パソコンなどで遺言書が作成できるように法改正される模様です

従来、公正証書によらない遺言書は遺言者本人による「手書き」が必要でした。しかし、最近のデジタル機器の普及によって、パソコンなどによって遺言書の作成ができるようにしてほしいとの要望が高まっていました。このような中、令和8年1月20日、政府の遺言制度の見直しを検討する法制審議会は、遺言関係の改正に関する要綱(案)を取りまとめました。

要綱(案)では、遺言制度に関して色々な改正が検討されていますが、手書きが原則であった自筆証書遺言についてパソコンなどのデジタル機器による作成が認められることになります。デジタル機器による遺言の作成  (俗に「デジタル遺言」と言われています) に伴って、従来、遺言書の作成に必要であった遺言への押印は、添付書類への押印も含めて、一律不要とされます。

今回の改正要綱(案)は、令和8年通常国会に提出され審議される予定です。若干の修正の可能性はありますが、概ね原案どおり成立するものと思われます。


( 遺言の作成方法 )

今回の改正が成立すると遺言書の作成方法について、従来の「自筆証書」「公正証書」「秘密証書」に加えて「保管証書」による方法が追加されます。また、従来より認められていた特別の方式による遺言 (船舶遭難者による遺言) についても必要な改正がなされています。

秘密証書による遺言や特別の方式による遺言は、実例があまりないため、法改正後の遺言書の作成方法としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、保管証書遺言が主流ということになります。

このうち、自筆証書遺言については、従来必要であった遺言書への押印が不要となります。公正証書遺言についての変更はありません。保管証書遺言が今回新設され、これを活用すればパソコンなどで遺言書が作成できることになります。


(「保管証書遺言」とは )

「保管証書遺言」とは、作成した遺言を法務局に保管依頼する遺言のことです。従来よりある「自筆証書遺言の法務局保管制度」とは別のものです。自筆証書遺言の法務局による保管制度は、自筆証書遺言を法務局に保管依頼するものです。保管証書遺言は自筆証書遺言ではありませんので別の制度となります。この点の注意が必要になります。

なお、保管証書遺言による遺言は家庭裁判所による検認手続きは不要となります。また、遺言者が亡くなったとき遺言者の指定する者に対して通知がなされます。

<保管証書遺言の作成方法>

次の①②③の全ての手順を行う必要があります。一つでも欠ければ遺言書としての効力はありません。

① 遺言者が遺言の全文が記載された証書を作成しこれに署名します。作成はパソコンなどのデジタル機器を使用して作成することができます。また、紙の証書ではなくデジタルデータ(電磁的記録)として作成することもできます。デジタルデータとして作成する場合は、遺言書の内容は全文と氏名となり電子署名を行うことになります。

つまり、パソコンで遺言書を作成してプリンターで印刷し、遺言書に遺言者が氏名を自署すれば良いのです。また、パソコンにあるデジタルデータにマイナンバーカード等で電子署名をしてデジタルデータとして作成することもできることになります。デジタル遺言データをUSBメモリーなどに格納して使用することになると思います。

② 遺言者が法務局の担当者 (「遺言書保管官」と言います) の面前で、その証書に記載され、又は記録された遺言の全文を口述する必要があります。

つまり、作成した遺言書の全文を遺言書保管官の面前で朗読する必要があるということです。なお、遺言書の本文以外に財産目録がある場合については、朗読の必要はなく、遺言書保管官の前で遺言者に閲覧させること等で対応できるとされています。

③ 遺言証書を法務局に保管依頼して保管してもらう必要があります。

法務局への保管の依頼は、保管の申請を行う必要があります。申請をするためには、作成する遺言書の書式が一定の標準様式を満たしている必要があります。必要な標準様式として、書面の場合は無封で余白のサイズ等の様式が決まっています。電磁的記録の場合は、ファイル形式、拡張子、データサイズ等が定められています。

保管の申請は、保管証書遺言書、申請情報、添付情報を遺言書保管官に提供する方法によることになります。実際の運用方法は今後明確になると思いますが、事前に保管申請を法務局に行い申請書に不備がなければ、遺言書の全文口述の日時を予約して行うことになると思います。


( 遺言書の真正の確保方法 )

パソコンなどのデジタル機器を使用して作成した遺言書については、推定相続人等からの偽造や変造のリスクがあると懸念されてきました。そのための対策として、本人確認や口述の手続が定められています。

(1) 本人確認

遺言書保管官は遺言者に対して、出頭を求め、本人確認を実施します。具体的には、マイナンバーカード等の顔写真付きの本人確認資料の提示を求めて本人確認することになります。

遺言者からの申し出がある場合でその申し出が相当と認められるときは、法務局への出頭に換えて、WEB会議システムを活用して本人確認をすることができます。

(2) 遺言内容の確認

遺言者保管官は遺言者に対して、出頭を求め、遺言者本人による遺言書全文の口述を求めます。本人が遺言書全文を遺言書保管官の前で朗読することにより本人の遺言意思を確認します。

この場合も遺言者からの申し出がある場合でその申し出が相当と認められるときは、法務局への出頭に換えて、WEB会議システムを活用して遺言書全文の口述をすることができます。


(まとめ)

デジタル遺言の作成がいよいよ現実のものとなってきました。相続の現場で仕事をしていると本人が生前に遺言書を作成しておけば揉めることのなかった相続のケースに意外と多く遭遇します。その意味で、できるだけ多くの方に「終活の一環」として遺言書の作成をして頂きたいと思います。

なお、遺言書の作成方法が簡便になったとしても遺言書の中身の検討は意外と難しいものです。作成手続が簡単になっても中身の検討はしっかりと時間をかけて慎重に行う必要があります。

遺言書の内容は遺言者の置かれた状況に応じて千差万別です。ネット情報やマニュアル本を見て標準的な書式で簡単に書いてしまうと相続発生時に問題となることがあります。遺言書を作成するには、一定の法律上の知識や実務上の知恵が必要になります。

遺言書の作成を検討される場合は、司法書士や弁護士に内容の確認やアドバイスを受けることをお勧めします。

 

Follow me!