相続した財産の中に「名義株」が含まれていた場合どうすれば良いのですか

預金に「名義預金」があるように株式にも「名義株」が存在します。名義株とは、株主名簿に株主として掲載されている株主と会社に実際に資金を払い込んだ出資者である真の所有者が異なる場合を言います。相続した財産の中に名義株が含まれていた場合、どうすれば良いか悩むことになります。


( 名義株が発生する原因 )

普通は株式の出資者が株式名簿に掲載されて株主となります。名義人と真の所有者が異なることはないはずです。しかし、色々な理由から現実には名義株が発生することがあるのです。特に非上場の中小企業において次のような理由から名義株が発生しています。

◆昔は旧商法の定めにより株式会社を設立するには最低7名の発起人が必要でした。現在は1名でも会社は設立できますが当時はこのような規制がありました。中小企業の設立において7名の出資者を集めることは難しい面がありました。このような場合、実際は創業オーナーが資本金の全額を出資しているにも拘らず、親族や役員、従業員などから名義を借りて形式上発起人が7名いる形にして会社を設立していることが多く見られました。その結果、名義株が発生することになります。

◆同族会社などおいては、自社株の相続における承継が相続税の関係で大きな課題となります。特に成長している企業の場合、自社株の相続税評価額が高くなり相続税負担が重くなります。社長である企業オーナーに自社株が集中している場合、相続税の負担は非常に大きくなります。そこで、オーナーに集中している株式を親族や役員、従業員に分散させ、形式的にオーナーの持ち株比率を下げて相続税の負担を軽減しようとすることがあります。この場合も名義株が発生することになります。

上場株式の場合で名義株式となるケースは、夫が資金を出して妻名義で株式を購入したり、子供名義で株式を取得すれば名義株の発生となります。


( 名義株を放置することの危険性 )

名義株が発生した時点では、名義人も真の所有者もお互いに名義株であることが分かっているため良いのですが、そのまま放置して長い期間が経過すると、名義株であるのかどうか不明になる場合があります。

特に、名義人が亡くなって相続が発生した場合、株式を相続した相続人にとって当時の経緯を知らなければ、名義株だとは思わずに正当に相続したものと勘違いする場合があります。また、当時の経緯を知る者が亡くなっていると名義株であることを証明することが難しくなります。

また、相続税対策で株式の名義を分散させて相続税の申告額を軽減した場合、税務調査で名義株であることが発覚すれば、相続税の計上漏れを指摘されて多額の追徴課税を受ける恐れがあります。

逆に、名義株を正当なものと勘違いして相続した場合、相続人が名義株の分を含めて相続税を申告すれば相続税を過大に納付してしまうことになります。


( 名義株に関する裁判所の考え方 )

裁判所は名義株の真の所有者は誰かについて、新株発行のケースでは、資金の出資者が誰であるかを重要なファクターとして判断しているようです。つまり、株式の名義人ではなく資金の出資者が真の所有者であると判断しているようです。

もちろん、資金の出資状況だけでなく、配当金の帰属先や株主総会で誰が議決権を行使しているかなど色々な要因も加味して総合的に判断されますが、お金の出どころが特に重視されているようです。

裁判になれば、出資金提供時の通帳の入出金履歴や株式申込証、領収書などが証拠書類となると思われます。

名義株となってから年月が経過して当時の状況を証明できるものがない場合は、名義株のその後の運用管理状況を見て判断されているようです。誰が配当金を受領しているか、誰が議決権を行使しているか、誰が株券を管理しているか等を見て総合的に判断されると思います。


( 名義株を相続した場合の対応方法 )

◆相続人が名義株と認識している場合は、真の所有者と話し合って、真の所有者に名義を移すことを考えることになりります。実務的には「名義株に関する合意書」を作成した上で共同で名義書き換えを行うことが多いと思います。

◆相続人が名義株と納得できない場合は、通常の株式として相続手続を行うことになります。しかし、真の所有者側から異論が出ることになります。話し合いの結果、株式を買い取ることで決着が付くこともありますが、双方の合意が得られない場合は、裁判手続きで決着することになります。

この場合は、先ほど述べた「名義株に関する裁判の考え方」に従って裁判がなされることになります。双方が自己に有利な証拠資料や証人を出して争うことになります。

(まとめ)


相続した株式が「名義株」の疑いがある場合は、十分調査する必要があります。特に非上場の中小企業の株式の場合は、被相続人が株式を取得した経緯などについてよく確認することが必要となります。対応が必要な場合は、名義株の取り扱いに詳しい弁護士や税理士、司法書士などの専門家に相談下さい。

 

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