相続した建物が老朽化していて近隣に被害を及ぼしそうな状況ですが、どうしたら良いですか

相続した建物が長い間誰も住んでいない築50年以上の木造家屋のことがあります。実際に現地に行って様子を確認すると老朽化がかなり進んでおり、そのままの状態では人が住めるものではないことがあります。このまま放置すれば、壁のトタンが剥がれたり、屋根の瓦が落下する恐れがあり、また周囲のブロック塀も危険な状況になっていることも多いと思います。

今回はこのような建物を相続した場合、どのような点に注意する必要があるかについて見ていきたいと思います。


(「相続登記義務化」の影響 )

令和6年4月1日より「相続登記の義務化」が開始されました。そのため、従来より相続されず放置されていた田舎の実家や遠隔地の山林などに対して相続登記を行うことが多くなっています。

その結果、長い間誰も住まずに放置され老朽化した「空き家」を相続する場合が増えています。建物は人が生活していれば老朽化の進み具合は緩やかなものになります。しかし、一度空き家になると建物の老朽化の速度は速くなります。

相続人の間の協議でやむなく老朽化した空き家を相続した場合、建物の登記名義だけを変更すれば済む問題ではないのです。


( 老朽化した建物が近隣に被害を及ぼす恐れがあります )

老朽化した建物やブロック塀が損壊して通行人や近隣住民に被害を及ぼせば「損害賠償責任」が発生します。具体的には民法の定める「工作物責任」です。空き家となった建物は土地の上の工作物となります。

民法では次のように定められています。

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」

「但し、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」

「瑕疵」とは建物の欠陥のことです。建物として本来備わっているはずの性能や品質を保持していない状況であるということです。「占有者」とはその建物を現実に管理している者です。所有者から借りて住んでいる者や管理を委託されている者などが該当します。

占有者については、建物に対して必要な対策や保全措置を講じていれば、免責される可能性があるとされています。但し、現実に損害が発生している場合は、対策が不十分と判断され易いため、容易には免責されないと思います。予測不可能な大きな台風や地震などが発生した結果、「不可抗力」的に損害が発生した等の場合に限定して免責されると思います。

しかし、建物の所有者には、たとえ「不可抗力」的な理由で損害が発生したとしても免責されないとされています。つまり、損害が発生すれば一切の言い訳はできないということです。このことを所有者は「無過失責任」を負うといいます。この点が工作物責任の恐ろしい点であり、所有者は十分に理解しておく必要がある点です。

 


( 行政からの指導 )

「空家法」という法律があります。正式名称は「空家等対策の推進に関する租税特別措置法」と言います。この法律は、空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしうることから、地域住民の生活環境の保全を図り、空家等の活用を図ることを目的とした法律です。

空家法では、市町村は以下の条件を満たす空家等を「特定空家等」に認定することができます。空き家の好ましくない状態が列挙されています。

(1)そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

(2)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となる恐れのある状態

(3)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

(4)その他周辺の生還津環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

この「特定空家等」に建物が認定されると、市町村は所有者に対して除去、修繕等の助言・指導、勧告、命令を行うことができます。行政から勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例の適用が除外され、固定資産税等が最大6倍に高くなります。

 


( 空家を相続した者の行うべき事柄 )

空家を相続した相続人は、空家の状態が特定空家等に該当しないようにする必要があります。相続した建物や塀などが安全・衛生・景観・治安などの面において不適切な状態とみなされないように必要な改修や修理などの保全措置を講ずる必要があります。

具体的には、次の事柄を行う必要があります。

① 建物や塀などの不具合があれば改修工事を行う。

② 建物に定期的に訪問して不審者が立ち入っていないことを確認する。同時に換気を行って室内に空気を通す。水道が使えれば水道水を流しに流す。

③ 建物周辺の雑草や樹木の処理をする。害虫の発生がないことを確認する。

④ 建物周辺に不法投棄されたものがあれば除去する。

 


(まとめ)

相続した老朽化した空き家等は解体して更地として売却する場合があります。また、解体せずにそのまま売却することもあります。長年空き家となっている建物を売却する場合は、相続した者もその建物や敷地の状況について十分認識していないことが多いとお思います。

売却した後、いろいろな不具合が発生した場合、契約不適合責任を買主から主張され、代金減額請求や損害賠償請求されることがあります。

売却にあたっては、可能な範囲で状況説明を行い、それ以外の点は売買契約書の免責条項に盛り込むなどの工夫が必要になります。

不動産の仲介業者ともよく相談して問題が生じないようにしてもらいたいと思います。

 

Follow me!