相続相談でよくある「空き家」問題とは何ですか

親が亡くなり実家に誰も住まなくなれば実家は「空き家」になります。子供達はそれぞれ独立して自宅を保有していれば実家の相続に魅力を感じないかもしれません。実家に資産価値があり売却を検討したくても、家族の思い出の場所である実家の売却はハードルが高くなりがちです。他に兄弟がいれば、実家を相続した者の一存で勝手に売却することは難しいと思います。

預貯金などの金融資産を対象にした遺産分割を行って相続手続を実施し、実家については「とりあえず、このままにして様子を見よう」とする場合があります。実家の名義変更を行わず、相続手続を終了してしまう場合もあります。このようにされた実家が「空き家」問題となっていく可能性があります。

(「空き家」問題の形成過程 )

家というものは人が住まなくなると急速に劣化が進行します。通常、1ヶ月間人が住まなくなると老朽化が進行すると言われています。洗面台の下のS字の排水ストラップには、水が常に溜まっています。洗面台を1ヶ月間使用しなければ、S字管の中の水は蒸発し、下水との蓋の役割が失われます。これにより、下水の匂いやネズミの進入の原因となります。


初期の不具合は大したことはありませんが、年月の経過とともに様々な劣化が顕在化していきます。「外壁材の落下」「屋根材の落下」から始まって、徐々に老朽化が進行し地震や台風などによって「家屋の倒壊」にまで至ることもあります。


このような事態に至らなくても、「悪臭」、「ネズミや野良猫の被害」、「雑草の繁茂」、「ごみの不法投棄」などの問題は珍しくありません。運が悪ければ、「不審火や放火」など社会的な大問題が発生するリスクもあります。


(「空き家」として放置しておくデメリット )

親の実家を「空き家」のまま放置して誰も使用していなくても、固定資産税や都市計画税は毎年支払い続ける必要があります。

年に数回、風通しや掃除のために訪問することを考えている場合、電気や水道は契約を切ることが難しくなります。掃除やトイレのために水や電気は必要になります。水道光熱費の最低額は支払い続ける必要があります。


建物の老朽化に伴い「悪臭」や「外壁材の落下」、「不審者の侵入」など近所に迷惑をかけることがあります。場合によっては、損害賠償問題にまで発展することもあり得ます。

また、「空家法」という法律で、管理が行き届いていない空き家は「特定空家等」に認定される場合があります。「特定空家等」に認定されると、自治体は所有者に適切な管理をするように助言や指導を行います。改善が見られない場合は、勧告や命令に代わります。命令に反すれば50万円以下の過料に処される場合があります。


さらに、固定資産税や都市計画税などの住宅の所有にかかる税金についても、空家法に基づく勧告を受けた場合は、「小規模住宅地の特例」による減税措置を受けることができなくなり、納税額が大幅に増えることになります。

( 対策として親が元気なうちに決めておくこと )

実家を空き家問題にしないためには、事前の対策がポイントになります。一番簡単な方法は、親が亡くなった後の実家の取り扱い方法について、家族でよく事前に相談しておくことです。選択肢としては、次のようなものが考えられます。

◆ 家族の誰かが住む。
◆ 家族の誰かが責任を持って管理する。
◆ 管理会社に管理を依頼する。
◆ 賃貸する。
◆ 売却する。

どの選択肢を取るにしても、方針だけの合意で満足してはいけません。家を「管理し」「賃貸し」「売却する」には、相応の手間とコストがかかります。その負担について、誰がどのように負担するかも含めて明確に話し合っておくことが大切です。


話し合った内容は書面に書いて保存しておいた方が良いと思います。できれば、「遺言書」という形にした方がより確実性が増すと思います。また、相続財産が多い場合は、相続税の問題も絡んできますので税理士ともよく相談の上判断する必要があります。

実家が田舎の古民家などの場合は、最近は「空き家バンク」の活用も有力な選択肢の一つになっています。積極的に情報収集されることをお勧めします。

(まとめ)


総務省の「住宅・土地統計調査」によれば、現に人が住んでいない、長期に渡って不在となり、そのまま放置される可能性の高い空き家について、平成10年から平成30年の20年間で、182万戸から347万戸に1.9倍増加しています。そして今後も急速に増加していくと予測しています。

親が元気なうちに家族で話をするだけで問題解決につながる場合が多いと思います。実家の相続について早めの話し合いをご検討ください。

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