民事裁判のやり方が今後大きく変わっていきます

政府は2022年の民事訴訟法の改正に向けて検討を加速化しています。我が国の民事裁判については、多くの費用や時間がかかるとの批判がありました。この原因の1つとして、裁判手続きの合理化・効率化が遅れているということが挙げられていました。

日本では民事裁判の訴状などの文書を書面として裁判所に持参したり、FAXや郵送しなければならないとされています。令和の時代になっても裁判手続きのIT化が遅れているのです。世界銀行による2018年調査での日本の司法の利便性は、OECD諸国35か国中23位と低位となっています。アジア諸国では、シンガポールや韓国、中国などでは裁判手続きのIT化が進んでいます。政府としてもこれらIT先進国に追いつくために早急な対応が必要となっているのです。

法務省は、現在、裁判手続きのオンライン化を検討しています。つまり、裁判の申立はパソコンなどのIT機器からオンラインによる申立てを認め、その記録を電子化するとともに、裁判期日(口頭弁論期日)についてもウェブ会議(電話会議、テレビ会議など)等を利用した参加を認めることを検討しています。民事裁判で重要な役割を果たす証人尋問なども当事者双方が合意し、裁判所が認めればウェブ会議での実施を可能とする方向で検討が進んでいます。

民事裁判のIT化が実現すれば、民事裁判のイメージが大きく変わっていくと思います。極端な場合は、法廷でのやり取りがなくなり、原告・被告双方のパソコン上でのデータのやり取りとウェブ会議で裁判が進行していきます。必要な資料などは、電子メールでのやり取りとなる思われます。当然、裁判のコストは大幅に少なくなることが予想されます。

また、長期化する裁判の問題に対しては、半年以内に終わる民事裁判制度についても検討が進んでいます。原告・被告の双方が希望した場合に限り、争点をあらかじめ絞り込んで素早く結論を出すようにする裁判制度の創設を検討しています。

2018年の最高裁判所の統計では、全ての民事裁判の提訴から判決や和解までの平均期間は9カ月かかっています。証人尋問をした場合は第1回口頭弁論から結審まで1年4カ月を要しています。複雑な案件であれば数年単位となる場合もあります。

半年以内に終わる民事裁判制度は、これを実現する為に、提出できる主張書面は3通までとし、書面や証拠資料はオンラインでの提出を義務化し、調べる証拠を厳選する、等の規律を検討しています。裁判の終了目途が立たないことから提訴することを諦めていた場合にも積極的に裁判を活用して問題解決が図れることから、民事裁判の活用が進むことが期待されます

裁判が国民により身近な存在になり、社会生活上の問題解決ツールとして簡単に活用できるようになれば良いと思います。代理人を立てない本人による訴訟もITツールが整備されれば広がっていくことと思います。今後の法整備の進展を見守りたいと思います。

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