、そもそも何でしょうか。読み方は、「ゆいごん」が普通ですが、法律の専門家は、なぜか「いごん」と読みます。遺言は、法律的には、故人の最終の意思表示です。(ここでも法律の専門家は、「意志」ではなく「意思」という言葉を使います。「こころざし」ではなく「おもい」です。)

ご存知の方も多いと思いますが、法律の世界では、人の意思が極めて重要になっています。人の意思は、公共の福祉に反しない範囲で最大限尊重して、世の中を回していこうとする考え方が法律の世界の基本となっています。

従って、故人がなくなる前の最終の意思表示である遺言は、相続人が何を考えていようとお構いなく、遺言が相続財産の分配方法について優先して適用されることになりますつまり、遺言があれば、親兄弟との話し合いは不要という
ことになります。

ただし、人の意思も公共の福祉に反しない範囲で最大限尊重と申しましたが、この観点で、遺言にも実は制約があります。
(後でお話しますが遺留分というものです。)

遺言がない場合の相続

故人が遺言書を作成しないで亡くなった場合、どのように遺産相続をするのででしようか。この場合は、相続人全員で遺産の分割方法について話し合いを行いますこれを「遺産分割協議」と言います。

相続人全員と言いますが、通常はさらに外野が増えることが多いと思います。
相続人の配偶者やその親族など相続とは直接関係ない人が、相続人の協議の応援団として発言してくることがあります。

従来、兄弟仲は良かったのに相続で揉めるケースは、このような事情があります。ここで円満に話がまとまれば、まだ問題はないのですが、話がこじれれば、いわゆる「争族」になってしまいます。親兄弟の間の争いは、遠慮会釈のない物言いによって、泥沼の様相を呈してくることがあります。

最近の家庭裁判所では、相続がらみの調停事件の件数が増加していると聞いています。

遺言が特に必要となる場合

自分は相続財産が少ないから相続でもめることはないと思っている方は多いと思います。 税金について言えば、相続税には非課税限度
( 基礎控除額 3000万円+法定相続人の数×600万円 )があり、最近の法改正で引き下げられたとはいえ十分免税範囲なのだから問題ないと判断されている方が多いと思います。

しかし、相続税の問題と相続財産の分配は話が全然違っています。例えば、 生前は年金生活で相続財産は自宅のみの場合、どうなるのでしょうか。子供が2人として、妻と子供達でもし争いが生じた場合、最悪のケースは、自宅を処分して金銭で分配し、残された妻は自宅を出なければならなくなります。

手持ちの預貯金が少なければ少ないほど揉めた時の解決方法は自宅処分以外なくなってきます。このような場合こそ、故人が自宅は妻に相続させる旨の遺言を書いておけば、争いは起きなくなる可能性が高くなります。

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