亡くなった父親名義の「ゴルフ会員権」は相続できるのですか

ゴルフ会員権は、会員制によるゴルフ場を利用することのできる権利です。ゴルフ会員権には3つの種類があります。具体的には、「預託会員制」の会員権、「社団法人制」の会員権、「株主会員制」の会員権です。このうち「預託会員制」のものが日本のゴルフ場の多くで用いられている制度です。ここでは、「預託会員制」のゴルフ会員権の相続のケースについて見て行きます。


( ゴルフ会員権の種類について )

まず、3種類の会員権の特長について簡単に見て行きます。

① 預託会員制 (保証金制ともいいます)

入会時に一定の預託金をゴルフクラブに預託することによって、ゴルフ場施設を優先的に利用することができます。また、退会時には預託金の返還を受けることができます。

ゴルフ会員権の譲渡は原則として自由ですが、譲り受ける方は予めゴルフクラブの入会審査を受ける必要があります。会員は入会金や年会費の納入義務があります。

② 社団法人制

社団法人制のゴルフ会員権は、社団法人の社員の地位を意味しています。会員が社団法人の社員としてゴルフクラブの施設の運営を行う形態となります。

プロトーナメントで利用されるような名門ゴルフクラブでよく見かける会員制度です。ゴルフ会員権の譲渡は、多くの場合、認められていません。

③ 株主会員制

株主会員制のゴルフ会員権は、ゴルフ場を経営する会社の株主の地位を意味しています。

ゴルフ会員権を譲渡することは原則として自由ですが、ゴルフクラブの理事会で譲渡の承認手続きが必要な場合があります。


次に「預託会員制」ゴルフ会員権の「相続」について詳しく見て行きます。

( ゴルフ会員権が相続の対象となるか確認する )

まず最初に、ゴルフ会員権が相続できるか否か確認することが必要になります。当該ゴルフクラブの「会則」などの内部規則を確認する必要があります。

ゴルフクラブの中には、会則の中で会員の死亡を会員資格の喪失事由としている場合があります。つまり、会員が亡くなったら退会となり、相続人が会員資格を相続できないということです。

このような定めが特に書かれていなければ、一般的には相続の対象になります。相続の対象になれば「名義書換手続」を行うことになります。

相続人が会員資格を相続できない場合は、「退会手続」を取ります。滞納している年会費などがあれば預託金返還請求権と相殺するなどして、残り分をゴルフクラブに請求することになります。

なお、会則上は相続できないとされていても、裁判で争った結果、相続が認められたものもあります。相続の対象となるかどうかは会則の文言のみではなく、その他の事情も総合的に勘案して判断されているようです。

また、ゴルフクラブによっては、会則上は相続を認めていなくても、運用によって相続を認めている所もあるようです。ゴルフクラブに念のため確認してみることが必要です。

 


( 遺産分割協議で誰が会員権を相続するかを決める )

ゴルフ会員権は、不動産などの財産と異なって「共有名義」にすることができません。つまり、誰が会員権を相続するかを遺産分割協議の中で一人だけ明確に定める必要があります。

また、ゴルフクラブによっては、相続による名義変更についても、事前の審査を必要とするところがあります。よくあるのが理事会の承認が必要というものです。この場合は、相続予定の方がゴルフクラブの入会審査要件をクリアできるか否かを事前に確認しておくことが必要になります。

遺産分割協議で相続人を定めても、その方が審査にバスできなければ意味がありませんので注意が必要です。審査項目としては、年会費の支払能力、既存入会者からの推薦の有無、職業、年齢などのことが多いようです。


( 遺産分割協議書の書き方 )

ゴルフ会員権の遺産分割協議書の見本を次に示します。(該当部分のみ)

    遺産分割協議書

被相続人A(令和5年10月10日死亡、本籍地 愛知県名古屋市瑞穂区〇町二丁目21番地)の遺産につき、共同相続人B、C及びDは遺産分割協議の結果、被相続人の遺産を次のとおり分割した。

1 次のゴルフ会員買権は、Bが相続する。

 XYZクラブ株式会社
 甲ゴルフクラブ 預託金ゴルフ会員権
 会員番号 12345号

2 次の預金は、Cが相続する。  
   ……


( 名義書き換えに必要なもの )

不動産の相続登記に必要な書類と同じようなものが要求されます。遺産分割協議書、亡くなった方(被相続人)の出生から亡くなるまでの戸(除)籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、預託金証書、相続する方の住民票及び印鑑証明書、名義変更申請書、等となります。

詳しい内容は、ゴルフクラブごとに異なりますので事前に必要書類の確認が必要になります。

名義書き換えに必要な書類の多くは、相続登記の必要書類と重なりますので、預貯金や株式などの金融資産の相続手続と合わせて、相続を専門としている司法書士に依頼すれば効率的に手続処理してもらえると思います。

(まとめ)

亡くなった親の財産の中にゴルフ会員権がある場合は、相続手続に迷う場合があります。まずは、ゴルフクラブの会則などを確認してみることが必要です。疑問点があればクラブに問い合わせてみることです。

なお、ゴルフ会員権も相続財産として高額なものが多いため、相続税についても考慮する必要があります。ゴルフ会員権の相続税評価額は、取引相場の有無や預託金の返還時期などに応じて計算方法が異なってきます。事前に税理士などに確認してもらうことが必要です。

相続手続に迷われた場合は、近くの相続に詳しい司法書士や弁護士に相談して下さい。

 

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