長男が長年行方不明ですが、将来の相続のことを考えた場合どうしたら良いですか。

自分が将来亡くなった後の相続人として妻、長男、次男がいます。長男が何年も前に蒸発してしまい現在も行方不明の状態です。このようなとき、将来、自分が亡くなった後の相続手続きにおいて問題が生じると思いますが、どうしたら良いのでしょうか。

今回は、推定相続人の中に行方不明の者がある場合の対応方法について考えてみます。


( 何も事前の対策を取らない場合どうなるか )

将来、相続が発生したとき、相続手続きを行う必要があります。相続手続きは、遺言書がなければ、相続人全員の合意によって進める必要があります。具体的には、相続人全員による「遺産分割協議」が必要になります。

このとき相続人の一人が行方不明の場合、その相続人を除いて遺産分割協議を行うことはできませ。そのため、まずは行方不明の長男の捜索をする必要があります。捜索しても見つからない場合は、次のいずれかの方法をとる必要があります。

(1) 不在者財産管理人を選任する

不在となっている長男のために家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申立て、長男のための不在者財産管理人を選任する必要があります。不在者財産管理人は残された相続人との間で遺産分割協議を行うことになります。

不在者財産管理人とは、行方不明の長男に代わって長男の財産を管理する人です。不在者財産管理人は、長男の有していた財産を洗い出して長男に代わって保管・管理することが責務となります。そのため、長男の保有財産の財産目録を作成して管理することになります。

ところで、今回の長男のように突然失踪したケースでは、長男の保有財産で管理すべきものは殆どないと思われます。そのため、管理すべき財産は今回の相続で発生した相続財産ということになります。不在者財産管理人は長男の相続分を管理することになります。

不在者財産管理人が他の相続人と遺産分割協議をする場合、長男の相続分が不当に不利になるような協議には合意できません。他の相続人が要望しても不在者の相続分をゼロにするような協議は難しいと思います。また、遺産分割協議内容については、家庭裁判所の許可を取る必要もあります。

従って、不在者財産管理人の選任となった場合は、失踪者(長男)の相続分をゼロにするようなことが難しくなるという問題が生じます。


(2) 失踪宣告を申立てる

「失踪宣告」とは、裁判所で失踪宣告の審判を受けることによって、行方不明者を死亡したものと扱う制度です。行方不明者は行方不明になってから7年間、災害や遭難などの危難で生死不明となった場合は危難が去ってから1年間経過したときは、裁判所に失踪宣告の申し立てをすることができます。

裁判所によって失踪宣告がなされると、普通の行方不明の場合は行方不明となってから7年経過した時、災害などの場合は危難が去った時に死亡したものとされます。

その後の対応は、長男が死亡したものとして、相続手続きを進めることになります。戸籍上も長男は死亡したことになります。


( 事前対応として何が必要か )

事前の対策を何も取らなければ、将来発生する相続手続きが面倒で困難になる可能性があります。

そこで、事前の対策として推定相続人の中に行方不明の者がいる場合は、生前の「遺言書」の作成で対応することになります。遺言書があれば、相続手続きには、相続人全員による遺産分割協議が不要となるからです。

遺言書の書き方として、2つの選択方法があります。1つは、「長男に何も相続させない場合」、他の1つは「長男にも相続させる場合」です。順にみていきます。

(1) 行方不明の長男には何も相続させない場合

遺言書の書き方としては、長男以外の相続人に全財産を相続させると書けは良いことになります。相続財産に漏れがあると、その財産について遺産分割協議が必要になりますので注意が必要です。

遺言者が亡くなると、遺言執行者が定められていれば遺言執行者が、定められていなければ相続人が、相続人全員に対して遺言内容を通知する必要があります。行方不明の長男にも通知は必要となります。但し、行方を調査するために戸籍や住民票などの公的な資料を使って調査をした結果、所在が判明しなければ、それ以上の探索は不要とされています。後は、遺言書の内容に従って相続手続きを行えば良いことになります。

注意点としては、行方不明の長男にも「遺留分」がある点です。遺言書によっても相続人の遺留分を奪うことはできないからです。後日、長男が帰来して遺留分を請求した場合は、支払う必要があります。

なお、遺留分の請求にも「時効」はあります。時効期間が経過すれば遺留分の請求はできないことになります。相続開始及び遺留分の侵害を知った時から1年、又は相続開始の時から10年で時効となります。


(2) 行方不明の長男にも相続させる場合

遺言書で行方不明の長男にも相続させると書けば、その財産については長男が相続することになります。

但し、長男は行方不明のため、遺言書で定めた財産を直ちに長男が管理することはできません。遺言執行者 (定められていない場合は相続人)は、長男を探索し遺言書の内容を通知する必要があります。この場合の探索も戸籍などでの調査で良いことになります。公的資料での調査を行っても所在が不明であれば通知は不要となります。

長男が行方不明ですので、この場合は長男のために不在者財産管理人を選任する必要があります。不在者財産管理人が行方不明の長男に代わって相続財産を管理します。

この場合の帰結としては、長男が帰来すれば長男に相続財産を渡せばよいことになります。帰来しない場合は、相続財産管理人が管理し続けることになります。専門職が管理人に選任されている場合は管理報酬が必要になります。管理報酬は管理している相続財産から支弁されますので、財産がなくなれば管理終了となります。また、専門職によっては、管理財産を供託して任務を終了する場合もあります。

なお、この場合の遺言書の記載内容として、長男が遺言者の死亡よりも先に亡くなっていた場合について予備的に相続方法を記載しておいた方が良いと思います。遺言者よりも先に亡くなっていた場合、遺言者の相続人にならないからです。

遺言文言としては、一例として「長男が遺言者の相続開始以前に死亡していたときは、遺言者は長男に相続させるとしていた財産を次男に相続させる。」となります。


(まとめ)

推定相続人の1人が行方不明の場合は、事前対策として遺言書の作成をした方が良いと思います。遺言書がない場合、相続人は相続手続きで苦労することになります。

また、行方不明の場合において失踪宣告を選択することは、より慎重な判断が必要になります。本人がどこかで生きているかもしれませんので、死亡したこととする扱いは、より慎重な判断が必要になると思います。

行方不明者がいる場合の遺言書の作成で相談したい場合は、最寄りの司法書士に相談してください。遺言書の作成についてアドバイスしてくれると思います。

 

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