「葬儀費用」の負担を「遺産分割協議書」に書いて協議しても良いですか
父親が亡くなり、相続人として長男、長女、次男がいるとき、長男が喪主として父親の葬儀を取り仕切り、葬儀費用をすべて負担しました。200万円ほど費用が掛かったので、相続財産の分割手続きである「遺産分割協議」で他の相続人に対して配慮してほしいと考える場合があります。
ところが、葬儀費用は父親か亡くなった後に発生した費用であるので相続とは関係ない費用と考えることもできます。また、遺産分割協議の対象にならないと相続関係の本に書かれていることもあります。そのため、遺産分割協議書に葬儀費用について書いてよいかどうか悩むことになります。
今回は、葬儀費用を遺産分割協議書に記載して遺産分割協議を進めてよいかどうかについて見ていきたいと思います。

( 「葬儀費用」とは )
「葬儀費用」とは、通夜、告別式,火葬等で発生した費用のことです。葬儀費用は相続開始後に発生した費用です。相続は本人が亡くなった時点の財産関係の清算(承継)手続きです。そのため、基本的には、葬儀費用は相続財産による清算の範囲外ということになります。
葬儀費用は誰が負担するかという点については諸説あります。上記の葬儀費用の位置づけから「喪主が負担する」という考え方が裁判での主流となっています。これ以外に「相続財産から支払う」「相続人が相続分に応じて負担する」という考え方もあります。

<参考>
相続税の申告が必要な場合は、相続財産から控除できる費用か否かが重要になります。相続税の計算上「葬儀費用控除」のできるものと出来ないものを参考として掲載します。
葬儀費用控除できるものは次のものです。但し、社会的常識の範囲内の金額に限ります。
(1)通夜・本葬費用
(2)お布施、読経料、戒名料
(3)火葬・埋葬・納骨費用
(4)遺骸又は遺骨の回送費用
(5)死体(遺骨)の運搬費用
次のものは、葬儀費用控除できません。
(1)香典返し費用
(2)墓碑、墓地の買入費用、墓地の借入料
(3)法事に要する費用

( 裁判手続きにおける葬儀費用の取扱い )
遺産分割協議が難航して、相続人間で協議がまとまらない場合、裁判手続きにおいて決着する必要があります。その裁判手続きである「遺産分割審判」においては、葬儀費用は相続開始後に発生した費用ですので、被相続人(亡くなった親)が負担する債務ではなく、また、相続に関する費用ともいえないと判断されています。そのため、遺産分割審判においては葬儀費用について判断されません。
葬儀費用についてだれが負担するかについての判断が必要な場合は、別途、民事訴訟を提起する必要があります。つまり、遺産分割協議における判断の対象外なので、判断が必要な場合は、通常の民事訴訟を起こして解決しなさいということです。
但し、葬儀費用の支出金額や分担方法について争いがあっても、相続人間で話し合いの結果、合意が成立する場合は、その合意内容で調整を図り、処理することも可能とされています。相続人全員が葬儀費用の取り扱いについて合意できているのであれば、その内容で処理しても問題ないということです。
具体的には、遺産分割協議中であれば、遺産分割協議の中で協議することができるということです。裁判手続きに入っている場合は、遺産分割審判の前段階である「遺産分割調停」の中で合意して決着することができるということです。

( 葬儀費用を遺産分割協議に書いて協議できるか )
葬儀費用は遺産分割審判の対象になりませんが、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議又は遺産分割調停の対象として一挙に解決することが可能です。争いがある場合、別途、民事訴訟を提起して解決することは負担が大きくなります。できる限り遺産分割協議の中で解決することが望ましいということになります。
もちろん、葬儀費用について喪主がすべて負担することで問題がない場合は、遺産分割協議に含める必要はありません。負担方法について相続人間で合意が必要な場合について遺産分割協議書に書いておくということです。
例えば、今回の事例の長男が負担した200万円の葬儀費用について、次のような遺産分割協議の内容で、実質的に亡くなった父親の相続財産からの負担とすることができます。
<遺産分割協議書>
第〇条 亡くなった父親の葬儀費用200万円は、長男が負担する。
第〇条 長男は、相続した預金のうち、1200万円を相続する。
第〇条 長女は、相続した預金のうち、1000万円を相続する。
第〇条 次男は、相続した預金のうち、1000万円を相続する。

(まとめ)
葬儀費用の負担方法は色々ともめる場合があります。「豪華すぎる」「質素すぎる」など相続人によって色々な考え方があります。そのため、喪主となった者の判断で葬儀を取り仕切る以上、「他の相続人には葬儀方法について文句は言わせない。その代わり葬儀費用は喪主がすべて負担する。」このような葬儀の進め方が従来は多かったと思います。
しかし、最近は葬儀も家族葬など小規模で執り行われるものも多くなりました。また、費用負担についても喪主が全て負担するのではなく、相続人間の合意で適宜の方法で処理したいとすることも多くなっています。
そのような場合は、事前に相続人間で大まかな同意を得たうえで、葬儀費用について遺産分割協議書に記載して負担方法を合意することが良いと思います。


