「相続土地国庫帰属制度」が開始され予想外の反響となっているようです

「いらない土地」を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が開始されました。親から田舎の田畑や山林を相続したが、使い道もなく管理費用もかかるため手放したいと考えている方も多いと思います。このような方のために「土地の放棄」を認めて国が引き取る制度が開始されました。


相続した土地を放棄するには、「相続放棄」という制度が従来よりありますが、相続放棄は亡くなった方の全ての財産を放棄する必要があり、特定の「いらない土地」だけ放棄することは認められていませんでした。

令和5年4月27日より開始された今回の「相続土地国庫帰属制度」は、特定の「いらない土地」だけを放棄して国に引き取ってもらえる制度です。

各地の法務局で相談の受付が開始され、令和5年の2月下旬から5月中旬までに利用申請に関する相談が全国で6,500件ほど寄せられているとのことです。制度開始前は引き取ってもらえる土地の条件が厳しい事や国に納める手数料が必要なことから、あまり活用されないのではないかと危惧されていました。しかし、ふたを開けて見ると大盛況に近い様相になっています。それほど「いらない土地」に対する国民の土地放棄のニーズが高いことが分かります。

利用にあたっては、国に対する申請が必要になります。申請や相談先としては、土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)となります。法務局・地方法務局の支局・出張所では受け付けてもらえませんので注意が必要です。


< 制度の概要 >

◆ 相続によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者等は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることをについて、承認を申請することができます。

◆ 法務大臣は申請された土地が引き取り条件に合致するものであるかどうかを審査をして、条件を満たすものである場合は国庫への引き取りを承認します。

◆ 承認を受けた方が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国に帰属します。

<申請できる人>

「相続」または相続人に対する「遺贈」によって土地を取得した人

※ 売買によって土地を取得した場合は利用できません。
※ 土地の共有者も申請できます。
※ 令和5年4月27日以前に相続した土地も対象です。

< 引き取ることができない土地 >

以下に該当する土地は、申請できないか、申請しても不承認になります。

(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

A 建物がある土地
B 担保権や使用収益権が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 土壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地



< 審査手数料 >

申請をして承認を受けるためには「審査手数料」を納める必要があります。収入印紙で納めます。申請して不承認になっても審査手数料は返却されません。

審査手数料は、土地一筆あたり14,000円となっています。

< 申請書と添付書類 >

所定の申請書に必要事項を記載して申請します。申請書は法務局のホームページから取得できます。

添付資料としては、次のものが必要になります。
(1)承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
(2)承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
(3)承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
(4)申請者の印鑑証明書(市区町村作成)

 遺贈によって土地を取得した相続人の場合は次の書面が追加で必要です。

(5)相続人が遺贈を受けたことを証する書面
 
  <具体例>
・遺言書
・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本又は改製原戸籍謄本
・亡くなった方の除かれた住民票又は戸籍の附票
・相続人の戸籍一部事項証明書
・相続人の住民票又は戸籍の附票
・相続人全員の印鑑証明書

承認申請者と所有権登記名義人が異なる場合(相続登記を行っていない場合)は次の書面が追加で必要です。

(6)土地の所有権登記名義人(or表題部所有者)から相続又は一般承継があったことを証する書面

 <具体例>

・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本又は改製原戸籍謄本
・亡くなった方の除かれた住民票又は戸籍の附票
・相続人の戸籍一部事項証明書
・相続人の住民票又は戸籍の附票
・遺産分割協議書

次の書面は添付義務が定められていませんが、参考資料として任意で添付します。

○ 固定資産評価証明書
○ 承認申請土地の境界等に関する資料

< 申請書の作成に関する専門家の活用について >

申請手続は申請者本人が行う必要があります。従って、申請書には申請者本人の記名・押印が必要になります。申請手続の全てを代理人(任意代理人)に依頼することはできません。

但し、申請手続に関する一切を本人が行う必要はありません。申請者本人が申請書や添付書類を作成することが難しい場合は、申請書等の作成を専門家に代行してもらうことはできます。専門家が作成した申請書等を使って申請者本人が申請することになります。

尚、申請書等の作成の代行先としての専門家は、弁護士や司法書士等となります。


< 負担金 >

土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた者は、承認された土地につき国有地の種目ごとにその管理する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額の負担金を納付しなければなりません。

負担金算定の具体例は次の通りです。(法務省HPより抜粋)
詳細は法務省ホームページを確認下さい。


<全体の流れ>

全体の流れは次の通りです。(法務省HPより抜粋)


(まとめ)

令和5年4月27日より相続土地国庫帰属制度の運用が開始されました。申請書の様式が突然変更されるなど運用面で若干の混乱もあるようですが、相当数の相談や申請が今後も予想されます。

いらない土地でお悩みの方は一度検討してみる価値はあるかもしれません。

 

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