亡くなった親の不動産の名義が親戚と「共有」になっていた場合はどうすれば良いですか

親が亡くなり親名義の不動産を相続するとき、親戚の方との「共有名義」になっている場合があります。先代の祖父母の相続のとき、親の兄弟と共有名義で相続してそのままとなっていることが原因のことが多いと思います。中には、数代前の相続のケースもあり、よく知らない遠い親戚と共有となっていることもあります。


このようなとき、どのようなことに注意して、何を行っていけば良いかについて考えてみます。

( 最初に行う相続手続 )

まず、最初に行うことは親名義の共有持分の相続手続を行うことです。具体的には、亡くなった親の相続人 (配偶者や子供など) が話し合って誰がその不動産を相続するかを決めます。相続人となった者が親名義の共有持分の相続登記手続を行うことになります。手続きに不安があれば、近くの司法書士に依頼すれば良いと思います。


( 不動産の活用方法 )

不動産の名義変更ができても、その先その不動産をどのようにしていくかという問題が残ります。共有者である親戚の方と日頃の交流があれば、不動産の有効活用方法を話し合うことができます。雑種地ならば駐車場にしたり、賃貸がてきそうな建物であればリフォームをして賃貸住宅にするなど収益物件として活用することができます。得られた収益や必要経費は持ち分割合に応じて分割します。また、合意が得られれば、共有者のどちらかが居宅として利用することもできます。


しかし、親戚の方と交流が全くない場合や名義人の方が既に亡くなっていて誰が相続したのか不明の場合もあります。また、収益不動産の管理には興味がなく不動産を売却して清算したいと考える場合もあります。何も有効活用しないまま固定資産税などの管理費用だけ支払うのは割に合わないからです。親戚と共同して不動産を有効活用する気がない場合は「売却」を考えることになります。

( 共有不動産の売却における問題点 )

共有不動産を売却するには共有者の同意が必要になります。同意が得られれば、共有者が一緒になって不動産を売却します。売却による利益は持ち分に応じて分割することになります。

しかし、共有者が遠い親戚で既に亡くなっているような場合、誰が相続したのか不明の場合があります。この場合は、まず、交渉相手の相続人を探索する必要があります。近い親戚であれば相続関係者の住所や電話番号などの情報は得られる場合が多いと思います。しかし、遠い親戚の場合は意外と難しいと思います。


遠い親戚で探索が難しい場合は、亡くなった共有名義人の戸籍等から共有名義人の相続人を調査していくことになります。ご自身での調査が難しい場合は、弁護士や司法書士に調査を依頼することになります。

相続人が判明したら、相続人の中で誰が不動産の共有持分を相続するのか確認する必要があります。遺言書があるか遺産分割協議が行われているかなどを確認します。まだ、相続する人が決まっていない場合は、早急に決めて共有持分の相続登記をしてもらいます。共有持分の相続登記が行われたら、共有登記の名義人となった親戚の方を相手方として不動産売却の話し合いを行います。合意できれば、一緒に売却手続を行います。

相続人までは確認できたが、誰が相続するかについて簡単には決められない場合は、相続人全員を相手方として話し合いをする必要があります。話し合いをして不動産売却の合意が得られれば、相続人全員と一緒になって売却手続きを行うことになります。この場合は、売却に先立って、不動産の共有名義を各相続人の法定相続分で相続登記をしてもらう必要があります。


( 不動産売却に同意が得られない場合 )

交渉の相手方である共有不動産の名義人が見つかっても交渉の結果売却の合意が得られないことがあります。近い親戚の場合は、あまり波風を立てても問題があるので暫くはそのままにして折を見て再交渉となるかもしれません。

しかし、遠い親戚で交流がこれからもないと考えられる場合は、思い切って売却のための行動を考えたくなります。その場合は、「共有関係の解消」を行うことが必要になります。具体的には、「共有物分割請求訴訟」を遠い親戚宛てに起こすことになります。


(「共有物分割訴訟」とは )

不動産の共有者またはその相続人と協議したものの、不動産売却について合意が得られなかった場合、その不動産を売却することはできません。この場合は、地方裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することによって、共有関係を解消することができます。

裁判所での共有物の分割方法は、①現物分割、②換価分割(競売又は任意売却)、③賠償分割の3種類があります。現物分割は、土地であれば分筆をして分割することです。建物の場合は、通常の場合は分割は難しいと思います。換価分割は、不動産を売却して売却金を分割することです。賠償分割は、一方の共有者が相手方の共有持分を買い取ることです。

令和5年4月1日施行の新民法によれば、現物分割及び賠償分割のいずれもできない場合又は分割によって共有物の価値を著しく減少させる恐れがある場合は競売分割を行うことが明確化されました。

共有物分割請求訴訟を行って共有関係が解消できれば、現物(分筆された土地)は自由に処分することができます。換価分割や賠償分割された場合は、売却したことと同じ状態になりますので満足できます。


( 売却に伴う税金について )

不動産を売却すると「譲渡所得税」が課せられる場合があります。譲渡所得とは不動産を売却したことによって得られた所得のことです。具体的には、不動産売却による収入金額から不動産の取得費と譲渡費用(仲介手数料や登記費用等)を控除したものです。

不動産の取得費は、その不動産を取得した価格のことです。今回のように不動産を相続した場合は、一部の例外を除いて、亡くなった親などが取得した価格を引き継ぎます。

また、相続により取得した不動産をその相続があった日の翌日から相続税申告書の提出期限の翌日以降3年以内に譲渡した場合には、相続税額のうち譲渡した不動産に対応して計算した金額を譲渡所得の計算における取得費に加算することができます。これにより、譲渡所得税の負担を軽減することができます。


(まとめ)

親から相続した不動産の中に親戚の方との共有不動産があった場合、とりあえずは相続登記等の手続きを行うことはできます。しかし、問題はそれだけでは済まされません。後々のことを考える必要があるのです。親戚との円満な話し合いが出来れば問題ない場合も多いと思いますが、場合によっては困難な問題が発生する恐れもあります。

面倒なことにならないためには、親の生前に相続予定の不動産について親戚と「共有関係」になっていないか確認しておくことが必要です。親が存命中であれば、親に今後の取り扱い方法について親戚の方と交渉してもらうこともできます。また、遠い親戚の情報を確認することができるかもしれません。

不動産の「共有」状態は何かと面倒なことになりやすいので十分注意して頂きたいと思います。

 

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