10連休明けの新元号5月7日は、重大なシステムトラブル発生に注意

平成から新元号への改元となる今年は、4月27日(土)から新元号初日である5月1日(水)を経て5月6日(月)まで10連休となります。このような長期の連休は、今までわが国では経験がありません。また、祝日や振り替え休日、祝日間の日の休日扱い等が連続して休みとなるケースも経験がありません。

4月27日 土曜日
4月28日 日曜日
4月29日 昭和の日(祝日)
4月30日 天皇陛下譲位(祝日の前後休日)
5月 1日 皇太子さま即位・改元(祝日)
5月 2日 (祝日の前後休日)
5月 3日   憲法記念日
5月 4日 みどりの日
5月 5日 こどもの日
5月 6日   月曜日(振替休日)

この連休明けの5月7日は、重大なシステムトラブルの発生が懸念されます。システムエンジニアの方は、システムトラブルの発生を予測して対応策を検討し、必要な回避策やリカバリー訓練等を実施されている場合も多いかと思います。

しかし、今回のカレンダーは過去に経験のない長期ものである為、システムの専門家の想定を超えた事象が発生する恐れがあります。もともと2019年は、消費税改正対応など大規模な法制度改正を控えている為、システムエンジニアの方は業務繁忙が続いています。このような繁忙期の中での対応となる為、うっかりミスなどのヒューマンエラーも発生しやすくなります。

今回の改元対応は、前回の平成の改元時と異なり、事前に日程と新元号が発表されている為、比較的順調にシステム対応は出来ると思います。新しい帳票に新元号が正しく印刷されたり、歴の計算が正しく行われること等は十分時間をかけてテストすることができます。その意味で改元に伴うシステム機能の変更は、例外はあるにせよ一定の品質は確保できると思います。

問題は、大量のデータ処理です。システム屋の間では「バッチの突き抜け処理」の問題とも言います。4月27日から5月6日まで異例の10連休でたまった銀行の口座振替や証券会社の注文受付などのデータが10日分蓄積し、連休明けに一気に処理をこなす必要が生じます。

銀行や証券会社等の大規模なシステムは、通常、日中はオンラインで取引の発生の都度処理を行い、1日の業務が終了するとその日の夜間に当日の取引に関する大量の事後作業を集中処理します。(これを「(夜間)バッチ処理」と言います。)この夜間バッチ処理が終了して、翌日のオンラインが開始されます。

昔は、24時間連続してシステムを稼働させる必要がなかったため、夜間の処理が終了しなければ翌日のオンラインが開始できない仕組みでした。しかし、近年は金融機関等を始めとして24時間連続稼働が当たり前の状況になっているため、各社で仕組みを工夫してオンライン処理とバッチ処理を並行して稼働できる仕組みを作り上げているものも多いと思います。

しかし、今回は10日分の大量のバッチデータ処理を行いつつ、当日分のオンライン処理をこなさなければならない為、システムへの負荷は大変なものとなります。システムのスローダウンなど変則的な異常の発生も懸念されます。また、24時間稼働への対応が出来ていないシステムでは、10日分のバッチ処理が時間内に終了できなければ、翌日処理が開始できなくなり業務に甚大な影響を及ぼします。

このバッチの突き抜け処理の問題を避けるために、連休中にシステムを平日運転し、処理を平準化する金融機関等も出てくることが予想されます。しかし、異例の対応をするとそのことにより別のトラブルが発生する場合も多く悩ましいところです。平日処理なのに手数料は休日扱いの様な変則的な対応をするとミスの基になってしまいます。

証券会社の場合も、2018年10月9日に3連休明けの東京証券取引所が朝からシステム障害となり、相場の一時大幅安を引き起こしました。この時は、朝からシステム障害が発生し、一部の証券会社からの注文が約定できない状態が続きました。システム障害はこの日の引けまで続き、一部の顧客は終日株式などが売買できなくなりました。その原因は一部の証券会社が、電文を大量に送信したことでした。

また、一般の企業でも連休前に長期の連休に備えて社内システムのサーバーなどの電源を落とす場合があると思います。問題は、連休明けに電源を立ち上げた時にハードディスク(HDD)等のトラブルが発生しやすいことです。通常は連続稼働しているシステムの電源のオン/オフは慎重な対応が必要となってきます。システムが立ち上がらなければ、業務処理が止まってしまい重大な影響が発生します。

新元号の5月7日(火)は、多くの方が会社に出勤して仕事を開始すると思いますが、社内システムや公共システム、金融機関などのシステムに大規模なトラブルが発生しても対応できるよう準備を検討しておくことも必要かと思います。

2000年1月1日には、いわゆる「2000年問題」という世紀変更に伴うシステムトラブル問題がありました。あの時は、幸いにして世の中で大騒ぎした割には、影響は殆んどなく、杞憂に終わりました。

今回は、2000年問題ほど世間で騒いでいませんが、今回の方が実は影響は大きいのではないかと思います。改元と言う喜ばしい節目に、リスク対策を声高に叫ぶのはいかがなものかと言う気もしますが、注意喚起は是非とも必要であると思います。今回もこの問題が杞憂に終わることを切に望んでいます。

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