「遺産分割協議」をした後「遺言書」が発見された場合、どうしたら良いですか

親が亡くなり相続が発生すれば、遺産の分け方について相続人が集まって協議をします。これを「遺産分割協議」と言います。この遺産分割協議の結果を受けて、自宅などの不動産については相続による名義変更を行い、預貯金などの金融資産については相続手続を行います。この大切な遺産分割協議を行った後に親の「遺言書」が発見されることがあります。こんなときはどうすれば良いのでしょうか。


親の遺言書は色々なところから見つかります。例えば、仏壇の奥、貸金庫の中、書棚、自宅金庫などに保管されていることが多いと思います。大抵の場合は本人が周りの家族に遺言書の存在を話していますので事前に分かると思います。しかし、中には本人が自筆で秘密裏に作成する場合もあり、遺産分割協議後後に発見されることがあります。

 


(「遺言書」がある場合の相続手続の「原則的」な考え方 )

遺言書がある場合の相続手続の原則的な考え方は次の通りとなります。

(1) 遺言書があれば、その内容に従って相続手続をする。

遺言書は本人の最終の財産処分行為ですので、本人の意思を最大限尊重する必要があります。自分の財産の処分は自分の意思で自由に行うことができるという考え方に基づいています。もちろん、全て本人の自由という訳ではなく「遺留分」という一定の制限はあります。しかし、それ以外の制限はありませんので、相続は本人の最終意思である遺言書に従って行う必要があるのです。

(2) 遺言書がなければ、相続人全員によって遺産分割協議を行って分割方法を決める。

本人が自分の財産処分について特に意思表示がない場合は、残された相続人が話し合って相続方法を決定するということてす。民法の定めた「法定相続分」なども参考にしながら、相続人全員の合意で遺産分割方法を決めることができます。

つまり上記(1)(2)により、遺言書があるにもかかわらず、そのことを知らないで相続人全員で遺産分割協議を行っても、その遺産分割協議は遺言書が発見されれば「無効」になるということです。

相続人間で苦労して遺産分割協議を行い相続財産の分け方についてやっとの思いで「合意」を得た場合でも全て無駄になります。相続手続は遺言書の内容に従った分割方法により行うことになります。

遺言書を書く人


(3) 遺言書が書かれていても、そこに書かれていない相続財産については、相続人の遺産分割協議で分割方法を定める。

遺言書に自宅や預貯金についての相続方法が書かれていたとして、その他の重要な相続財産である「書画骨董」や「金のインゴット」などについて何の記載もなければ、相続人による遺産分割協議で分割方法を決定します。


(「遺言書」がある場合の相続手続の「例外的」な取扱い方法 )

相続人全員が苦労して遺産分割協議をまとめ上げたにもかかわらず、遺言書が発見されたために一連の合意形成が全て無駄になるのはもったいないことです。何とかならないかと考えたくなります。特に遺言書に書かれている分割方法が、相続人全員で合意した分割方法と全くかけ離れたものであった場合、相続人としては不満が出るし納得もいかないと思います。

このような場合の救済方法として、次のような方法が実務では「例外的」な扱いとして認められています。

(4) 遺産分割協議後に見つかった遺言書の内容を全ての相続人が確認した上で合意すれば、遺言書と異なる分け方ができる。

遺産分割協議が終わってから遺言書が発見されても、遺言書の内容を全ての相続人が確認した上で、なお遺産分割協議の結果を維持することに同意すれば、遺産分割協議を無効とすることなく行われた相続手続を有効なものとすることができます。

大切なことは、遺言書の内容を全ての相続人が見て内容を確認していることです。相続人の一部が見ていない場合や遺産分割協議を維持することに納得しない場合は、この扱いはできません。

実際の取り扱い方法としては、相続人全員で話し合った結果、遺言書によらないという合意ができた場合は、それで「よし」とすることもあります。しかし、後日の紛議を避けるためには、相続人全員による「合意」内容を書面で残した方が良いと思います。


通常は、遺産分割協議終了後に遺言書が発見された場合で、遺産分割協議書がまだ作成されていない場合は、作成する遺産分割協議書の中で、発見された遺言書について相続人全員が内容を確認した上で遺産分割協議を行った旨を記載しておきます。

既に遺産分割協議書を作成済みの場合は、再度、遺産分割協議書を作成した上で、この中で遺言書が発見され相続人全員が内容を確認した上で遺産分割協議をしている旨を記載ししておきます。もちろん、相続人全員の合意書を別に作成しても良いと思います。

このような取扱いが認められるのは、相続人全員が納得しているのであれば、本人の最終の処分意思を無視しても許されるのではないかという考え方に立っています。いらない財産や納得のいかない分割方法に従うよりも相続人全員で同意できた分割方法に従った方が相続財産がより有効に生かされると考えられるからです。

但し、1人でも相続人が同意しなければ、この取扱は行うことができません。この場合は、遺言書の内容に従って相続手続を行う必要があります。

 


(まとめ)

最近は遺言書を作成される方が増えています。自筆証書で作成される方、公正証書で作成される方、自筆証書で作成して法務局に保管依頼される方、など色々なやり方があります。

どの方法を取るにしても遺言書の存在について近しい親族には知らせておく必要があります。相続手続を終えてから遺言書が発見されると、最悪の場合、相続手続のやり直しになり、かかった時間と費用が無駄になります。

このようなことにならないためには、相続手続を行う前提として「遺言書の有無確認」が大切になってきます。しっかりと確認した上で手続きを進めて行って欲しいと思います。

 

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