中小企業「後継者なし」問題に対し、親族外への承継優遇策検討

親族に後継者候補がいない中小企業の事業承継を促し、世代交代を円滑に推進する為、政府は親族以外の第三者への事業承継について包括的な支援策の検討を開始しました。従来は親族への事業承継に対して相続税の納税猶予など各種の優遇策を実施してきましたが、今回は承継範囲を第三者にまで拡大して中小企業の円滑な事業承継を支援しようというものです。

日本の中小企業の経営者の高齢化は深刻な状況となっています。このまま手をこまねいていては高齢経営者の大量引退となり、多くの優秀な中小企業の大量廃業が発生し、従業員の雇用喪失も発生することが懸念されています。雇用喪失規模は、一部試算では650万人とするものもあり、わが国経済に深刻な打撃をもたらすことになります。

従来の親族への承継支援策では、少子化や子供が事業の承継を望まないケースでは、十分な成果が見込めないことから、親族以外の第三者への承継支援策を用意しようとするものです。

具体的な支援策としては、株式譲渡時の税負担を軽減したり、承継に伴う新規事業の立ち上げや事業再編に必要な費用の一部を補助するというものです。具体的な予算規模の詳細は、2020年度の税制改正に向けて中小企業庁が予算要望と予算の概算要求に盛り込む段取りとなっています。

詳しくは、今後の財務省との協議結果を待たないと分かりませんが、「株式譲渡所得にかかる税率20%の軽減」、「不動産取得にともなう登録免許税や不動産取得税の軽減特例の延長」、「雇用や経営資源を引き継ぐ一方で不採算事業をリストラする必要が生じた場合の先代経営者が支払う廃業費用の一部補助」、「後継候補者の試し雇用期間中の費用補助」などが検討されているようです。

我が国経済の基幹部分は、技術やノウハウを含めて優秀な中小企業に支えられています。多くの中小企業は、自分の得意とする専門分野で世界に通用するオンリーワンの技術やノウハウを持っています。これらの技術やノウハウは、長い企業の歴史の中で培われてきたものであり、簡単に習得できるものではありません。事業の円滑な次世代への承継が滞れば、将来的に技術立国として生きる我が国に致命的な問題を引き起こしかねません。

企業の持っている技術力やノウハウは、表面的には見えにくい部分が多いと思いますが、世界中で使用されている商品や製品を作るうえで我が国の技術やノウハウが中枢的な役割を担っていることが、最近の色々な報道を見ていると感じられます。日本の技術力は、まだまだ健在なんだと強く感じることが多くなりました。

この技術力やノウハウを下支えしているのは多くの中小企業です。今回の措置により、何としても円滑な事業承継を推進して、技術立国としての我が国の明るい未来を作ってもらいたいと思います。

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