コロナ禍で「住宅ローン破綻」する人が増えているようです

コロナのワクチン接種が進み、治療薬の開発も徐々に進められている中、今後の社会生活や経済活動にも少しづつ明るさや希望が感じられるようになってきました。しかし、足元の状況は、感染で重症化されている方や自宅療養で不安な日々を送っている方は、まだまだ大勢いる状況です。コロナには感染していないものの経済活動の制限により、商売が低迷している方や時短や休業要請で収入が激減している方も大勢います。


収入が減少した方の日々の生活については、雇用調整助成金などの社会保障制度や各種支援金などによってギリギリの生活となっています。しかし、住宅をローンで購入した方の中には、予想を超える大幅な収入減により住宅ローンの返済が滞るようになって、今後の見通しが立たなくなっている方が増えています。


共働き夫婦の場合でも、夫と妻それぞれの収入が激減したり、一方が失業状態になるケースもあります。都市部で新築マンションなどを購入した場合、夫婦の収入から一定の余裕をもって毎月のローン返済額を定めている場合が多いと思います。しかし、今回のコロナ禍は、その想定を超えて収入が激減している場合があります。そして、その期間も長期化しています。


このため住宅ローン返済に困って途方に暮れている方も多くなっています。
借金返済に困窮する方の返済を法律の専門家が手助けすることを「債務整理」と呼んでいます。債務整理の方法としては、通常、「任意整理」「民事再生」「自己破産」などの手法が検討されます。

「任意整理」とは、債権者と交渉して、これまでの延滞利息の免除や返済期間の長期化を交渉するものです。基本的に利息などの減免やローン期間を延長してもらって、返済を継続していくものです。

「民事再生」は、裁判所に申立を行い裁判所の判断の下で、借金を1/5程度に圧縮(減免)するものです。今後の安定した収入による一定額の返済が見込めることを条件に借金を大幅にカットする手続きです。通常は、サラ金などの借金返済について活用されます。

住宅を保有している場合は、「住宅ローン特則」という制度を利用することもできます。これは、住宅は手放したくない場合、住宅ローンだけは支払いを継続し、それ例外の借金について減額を求めるものです。

「自己破産」は、他の債務整理の方法では解決できない場合の最終手段として、生活に必要な最低限の資産を除いて、全てを借金返済に充てた上で、残った借金を、原則として(※注1)、全て免除してもらうものです。当然、住宅は売却されます。裁判所に申し立てて行います。
(※注1) 自己破産によっても免責されないものはあります。(例.税金、社会保険料、養育費など)


今回のコロナ禍での「住宅ローン問題の解決」は、非常に難しくなっています。
既に返済に困っている多くの方は、銀行などの金融機関に住宅ローンの返済について相談されていると思います。銀行としても返済継続を望んでいますので相談には応じてくれると思います。毎月の返済金額を少なくし、その代わり返済期間を延ばす提案がなされると思います。しかし、返済金額の減額にも限度がありますし、返済期間の延長も超長期は難しくなります。

金融機関と住宅ローンのより柔軟な返済計画の合意ができた場合でも、その後、返済が滞れば、金融機関は容赦なく自宅の競売手続を開始します。


返済が困難な住宅ローンに関する法的解決手段である「債務整理」メニューでは、自己破産を除いて有効な対応が難しくなっています。
「任意整理」は利息の減免程度ですので問題の解決にほど遠いことになります。「民事再生」も住宅ローン特則は全額返済することが前提となっています。仕事がなくなって収入が減少している状況では選択肢になり得ません。最終的には「自己破産」を選択せざるを得ない場合が多い思います。

返済が滞れば、自宅は金融機関の競売手続の申立により裁判所によって「差押」されます。差押えと言っても自宅に係官が乗り込んで来て「差押え」の赤紙を張るようなことはしません。

競売手続は、裁判所での事務手続きとして進行していきます。自宅は競売手続が完了し新しい所有者が現れるまで使用することができます。自宅の不動産登記簿に差押えの登記」がされるだけです。

自宅に差押えの登記がされた状態で何もしなければ、自宅の競売手続が進行して、半年程度で自宅の競売が行われ落札者が落札金を支払うと自宅は落札者の所有になってしまいます。その時点で、自宅を退去する必要が出てきます。落札価格は市場価格より相当程度安くなるため、落札金額で住宅ローンが完済できなければ、差額は借金として依然として残ることになります。

このような状況で手元資金で残った借金を返済できないのであれば、早めに「自己破産」を選択して残った借金を棒引きにする必要があります。但し、自己破産を選択すれば、その他の財産も生活に必要なものを除いて、全て換金して借金返済に充てる必要があります。


自宅が好立地で市場価格が高く、ある程度の手持ち資金がある場合は、自己破産を選択せず、差し押さえられた自宅の「任意競売」を選択することができます。
任意競売とは、裁判所が行う「強制競売」と対比して使われる用語です。裁判所は、金融機関から競売の申立があれば、強制競売の手続きを行います。

「強制競売」とは、裁判所が主導して行う競売手続です。裁判所は一定期間内での落札を優先して考えるため、最低落札価格が一般的に低く設定されます。このため最終的な落札価格も市場価格より相当程度低くなります。

これに対して「任意競売」とは、裁判所による競売ではなく、民間の通常取引によって買主を探す手続きです。つまり、裁判所の許可や金融機関の同意を得て、自宅不動産を通常の市場で不動産業者の仲介によって売却するものです。

この場合、競売手続中のため売却期間の制約があることや、不動産に「差押」の登記があることから、通常の売却よりも買い手を見つけることが難しくなります。そこで、市場価格より少し下げて、より早く買い手を見つける必要があります。そのため、市場価格より少し低額の売却価格となります。しかし、強制競売よりは、一般的に高額になります。

任意競売によって自宅を売却し、売得金で住宅ローンを返済することになります。不足分があれば、手元資金から返済することになります。強制競売よりも高く売却できますので、その分負担を減らすことができます。これにより自己破産は回避することができます。借金問題を解決し、賃貸アパートなどに引っ越して再出発となります。

(まとめ)

住宅ローンの返済に困窮した場合は、まず金融機関に相談することです。どの金融機関でも相談に乗ってくれると思います。しかし、この先の収入の目途が立たない場合は、解決が難しくなります。

この場合は、自宅は諦めてより高く売却できる方法を検討する必要があります。まだローン延滞が発生していない場合は、市場価格で売却することができます。

延滞が発生し、銀行から競売手続が開始された場合は、「任意競売」を検討することになります。任意競売を専門に扱っている業者がいますので相談してみると良いと思います。業者の中には、売却した自宅を、そのまま継続的に賃貸物件として貸し出してくれるサービスを提供しているところもあります。

今後の収入の見通しや手持ち資金の状況から住宅ローンの支払が全く見通せない場合は、「自己破産」も選択肢になると思います。早めに専門家に相談すべきことになります。

 

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