知らない司法書士から「相続に関する手紙」が届いたらどうしたら良いですか

ある日突然、知らない司法書士事務所から相続に関する手紙が届くことがあります。最近流行りの「詐欺の新手口」かと思って警戒してしまうかもしれません。しかし、多くの場合は相続登記の依頼を受けた司法書士が相続人宛てに出している手紙なのです。


相続が発生して相続手続を行う場合、故人の遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。このとき多くの場合、誰が相続人であるかは判明しています。親族間のことなので迷うことはありません。しかし、色々な事情から簡単に相続人が分からないことがあるのです。

このような場合に相続登記の依頼を受けた司法書士は、相続人を探し出して相続手続きの依頼をするために手紙を出します。これが今回のテーマである「相続に関する手紙」の正体です。


( 相続人への手紙が発生する代表的なケース )

相続人への手紙が発生する代表的なケースについて見て行きます。

(1)  不動産の名義変更が長期間放置してある場合

親が亡くなっても親名義の自宅などの不動産について、相続人への名義変更を行わないで放置してあることがあります。さらにその相続人が亡くなってしまうと名義変更をしないまま相続が更に発生することになります。これを「数次相続」と言います。この何代も相続登記をしないで放置してある不動産について、いざ相続登記をしようとすると大変な事態になることがあります。

通常、相続人が誰であるかは相続人の数が多くなり過ぎると分からなくなります。近くの親戚の範囲であれば、住所や氏名は分かっていると思います。また、電話番号も分かっている場合が多いと思います。しかし、相続人が枝分かれ的に発生する数次相続の場合は、分からないことが多いと思います。


(2)  亡くなった方に離婚歴がある場合

子供のある夫婦が離婚して子供が一方の配偶者に引き取られ全く交流のない場合が考えられます。子供を引き渡した配偶者の一方が再婚して子供ができたとします。そして、この方が亡くなったとします。そうすると相続人は、その方の現在の配偶者と子供、それと分れた配偶者との間の子となります。

離婚した場合、別れた2つの家族間に交流はないことが多いと思います。特に、再婚後の配偶者や生まれた子と前の配偶者との子の間ではほとんど交流はないと思います。多くの場合、残された相続人は前婚の子の住所や氏名は分からないと思います。

 


(3)  親族間に「いざこざ」があり絶縁状態になっている場合

例えば、複数兄弟間で過去に何らかの「いざこざ」があり、兄弟間が絶縁状態になっている場合があります。その後、両親が亡くなった後、複数兄弟の1人が亡くなったとき、この方に子供がいないと、相続人は残された配偶者と絶縁状態の他の兄弟となります。他の兄弟が既に亡くなっていれば、その子供ということになります。

残された配偶者にとって絶縁状態で亡くなった配偶者の兄弟の所在までは分かる場合が多いと思いますが、その兄弟が亡くなっていれば、その子の所在は分からないと思います。


( 送られてくる手紙の内容 )

司法書士から送られてくる手紙の内容としては、次のような要点となっていると思います。

① 私は、□□さんから相続登記の依頼を受けた司法書士の誰々です。
② ○○さんが×年×月×日亡くなりました。
③ ○○さん名義の不動産があります。
④ あなたが○○さんの相続人の1人です。
⑤ ついては、相続登記などの相続手続に協力してほしい。
⑥ 連絡先電話番号をお知らせ頂くか司法書士事務所に連絡をしてほしい。

文書の書き方には、丁寧なものから横柄なもの事務的なものまで色々あると思います。内容として③の次に相続財産の概要を付け加える場合もあります。

ポイントとなる点は、この手紙で何を求めているかです。通常は、最初の手紙では「相続の発生」「相続手続への協力依頼」となることが多いと思います。司法書士としては相続人とのコンタクト方法を確認して依頼者につなぐことが目的となります。

司法書士は遺産分割方法などについて相続人間で話し合いを行ってもらえる環境を整えることを優先して作業を行います。司法書士は相続人間の話し合いには介入しません。

本人名義で出す手紙の中には、不動産を相続したいので、これから作成する遺産分割協議書に判を押してほしいという、事実上の「相続放棄」を依頼するものがあります。しかし、このような「上から目線」の内容では受け取った相手の不審や怒りにつながりやすくなります。その後の相続手続きが円滑に進まなくなる恐れが高くなります。


(「相続に関する手紙」が届いた場合の対応方法 )

司法書士から相続に関する手紙が届いた場合は、内容をよく確認して司法書士に連絡して詳細な事実関係を確認する必要があります。

確認するポイントしては、①相続人は誰と誰か、②相続財産で不動産以外のものは何か、③自分の法定相続分はどれくらいか、です。

この情報を理解した上で、他の相続人との間の遺産分割協議に臨めばよいと思います。財産がいらなければ放棄すれば良いし、法定相続分は欲しい場合は、話し合いの場で主張することになります。

手紙の書き方が横柄なため気に入らない場合がありますが、相続手続を進める上では感情的になっては損です。冷静に客観的な事実情報を元に最も有利となるような形で交渉を進めていくことが肝要となります。交渉は親族間で直接行うことになります。手紙を書いた司法書士は交渉には介入しません。

 


( まとめ )

「相続登記の義務化」が令和6年4月1日から開始されています。義務化の対象は、これまでに発生した相続も対象に入るため、長い間名義変更が放置されている不動産も対象になります。

そのため、数次相続などが発生していると相続人が不明となり、司法書士からの手紙が増えることになります。手紙が届いた場合は、よく中身を確認して適切に対応してもらいたいと思います。

書き方が気に入らない場合でも冷静に事実確認を行った上で相続分が欲しい場合は遠慮なく主張すれば良いと思います。

 

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