相続した親の実家の敷地が「地目 畑」となっていた場合どうすれば良いですか

親の実家を相続しても「相続による名義変更(相続登記)」を行わないことがあります。相続人が引続き実家に居住するため、実家の登記簿(登記事項証明書)を取得して実家の敷地の地目を確認することはあまり行われないと思います。そのため、実家の敷地の地目が「畑」となっていても気づかないことが多いのです。


しばらく住んでみて実家の老朽化も目立つようになったので実家の建て替えを検討することになったとします。銀行に融資 (住宅ローン) の相談に行って初めて実家の敷地が「畑」になっていたことに気づくことがあるのです。銀行では住宅ローンを組成するにあたって担保となる土地の登記簿を確認しますので、ここで発覚することになります。


土地の地目が「田」や「畑」になっている土地を「農地」といいます。農地は売買するためには、原則として、都道府県知事や農業委員会の許可 (農地法上の許可) が必要になります。そのため融資を行う銀行としては、地目が「畑」である土地に担保権(抵当権)を設定することはできるものの、返済が滞った場合の担保不動産の換価がスムーズにできないことになります。そのため、地目が「畑」のままでは、ローンを組成してくれないと思います。

土地の地目が「畑」となっていても現況が「宅地」のことはよくあります。昔は畑で農業をしていたが、市街化が進んで家を建てて住んでいることも多いのです。税務署は土地の登記簿上の地目が農地でも現況が宅地として利用されていれば宅地としてより重い固定資産税を課してきます。税務署は税収維持のため、こまめに土地や建物の現況を調査しているのです。


( 実家の敷地が「畑」となっていた場合の対応 )

相続した実家の敷地の登記地目が「畑」となっていても現況が畑でなければ土地の「地目変更」を行う必要があります。実家の土地建物の相続による名義変更が行われていない場合は、まず、相続人名義に「相続登記」を行う必要があります。その上で土地の地目を「畑」から「宅地」に変更します。こうすれば銀行も住宅ローンの申出に応じてくれると思います。

なお、地目が「畑」となっていても相続による名義変更(相続登記)をするにあたって農業委員会などの許可は必要ありません。これは売買や贈与等の契約といった当事者の意思に基づいて所有権が移転するものとは異なり、相続は法律上当然に包括承継という効果を生じるものであるからです。従って、農地法上の許可も必要ないことになるのです。



( 農地の地目変更登記について )

農地を農地以外の用途へ転用するには、都道府県知事等の許可を受けるか農業委員会への届出が必要になります。登記記録上の地目が「田」や「畑」である土地について、農地以外の地目に変更するには、「農地に該当しない旨の都道府県知事または農業委員会の証明書」又は「転用許可があったことを証する書面」を地目変更登記の申請書に添付して申請します。

添付がない場合は、登記官は関係農業委員会に農地法4条または5条の許可、届出の有無、対象土地の現況等について照会することとされています。

ここでの「農地に該当しない旨の都道府県知事または農業委員会の証明書」とは、具体的には「農地転用事実確認証明書(転用証明書)」「農地法の適用を受けない事実確認証明書(非農地証明書)」などがあります。各地の農業委員会で発行してくれます。

今回の事例のように、親の実家が市街化区域の住宅地にもかかわらず地目が農地のままになっている場合は、過去に農地転用の届出がなされているものの、地目変更登記を行っていないケースが考えられます。

この場合は、農業委員会に対して農地でなくなった経緯などについて照会し、転用証明書や非農地証明書を発行してもらい地目変更登記を行うことになります。



(まとめ)

相続した実家の敷地の登記地目が「畑」の場合、既に家が建っている以上、土地の現況は宅地となっています。当面は土地の売却も担保供与もない場合でも、できるだけ速やかに地目変更の登記を行う必要があります。

登記の記録と現況が相違している状態はできるだけ早く解消しておいた方が良いからです。

 

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