「遺言書」はどのように探したら良いですか
親が亡くなり相続手続を行う必要があるとき、まず最初に確認しなければならない事柄として「遺言書の有無」があります。遺言書があるにもかかわらず、これに気付かずに遺産分割を行った場合、その分割が無効になる場合があるからです。
通常、遺言書は亡くなった方(被相続人)の書棚や机の引き出しの中などに保管されていることが多いと思います。もちろん、大事な書類であるので銀行の貸金庫や信頼のおける方に預かってもらっていることもあります。遺言書の作成に関わった弁護士や司法書士に保管を依頼している場合もあります。
( 遺言書の種類について )
よく使われる遺言書の作成方法として、①自筆証書による遺言(「自筆証書遺言」)と②公正証書による遺言 (「公正証書遺言」)があります。また、自筆証書遺言については、自ら保管する方法以外に法務局(登記所)に保管を依頼する方法(「自筆証書遺言の法務局保管制度」)があります。
この遺言書の種類や保管方法に応じて遺言書の探索方法も変わってきます。
(「自筆証書遺言」の探索方法 )
遺言書の探索で最も難しいのが自筆証書遺言の場合です。本人が書いてどこかに保管している訳ですから、簡単に発見できない場所に保管されていると発見するのが難しい場合があります。
仏壇の奥などに保管されていることもありますので色々な場所を探してみる必要があります。面倒な場所として銀行の貸金庫があります。貸金庫の中に遺言書が保管されている場合、相続人の一人が貸金庫を開扉して保管物を確認することは意外と面倒な手続きが必要になります。
手続は銀行ごとに異なっていますが、基本的に貸金庫の開扉を請求される方が相続人全員の同意を取っていることが必要になります。そのため、全ての相続人が誰で、その同意を取ったことを戸籍と同意書などで証明する必要があります。相続人の1人が自分が亡くなった父親の長男だから運転免許証などを見せて貸金庫を開けてもらえるような簡単なことではありません。
(「公正証書遺言」の探索方法 )
公正証書遺言は、遺言書の原本が遺言を作成した公証役場に140年間保管されていますので探索は比較的容易になります。
まず、被相続人の除籍謄本を用意します。公正証書遺言を相続人が探索する場合、遺言者本人が生きている間は探索することができません。公正証書遺言の探索は本人が請求する以外は亡くなってからしかできません。そのため、本人の死亡を確認するため除籍謄本が必要になります。
被相続人の除籍謄本が入手出来たら、請求人が相続人などの利害関係人であることを証明できる戸籍謄本、請求人の身分を証明する印鑑証明書、実印を用意して公証役場で探索を申し出ます。
公証役場では全国の公証役場をネットワークでつないでいる「遺言検索システム」を使用して遺言書の有無を検索します。遺言書が作成されていることが確認された場合は、遺言書が保管されている公証役場を教えてくれます。
教えてもらった公証役場に出向いて「遺言の閲覧」か「遺言の写し」の請求をすることができます。ここでも請求者が相続人であることの証明書類が必要になります。遺言の閲覧は、遺言書の内容を見るだけです。1回200円の手数料が必要です。遺言の写しは、保管されている遺言書のコピーを入手できます。遺言書1ページに付き250円です。
( 法務局による自筆証書遺言保管制度を活用している場合 )
法務局に自筆証書遺言を保管依頼してある場合は、事前に遺言者が法務局に届けてある相続人などに本人が亡くなった場合通知が行くようにすることができます。そのため、遺言書が保管されている場合、これを無視して相続手続を行うことは少ないと思います。
通知を受けた相続人などは法務局に対して、①「遺言書保管事実証明書」の交付請求、②「遺言書情報証明書」の交付請求、③「遺言書の閲覧請求」をすることができます。
①の遺言書保管事実証明書は、遺言書が保管されているかどうかを確認することができます。②の遺言書情報証明書は遺言書の内容を確認することができます。この証明書は遺言書原本の代わりとして各種相続手続に活用することができます。③の遺言書の閲覧請求は、遺言書の内容を閲覧することができます。
いづれの手続きも請求できる方(相続人、受遺者等、遺言執行者など)が決まっています。また、請求時に必要な各種証明書類も決まっています。請求は法務局へ事前の「予約」が必要になります。一定の手数料も必要になります。
法務局による自筆証書遺言保管制度は便利な制度ですが、それぞれの請求に予約が必要となったり、請求者の身分を証明する戸籍や住民票など手続きに必要な書類が多く、意外と面倒な手続きとなっています。
この制度を活用すると自筆証書遺言であっても「家庭裁判所の検認」が不要とされていますが、検認手続きにも匹敵するような少し面倒な手続きが要求されています。相続人にとってはあまり負担軽減にならないかもしれません。
(まとめ)
遺言書を書いた場合は、近しい親族には遺言書を作成した旨とその所在は告げておくべきだと思います。せっかく遺言書を作成しても、本人が亡くなってから発見されなければ意味がないからです。
作成段階で一定の費用は掛かりますが、相続人のことを考えれば「公正証書」で遺言書を作成しておいた方が良いと思います。紛失の恐れもなく遺言書の探索も比較的簡単にできます。
これから遺言書を作成しようとする場合は、作成後の事も考えて作成する遺言書の種類を検討してもらいたいと思います。