「相続登記の義務化」の開始によって登記相談が混みあっています

令和6年4月から「不動産登記の義務化」が開始されたことから、法務局や司法書士会への相続登記に関する相談が増えています。法務局の中には相談のための予約が最大1か月半待ちの所もあるようです。3年以内に相続登記をしないと10万円以下の罰金 (過料) を科せられる恐れがあるため、当面の混雑は避けられない模様となっています。

相談で込み合う風景


( 法務局での待ち期間も長くなっています )

神戸地方法務局によると、支局、出張所を含む兵庫県内17カ所での登記手続き案内は、ここ1年ほどは予約待ちの期間が長くなっているとのことです。今年2月には、予約を入れてから最大1カ月半待ちのところがあるそうで、6月になっても状況は改善されていないとのことです。

神戸市中央区の本局では、2月に10日程度だった待ち期間が、6月に3週間程度まで延びたとのことです。このような状況は他の地域でも同じような傾向が続いていると見られます。まだ込み合っていない地域でも今後は混みあってくることが予想されます。

相談は殆んどが相続登記関係の相談となっており、司法書士に依頼せず自分で登記申請を行おうとしている方が登記申請書の記入方法や添付書類について説明を受けるものが多くなっています。

法務局での相談時間は1回が20分程度と短いところが多いため、1回の相談時間では足らないため複数回相談に訪れる方もいます。複雑な相談内容によっては、司法書士や土地家屋調査士への依頼を勧められることもあります。


( 司法書士会も無料の相続相談に力を入れています )

全国の司法書士会も相続登記の義務化に対して無料相談会を幅広く設けて相談体制を充実させています。各都道府県の司法書士会の本会や各支部で無料の相談会を開催しています。また、司法書士会が相続登記に詳しい司法書士を法務局に無料相談員として派遣しているケースもあります。

全国の司法書士会による無料相談では不動産登記などに関する相談件数は増加傾向を示しています。概ね1.5倍程度に相談件数が増加しているとのことです。この傾向は、今後しばらくは続くものと思われます。


( 3年以内の期限が問題  )

相続登記は亡くなってから通常は3年以内に行うことが義務化されています。これから、相続が発生する場合は3年以内に行えば良いのですが、これまでに相続が発生していた場合も3年以内の相続登記が義務化されています。

昔に亡くなって相続登記をしないで放置してある場合は、亡くなってから既に3年は経過しています。この場合は、令和6年4月1日から3年以内に行う必要があります。つまり、令和9年3月31日が期限ということになります。

今回の義務化の背景には、誰が所有者が分からない「所有者不明土地」の問題があると言われています。これまでは相続登記は任意だったため、登記簿上の所有者が亡くなっても名義変更を行わず、そのまま放置してあるケースが多くみられました。

特に田舎の田や畑、山林などでは放置してあるものが多くあります。このような所有者不明の土地の面積が九州の面積より広いと言われていますので大変な状況になっています。政府も本腰を入れて相続登記の義務化を推進する覚悟を持っているものと思われます。

問題はこのような膨大な面積に及ぶ所有者不明土地の相続登記の期限が令和9年3月31日に到来するということです。まさに「不動産の2027年問題」となる事柄です。

現在も徐々に相続登記の相談が増えていますが、期限が近付くにつれて相続登記を放置している人が動き始めると大変な状況になることが予想されます。状況を理解している人は早めに相談をして動き始めているということになります。

 

九州の地図


( 長く放置してあるものは専門家に頼まないと解決が難しい )

亡くなったのが、明治・大正・昭和初期で相続登記を行わないで放置してある場合は、自分で相続登記を行おうとしても難しい場合が多いと思います。

相続登記は戸籍や住民票などの公的な書類を揃えて相続関係を証明する必要がありますが、役所の書類にも保存期限がありますので保存期限切れで書類が収集できないことがあります。

また、亡くなった方の相続人の中には既に亡くなっている方もいる場合があるため、相続人の調査に手間と時間がかかります。相続人の数が数十人になることも普通にあり得ます。相続人の数が増えれば、通常、その所在は日本全国に及びます。最近は海外在住のケースも増えていますので全ての相続人にコンタクトをとることは大変な作業になります。

また、相続人の調査についても自分の直系血族の戸籍等は取得できますが、傍系血族の戸籍等は取得できませんので専門家に依頼する必要があります。


さらに、相続人の全貌が明らかになったとして、その全ての相続人に対して「遺産分割協議」を依頼する必要があります。遺産分割協議書の内容を理解して署名捺印してもらう必要があるということです。相続人の中に「認知症」の方がいればその方は署名することができません。成年後見人を選任するなどの裁判手続きが別途必要になります。

相続人が認知症以外でも、相続人が「行方不明」「未成年者」「相続放棄をしていた」「外国人」など色々なケースがあります。これらのケースでは簡単には手続きができません。裁判手続きなどの特別の手続きが別途必要になります。

このように相続登記を長く放置してある場合、簡単には相続登記を行うことができません。法務局や司法書士会の相続相談に何度も通っても解決が困難な場合が多いと思います。

また、登記の専門家である司法書士に依頼しても、司法書士も簡単には登記できる問題ではなく1件処理するのに相当な時間が必要になります。相続人間の遺産分割協議において揉(も)めるようなことがあれば、別途、「遺産分割調停」「審判」などの裁判手続きを行う必要があるため、いつ終了できるか見積もれないケースも多くなります。


(  相続登記を行わないで長く放置してある場合は早めに相談をして下さい )

自分が相続に関係すると思われる不動産については、登記簿を確認して相続登記が行われているかチェックしてみることが必要です。特に、田舎の田や畑、山林などについては、よく確認してみることが必要です。

そして、名義変更がされておらず祖父母名義などのままで放置されている場合は、早めに司法書士に相談下さい。今のうちなら時間はかかると思いますが、対応はできると思います。2027年の期限が近づいてくれば、司法書士に依頼を受ける余力が段々と少なくなると思います。依頼が必要な場合は早めの相談をして下さい。


( まとめ )

「相続登記の義務化」の修羅場は、これから2027年にかけて発生することになります。九州に匹敵する所有者不明土地の相続登記が一斉に動き始めたら、法務局も司法書士も大変な作業になります。ピークの発生を少しでも少なくするために早めに処理を開始することが必要になります。

そもそも登記がどのようになっているかも含めて分からない方は早めに司法書士に相談下さい。司法書士が登記簿などを確認して必要な対応方法を教えてくれると思います。相談先の司法書士が分からない方は、最寄りの司法書士会に電話をすれば、近くの司法書士を紹介してくれると思います。

 

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