白血病治療の最先端技術「CAR-T細胞療法」の低価格化に向けた動き

体の防疫システムである免疫細胞の1つ「T細胞」を活性化させ、特定のがん細胞を集中的に攻撃させる最先端技術「CAR-T細胞療法」の研究が広がっています。現在は、血液のがんである白血病や悪性リンパ腫に有効であるとして研究が進められています。

「CAR-T細胞療法」は、患者のT細胞を採取し、遺伝子操作でがん細胞への攻撃力を高めたT細胞に改造し、細胞数を増殖させた上で患者の体内に点滴により戻す治療法です。体内に戻されたT細胞は、特定の白血病や悪性リンパ腫に対して高い治療効果を示すことになります。

血液のがん以外にも研究が進んでおり、固形がんである乳がんや肺がんへの応用も将来的に期待されています。日本や欧米、中国で激しい開発競争が現在始まっています。国内では、今年2月、細胞製剤「キムリア」として厚生労働省の部会で承認されています。

最先端治療法である為、製剤の価格は、米国では1回の治療が5千万円以上に設定されています。我が国で承認された製剤も1回の治療費は数千万円はかかると見込まれています。肺がん治療薬として有名になった「オプジーボ」のようになるかもしれません。

製剤の価格が高いのは、高い研究開発費の回収の側面もあると思いますが、T細胞の改造を遺伝子操作で行う為、安全性の確保の為に高いコストになると言われています。

名古屋大学では、この高価格の壁を乗り越えるために新しい技術を研究・開発し、「CAR-T細胞療法」の普及促進を進めています。名古屋大学では信州大学と共同で低価格の製剤製造技術を開発しました。高コストの原因となっているのは、T細胞を遺伝子操作によって改造する作業に対する安全性の確保の為のコストです。今回、このT細胞の改造を「遺伝子操作」ではなく「特定の酵素」で行う方法を開発しました。コストは、遺伝子方式の10分の1以下にできる見込みです。

国内では、近々名大病院で成人患者に臨床試験を開始し、子供の患者にも順次拡大する計画となっているようです。併せて、タイの大学と連携し、今年の秋ごろから現地での臨床試験も開始する計画です。技術供与は、無償で提供する計画となっています。

収集された多くの臨床データから、新しい技術の効果を確認し、更なる技術開発と先端技術の普及拡大を目指していくことになると思います。治療法として確立できれば、価格面から最先端治療法として急速に普及する可能性が高いと思います。

新しいがん治療法で1人でも多くの患者の方の命が救われるとともに、がん病巣が完全寛解になり、治療後、一日でも早く社会復帰できるようになることを強く期待します。

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