遺留分制度とは、遺贈や生前贈与などにより特定の者だけに財産が遺された場合などでも、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人(遺留分権利者)に限って、特別に最低限の財産の取り分(遺留分)の取戻しを認める制度です。

この遺留分制度について、制度設計上やや現実的でないところがある為、今回の改正では、一部制度設計を見直しています。

①遺留分減殺請求の効力等の見直し

現行では、遺留分権利者が贈与等を受けた者に対して遺留分を求める請求(遺留分減殺請求といいます)をすると、遺留分を侵害している贈与などはその侵害額の限度で効力を失い、原則として減殺された財産はその限度で遺留分権利者のものとなります。

この場合、贈与された財産そのものを返還する(現物返還)のが原則で、金銭の支払い(価額弁償)は例外という位置づけになります。現実に移転されている現物を元に戻すことは、現実的でない場合もあり、対応に苦慮するケースも発生します。

改正では、この取扱いを見直し、遺留分侵害額請求」によって、原則として金銭債権が発生することとしました。遺留分権利者は、贈与等を受けた者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できることとしました。

金銭であれば、ある程度柔軟に対応することが可能となります。必要な場合、裁判所の許可を得て分割弁済することも可能となります。

②遺留分の算定方法の見直し

具体的な遺留分の額を計算する場合、遺産の総額を算定する必要があります。この遺留分算定の基礎となる遺産総額については、相続時の遺産のみではなく、過去に贈与された資産等を組み入れて計算を行います

この遺留分の計算上算入される贈与の範囲について、贈与を受けた者の区別に応じて次のとおり算定します。

(ア)相続人以外に対する贈与‥原則として相続開始前の1年間にされた贈与に限定されます。
(イ)相続人に対する贈与‥特別受益にあたるものは、特段の事情がない限り、全ての期間の贈与が算入されます。

これについて、改正では、(イ)の相続人に対する贈与の組み入れ範囲を相続開始前10年間にされたものに限定して算入するとしています

これにより、全ての期間という現実的でない組み入れ期間はなくなり、10年間分の特別受益の調査で良いことになりました。

 

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