相続財産に「株式」があるとき相続手続はどのように行うのですか

亡くなった親が相続財産として「株式」を保有していることがあります。相続人がこれまで株式を保有したことのない場合、株式に関する知識がないため「どのように相続するのか」「相続した株式はどのように売却することができるのか」など不安になります。

 


( 相続した資産の相続手続に関するの2つの方法 )

人にお金を貸した権利のことを「金銭債権」といいます。この金銭債権については、相続が発生すると、その権利は法定相続人に対して、法定相続分で当然に分割されます。例えば、亡くなった父親が友人に100万円貸していて、相続人が長男と長女の場合、父親が亡くなると100万円の金銭債権は、当然に、長男と長女がそれぞれ50万円づつ相続することになります。

一方、父親が銀行に100万円の「預金」を保有していた場合、父親が亡くなっても預金は当然に長男と長女が50万円づつ相続することになりません。この場合は、長男と長女で遺産の分け方を協議することが必要になります。これを「遺産分割協議」といいます。例えば、長男が70万円、長女が30万円相続するなど話し合います。


このように相続財産の種類に応じて、当然に分割されるものと遺産分割協議が必要なものがあります。もちろん、遺言書があればその指定に従って相続することになります。それでは、「株式」はどちらの相続方式になるのでしょうか。

結論としては、株式は遺産分割協議が必要な相続方式になります。父親が1,000株の株式を保有していた場合、父親が亡くなったら、相続人全員でこの株式を誰が何株相続するか協議して決める必要があります。


( 株式の相続手続について )

株式の相続手続は、株式の種類に応じて2つの手続き方法に分かれます。株式の種類として「上場株式」「非上場株式」の区別がありますが、この区別に応じて相続手続が異なります。

上場株式は、知名度のある大きな会社の株式で証券取引所で売買することができます。非上場株式は、中小企業などの株式で証券取引所では売買することができません。

遺産分割協議で株式の相続人となった者は、株式のこの区分に応じて必要な相続手続を行う必要があります。


(「上場株式」の相続手続と売却方法 )

亡くなった親が上場株式を保有していた場合は、証券会社を経由して「株式の名義変更」を行います。父親の名義から自分名義に変更してもらうのです。相続人が証券会社に口座を保有していない場合は、まず、証券会社で証券口座を開設する必要があります。

親の口座をそのまま引き継ぐことはできないので、自分用に新たに口座を設けることが必要になるからです。口座の開設方法や株式の名義変更に必要な手続きは、証券会社の担当者が必要な書類等を案内をしてくれますので、それに従って手続きをすればよいことになります。

自分の証券口座に組み入れられた名義変更された株式を売却したい場合は、証券会社に依頼すれば、当日の市場による相場価格て売却することができます。売却金は証券会社の口座に入りますので出して自由に使うことができます。


(「非上場株式」の相続手続と売却方法 )

非上場株式の相続手続は、上場株式に比べて少し面倒になります。非上場株式の場合、証券会社が関与していないため名義変更は、直接、株式発行会社に連絡して行います。具体的には、株式発行会社が管理する「株主名簿」の名義変更を申し出ます。名義変更に必要な書類は会社の担当者から案内されると思います。

非上場株式の場合、通常は株式が「譲渡制限付き株式」となっています。譲渡制限株式とは、株式の売買や贈与などには制限が付いている株式のことです。しかし、「相続」による名義変更の場合は、譲渡制限が付いていても名義変更を行うことができます。相続は売買や贈与等の譲渡行為ではないからです。

しかし、名義変更後、この株式を第三者に譲渡したい場合は制限がかかります。具体的には、株式を譲渡するには会社の承認が必要になります。承認は会社の取締役会か株主総会などで行います。どの機関が承認するかは、会社の定款の定めによります。

譲渡制限株式を相続した株主が、その株式を第三者に譲渡する場合は、会社に対して第三者が株式を取得することについて承諾を求めることになります。仮に会社が承諾しない場合は、第三者に代わって株式を譲り受ける者を会社が指定するように合わせて請求することができます。

また、株式を相続した者から株式を譲り受けた者も会社に対して株式の譲渡を受けたことについて承諾するよう請求することができます。

会社が株式の譲渡を承諾しない場合は、会社が株式を買い取らなければならないとされています。この場合、株式の「買い取り価格」は、会社と承諾請求者との協議で決めることになります。協議がまとまらない場合や協議ができない場合は、所定の期間内であれば裁判所に売買価格決定の申出をすることができます。期間内に申出がない場合は、1株当たりの純資産額に株式数を乗じた額が売買価格となります。


( 「非上場株式」の相続人に対する売渡請求 )

非上場株式の場合、会社の定款に定めることにより、会社から相続人に対して「株式の売渡請求」をすることができます。

これは、相続の場合、譲渡制限の付いた株式でも相続人への承継は、原則として、認めなければならないことから、会社にとって都合の悪い者が株主になる恐れがあります。そのことを防止するために株式を相続した相続人に対して株式の売渡を請求することができる定めを定款に設けることができるのです。

この定めがあれば会社は不都合な相続人に対して相続した株式を会社に売り渡すように請求することができます。売却価格は、双方が協議して決定することになります。協議が不調な場合や協議することができない場合は、裁判所に売却価格の決定を求めることになります。

裁判所は、会社の資産状態などを総合的に勘案して株式の売却価格を決定します。

(まとめ)

相続財産の中に株式が含まれている場合、証券会社で売買される上場株式であれば、相続手続は比較的簡単に行うことができます。遺産分割協議を行って相続人を定めれば、証券会社に対して相続手続を行います。相続した株式は、適宜のタイミングで売却することができます。

一方、非上場株式の場合は、相続による名義変更や相続後の売却など色々と面倒な手続が発生します。親が会社のオーナー株主で子供が相続する場合は、自分の会社のことですので問題はないと思いますが、そうでない場合はその会社の定款などを確認して手続きを調査する必要があります。

 

Follow me!