遺言書の文面全体に「斜線」を引いたり「×」をするとどうなりますか
遺言書の文面全体に斜線を引いたり、文面全体に大きくバツ「×」をした場合、遺言書の効力はどうなるのでしょうか。遺言書の文言に二重線などを引いて訂正をするのであれば、訂正方法が方式に従っている限り、遺言書が初めから訂正後の文言で書かれていたことになります。訂正の方法が方式に従っていなかった場合は、訂正はなかったものとみなされ、元々書かれていた文言通りの効力が生じることになります。
今回は、文面全体に斜線を引いたり、バツを書いた場合の遺言書の効力について見ていきます。

( 自筆証書遺言の場合 )
遺言者が自筆証書遺言の文面全体に斜線やバツを書いた場合、遺言書は全部が無効になります。遺言者が遺言書を作成してから翻意して遺言を撤回するには、遺言を「破棄」する方法があります。書いた遺言書を破棄すれば、事実上、遺言書はこの世に存在しなくなるため撤回したことになります。
遺言者が故意に遺言書全体に斜線やバツを書く行為は、一般的意味において、そこに書かれている遺言の全ての効力を失わせる遺言者の意思の表れと考えるのが普通であり、遺言を撤回したことに該当すると考えられるからです。
遺言の破棄方法には、遺言書の焼却、遺言書の切断、などがありますが、今回のような文面の抹消行為も含まれることになります。

( 相続人が勝手に斜線やバツを書いたらどうなるか )
自筆証書遺言は家庭裁判所で検認を受けます。検認済みの遺言書に相続人の1人が勝手に斜線やバツを書き込んでも遺言書の効力に影響はありません。相続人による書き込みや加除訂正は、遺言者本人がしたものでないため無効です。遺言書の内容がそれによって変更されることはありません。
また、検認済みの遺言書は、遺言書開封時の写しが家庭裁判所に保管されていますので、遺言書の原文内容を裁判所で確認することができます。
検認前の遺言書に対して、これを発見した相続人が勝手に斜線やバツを書き入れた場合も遺言書の効力に影響はないと考えられます。但し、このような行為をすれば犯罪行為 (「文書毀棄罪」)に該当する可能性があります。
また、場合によっては、遺言書の偽造、変造、破棄行為とみなされ相続人としての地位を失う恐れがあります。この点は注意が必要です。

( 自筆証書遺言保管制度等を活用している場合)
自筆証書遺言を作成した後、法務局の遺言書保管制度を利用している場合があります。この場合は、遺言書の原本は法務局に保管されています。つまり、この場合は遺言者本人や相続人が勝手に斜線などを施すことはできません。
同様に、公正証書で遺言書を作成した場合も遺言書の原本は公証役場に保管されていますので、勝手に斜線などを施すことはできません。
なお、公証役場で遺言書作成すると、「公正証書遺言(正本)」や「公正証書遺言(謄本)」という書面が遺言者に渡されます。この渡された遺言書に対して斜線やバツを引いても何の意味もありません。原本は公証役場に保管されているからです。
渡された書面は原本のコピーの様なものです。但し、各種の相続手続では原本と同様な効力があり相続手続きに使用できます。公証役場では紙の原本を保管すると同時に、遺言者の同意を得て、電子化された副本もパックアップセンターに保管されています。

(まとめ)
遺言者が、故意に遺言書の文面全体に斜線などを引く行為は、遺言書全体を不要として、遺言書の効力を失わせる行為と考えられます。相続人が斜線の引いてある遺言書を発見して、内容が判読可能であっても効力はないものとなります。
斜線の引いてある自筆証書遺言では、不動産の登記申請は却下されます。銀行などの相続手続も同様だと思います。
斜線やバツ以外にも遺言書への色々な書き込みはあります。その場合は遺言書の解釈について相続人間で揉める原因となります。
特に自筆証書遺言は、本文の全文は自筆で書く必要があるため、高齢者が作成する場合、加除訂正などが発生しやすくなります。適正に加除訂正がなされていれば良いのですが、いい加減な方法で加除訂正がされていると解釈で揉める原因となります。
色々と揉めたくない場合は、公正証書による遺言書の作成をお勧めします。遺言書は作成時から公証役場に保管されていますので不正な改ざん等は一切できません。
遺言書の作成で相談したい場合は司法書士にお尋ねください。色々なアドバイスをしてくれると思います。

