遺産分割後に「認知された子」が現れた場合、遺産分割はどうなりますか
親の相続が発生し遺産分割協議を終えた後に亡くなった親の認知された子が現れた場合どうなるのでしょうか。親が亡くなる前に認知されていた場合は、認知の記録が親の戸籍に掲載されますので、認知された子も参加して遺産分割協議を行うことになります。しかし、「死後認知」や「遺言認知」の場合は、親が亡くなってから認知されることになります。
今回は、遺産分割後に認知された子が現れた場合の遺産分割協議の取扱いについて見ていきます。

( 「認知」とは )
認知とは、法律上の婚姻関係によらずに生まれた子を、その父または母が自分の子と認める行為です。認知されれば法律上の正式の子となります。相続に関しては、婚姻関係で生まれた「嫡出子」と同じ法定相続分を有することになります。従来は嫡出子の相続分の2分の1でしたが、法改正によって嫡出子と同等となりました。なお、母との関係は分娩の事実によって親子関係が認められますので、通常は、認知ということは発生しないと思います。
認知は、父が任意に行う場合はを「任意認知」と言います。任意認知は、戸籍法上の届出によって行います。役所に届け出れは認知されることになります。子などから父に対して裁判などで認知を求める場合を「強制認知」といいます。裁判手続きには、判決手続きで行う場合と調停手続で合意に相当する審判によってなされる場合があります。強制認知された場合は、裁判確定後10日以内に子などから戸籍法上の届出を行います。

また、任意認知は「遺言書」によっても行うこともできます。本人が存命中は認知しなかったが、自分が亡くなった後に認知するものです。色々と複雑な人間関係があって存命中の認知は憚(はばか)られたが、亡くなった後は真実に基づいた血縁関係を希望する場合の方法です。遺言執行者が戸籍法上の届出によって行います。

さらに、「死後認知」という取扱いがあります。父親が亡くなってか3年以内に、亡くなった父親との親子関係を求める訴えを裁判所に起こすものです。被告となるべき父親はすでに亡くなっていますので、検察官を被告として訴訟を起こします。
検察官は法定訴訟担当として裁判の当事者となりますが、実質的に原告と利害が対立する立場になく、事実関係の把握にも限界があることから、原告の主張を積極的に争う訴訟活動は期待できません。
この場合は、実質的に利害関係があるのは嫡出子などの法定相続人です。法定相続人にとっては、仮に死後認知が認められれは、法定相続人が増えることとなり、遺産分割上重大な影響を受けることになるからです。
そこで、検察官は、これらの利害関係人を積極的に訴訟に参加してもらうための情報提供を行うことになります。検察官からの情報提供に応じて、法定相続人は裁判に「補助参加」して、検察官とともに原告と親子関係の事実を争うことになります。

( 遺産分割後に認知された子が出現する場合 )
遺産分割後に認知された子が出現するケースは、死後認知と遺言認知の場合となります。生前に認知された子は遺産分割協議に必ず参加します。参加しなければ協議自体が無効となるからです。
もちろん、死後認知の場合も遺言認知の場合も遺産分割協議の前に認知が確定していれば、認知された子を遺産分割協議に参加させることになるので手続き上の問題は生じません。認知の訴えが提起されたことや遺言書に認知について書かれていることを知った法定相続人が、認知について決着するまで遺産分割協議を延期した場合です。
遺産分割協議が終了した後に認知された子が出現するのは、遺産分割協議後に死後認知の裁判が確定した場合と遺言書に基づいて戸籍法上の届出が行われた場合です。
これらの場合は、先に行った遺産分割協議の効力にどのような影響が出るか問題になります。

( 遺産分割協議後の認知の遺産分割への影響 )
相続開始後に認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求する場合、他の相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価格のみによる請求ができるに過ぎないとされています。
遺産分割協議によって相続財産の分割方法が確定した段階で分割を無効にして再度やり直すことは、時間と労力の無駄になるからです。遺産分割協議で決まったことは尊重しつつ、新たに相続人になった者のために金銭で法定相続分を保証することになるのです。
認知された子が請求できる金額は、プラスの相続財産のみを計算の基礎として法定相続分で計算した額となります。マイナスの負債は、遺産分割の対象にならずに相続人の法定相続分で当然に引き継がれるからです。

価格の請求先については、単純ではありません。新たに認知された子の出現によって法定相続人の相続順位に変動がなければ、遺産分割協議をした法定相続人に対して請求することになります。しかし、法定相続人の順位に変動が生じる場合は、単純な価格の請求では難しいことになります。
具体的には、認知された子を除いた法定相続人が妻と子供2人の場合の請求先は、2人の子となります。妻の法定相続分は認知された子供の出現によっても2分の1と変わりませんので請求先にならないのです。
認知された子を除いた法定相続人が、妻と亡くなった親の存命の両親や兄弟姉妹の場合は、認知された子の出現によって法定相続人は妻と子となるため、存命の両親や兄弟姉妹には法定相続分はないことになります。
この場合は、単純な価格による請求では解決できないため、「相続回復請求権」によって全面的に遺産の回復を請求することになります。

(まとめ)
遺産分割協議を終えて「ほっと」したところへ突然認知された子が出現した場合は、相続人は混乱することになります。通常の遺産相続のケースでも、時々、依頼を受けた相続手続きのために亡くなった方の戸籍を調査していると過去に認知された子が存在することがあります。
この場合でも、その事実を依頼人である相続人に告げると大騒ぎになります。まして、遺産分割協議が終了した後になって、突然認知された子が名乗り出られた場合は大変なことになります。お金による価格でのみ請求できると言っても現実問題として混乱することは間違いないと思います。
本人が亡くなってから認知の裁判を起こされるケースは稀だと思いますが、起こされた場合は簡単には問題解決できないこととなります。認知裁判に利害関係人として補助参加して認知請求を認めないように頑張ることが当面の対応策になると思います。


