「遺産分割」で交流のない遠い親戚と話し合う必要がある場合どうしたら良いですか

相続が発生したので関係する相続人を調査したところ、普段交流のない遠い親戚が相続人の1人である場合があります。この場合、その遠い親戚と「遺産分割」の話し合いを行う必要があります。住所までは判明したけれど電話番号などは分からない場合もあります。このようなときは、どのように話を進めて行けばよいのでしょうか。


具体例で考えてみます。 ( 図中の「私」が相談者です。)

子のない夫婦の夫が亡くなっています。夫の両親は既に他界しています。夫の兄も既に他界しています。兄には離婚した妻との間に子供(義理の甥)がいます。義理の兄とは親戚付き合いがあったのですが、別れた奥様とその子とは全く交流がありません。

亡くなった夫の相続人は、私と義理の甥の2人ということになります。亡くなった夫の遺産相続手続は、私と義理の甥との間で話し合い(「遺産分割協議」)を行う必要があります。しかし、義理の甥がどこに住んでいるか分かりません。どうしたら良いのでしょうか。

 


( 遠い親戚の現住所の調査 )

相続手続を行うには、相続人の調査が必要になります。今回の例のように相続人は分かっているが、住所が分からないことがあります。相続が何代も発生している場合は、相続人が誰であるかが分からないこともあります。

このような場合は、司法書士や弁護士などに依頼して戸籍や住民票を調査してもらい相続人を洗い出す必要があります。調査の結果、相続人が誰で現住所はどこであるかということは判明します。但し、電話番号までは通常は判明しません。


( 遠い親戚への最初のコンタクト方法 )

遠い親戚の現住所が判明した場合は、通常は、手紙を書いて最初のコンタクトを図ります。近くであれば、直接訪ねてみる方法もありますが、突然の訪問では先方も困惑する恐れがあります。手紙を出して先方の反応を確かめた方が良いと思います。

手紙の文案は、慎重に言葉を選んで書く必要があります。「夫が亡くなった」旨、「相続人は私とあなたである」旨を伝え、「遺産相続手続が必要なので協力してほしい」旨を伝えます。相続財産については詳細には書かなくても良いと思いますが、概略程度は書いておいた方が良いと思います。

間違っても私が相続したいので「相続を放棄してほしい」ような趣旨の言葉を書いてはいけません。最初の手紙の目的は、自分の考えている遺産分割方法を説明することでありません。「相続手続に協力してほしい」ことを依頼することです。

手紙の最後に当方の連絡先電話番号を記載して連絡してほしい旨を書いておきます。手紙での返信を希望する場合もありますので、返信用封筒を同封しておいた方が良いかもしれません。その場合も先方の連絡先電話番号を知らせてくれるように依頼します。


( 手紙を出したのに音信がない場合 )

手紙を出して音信があった場合は、先方と今後の進め方について相談をして、相続手続を進めていくことになります。円満に話し合いが進めば、遺産分割協議を行って相続手続を完了させることができます。

しかし、手紙を出したのに音信がない場合があります。音信のない理由は色々考えられます。相続に全く興味がない場合、詐欺メールと間違われた場合、内容は了知したが親戚と話し合うのが気乗りしない場合、など色々考えられます。

この場合は、再度手紙を出すか、直接訪問することになります。郵便局の「レターパック」で郵送すれば、先方の受領確認をすることができます。手紙が先方に何月何日の何時何分に届いたことが確認できます。

再度手紙を出しても何の音沙汰がない場合は、先方の住所を訪ねてみる他はありません。先方の自宅を訪問して先方と面談ができれば、相続手続に協力してほしい旨を伝えます。

もちろん、先方の自宅を訪問しても話し合いに応じてもらえるかどうか分かりません。「もう親戚付き合いはないから、面倒な手続きには協力できない」などと言われるかもしれません。こうなると通常の方法では問題解決できないことになります。


( 遠い親戚が相続手続に協力しない場合の対応方法 )

相続人の1人が遺産分割協議に協力してくれない場合は、裁判手続きを使用するしかありません。具体的には、「遺産分割調停」を申立てることになります。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てると、当事者は裁判所から期日に出頭するよう要請されます。要請に応じて裁判所に出頭した場合は、裁判官や調停委員により遺産分割の調停案が検討されます。双方が調停案に合意できれば調停成立となります。成立した調停内容に従って相続手続を行うことができます。

先方が期日に出頭しない場合は、調停は不成立になります。調停は当事者双方の話し合いがベースとなりますので出頭しなければ話し合いにはなりません。従って、調停は成立できません。

合理的な理由なく出頭しない場合は、過料の制裁があります。(但し、実際に課されることはないと思います。) 欠席した相手方は裁判官や調停委員に悪い心証を持たれることがあります。


(「審判手続」への移行 )

当事者の欠席が続いて、調停手続を進めることができない場合は、それ以上続けても意味がないので、調停手続は不成立として終了し、「審判」手続に移行します。審判手続きは、当事者の話し合いによる解決ではなく、裁判官による審判(判決のようなもの)による強制的な解決方法となります。

審判手続きも当事者に期日の呼び出しがあります。もし、審判期日に欠席をして、期日に必要な主張・立証をしない場合は、欠席をした当事者に不利な事実認定や法的な判断がされる可能性が高くなります。いわゆる「欠席裁判」というものです。

審判手続きを経て裁判所で審判が下されれば、これに基づいて相続手続を行うことができます。

このように相続人の1人が遺産分割協議に協力しない場合は、裁判手続きを活用して対応します。先方が期日に欠席をすれば、調停手続、審判手続きを経て、遺産分割を行ったと同様な結果を得ることができます。


(まとめ)

過去の色々な事情から親戚付き合いが疎遠となった親族と相続手続をしなければいけない場合があります。最近は「離婚」が増えています。離婚をした場合、配偶者との親族関係は解消されますが、子供と離婚先の親族との血縁関係は残ります。

離婚後、何十年も経って、相続が発生した段階で離婚先の親族との血縁関係が相続手続の中でよみがえってくるのです。離婚が増えれば、疎遠な親戚との相続手続で苦労することも増えてくると思います。

このような問題で悩まれた場合は、相続に詳しい司法書士に相談下さい。「相続人の調査」「手紙の文案作成」「遺産分割調停申立書の作成」など必要なサポートをしてくれると思います。できるだけ穏やかに問題を解決できる方法を模索していく必要があると思います。

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