闘病中の息子に相続させる旨の遺言書を書きましたが、息子が遺言者より先に亡くなったら息子の子に相続させることはできますか

父親が自宅などの相続財産を息子に相続させるために遺言書を書く場合があります。このとき息子が病気療養中の場合があります。病気も軽微なものからガンなどの重篤なものまで色々なケースがあります。父親が遺言書を書いた後、息子が父親より先に亡くなってしまった場合、この遺言書で息子の子(孫)に自宅などを相続させたいと考えています。このようなときはどのようにすればよいのでしょうか。

今回は、相続人の変動に伴う「予備的遺言」について考えてみます


(「遺贈する」旨の遺言と「相続させる」旨の遺言 )

遺言書の書き方として、〇〇不動産を「山田太郎に遺贈する」とする書き方と「山田太郎に相続させる」とする書き方があります。前者を「遺贈」といいます。後者は「特定財産承継遺言」といいます。

民法の定めでは、「遺贈」については、財産を貰う人(受遺者)が遺言者よりも先に亡くなった場合は、その遺贈は効力を生じないとされています。つまり、遺言者より先に亡くなった受遺者への遺贈は無効になります。無効になると、その相続財産については残された相続人全員で遺産分割協議を行って相続先を定める必要があります。

一方の「特定財産承継遺言」については、民法にこのような定めはありません。そのため、学者の間では遺贈に関する定めと同様に無効と考える説と息子の孫などの代襲相続人に相続されるとする説がありました。

遺言書に「自宅不動産を息子に相続させる」と書いたが、息子が遺言者よりも先に亡くなった場合の取り扱いとして、無効とするか息子の子(遺言者の代襲相続人)に相続させるかの争いがあったということです。


( 裁判所の考え方 )

争いのあるこの問題について、最高裁判所は、特定財産承継遺言の場合も、原則として、遺贈と同じように無効と判断しました。つまり、遺言者の孫などの代襲相続人に相続されることはないとしたのです。

判決文での説明では、「遺言者が長男の代襲相続人である孫に相続させる旨の意思を有していたと認められる特段の事情がない限り、その効力を生ずることはない」としました。簡単に言えば、例外はあるものの、原則として無効ということです。

しかし、裏を返すと、孫に相続させる意思が明確であれば効力を生ずることがあることになります。孫に相続させる意思は、遺言書の当該条項と他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから判断されるとしています。


( 具体的な遺言書の書き方 )

遺言する場合、受益相続人が遺言者よりも先に死亡する可能性がある場合は、遺言者が亡くなった後、遺言書に関して最高裁判所が判決で述べた特段の事情を巡って紛争が生じないようする必要があります。そのためには、遺言書の書き方を工夫する必要があるのです。

具体的には、遺言者の死亡以前に息子が死亡したことを停止条件とする、遺言者の代襲相続人である息子の子に対する停止条件付遺言の一種としての「予備的遺言」をする必要があります。(少し表現が難しいですが、分からなければ無視していただいて結構です。)

< 文例案 >

遺言書の文例としては次のようになります。

第×条 遺言者は、下記 甲不動産を遺言者の長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。

   記 

甲不動産の記載   (省略)

第×条 遺言者は、長男〇〇〇〇が遺言者より先に又は遺言者と同時に死亡した場合は、甲不動産は、長男〇〇〇〇の子〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。

遺言者の子が複数いる場合は、持分を記載する必要があります。例えば、「長男の子〇〇〇〇は持分2分の1、〇〇〇〇は持分2分の1、の割合で相続させる。」等とします。法定相続分でよい場合は、「長男の子らに対して法定相続分に応じて相続させる」等とします。

注意すべき点としては、相続人以外の人にも相続させる場合は、「相続させる」とは書けないので「遺贈する」と書きます。例えば、相続先を長男の子とともに長男の配偶者とする場合は、長男の子に対しては「相続させる」、長男の配偶者には「遺贈する」と書きます。長男の配偶者は遺言者の相続人ではありませんので「相続させる」とは書けないからです。


(まとめ)

遺言書を書く場合、相続財産を受け取る予定の方が病弱であったり高齢である場合があります。そのような場合において何も考えずにその方に相続させるとする内容の遺言書を書いてしまうと遺言書で実現したかった相続ができない恐れがあります。

少しでもリスクがあると考える場合は、予備的に相続を受け取る人を遺言書の中に明示的に記載しておく方が良いと思います。公正証書遺言などの専門家による遺言書作成の実務では、リスクがある方の場合は、予備的遺言を積極的に勧めるようにしていると思います。

人生は先のことは誰にも分かりませんので、必要なリスク対策をしてもらいたいと思います。

 

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