高齢の単身者が亡くなった時、周囲に迷惑をかけない方法はありますか

総務省の統計によると2018年時点の民間賃貸住宅に住んでいる65歳以上の単身の方は138万4000世帯となっています。高齢化の進展とともに、この世帯数は年々増加の一途となっています。民間住宅の家主の中には、「孤独死」を恐れて高齢者の入居を拒否するケースも増えています。

高齢者が亡くなると様々な手続きが必要となります。主なものとしては、次のようなものがありますが、生前に何ら手当をしておかなければ、残された親しい方や親族など周囲の方に迷惑がかかってしまうことがあります。

(亡くなった後必要な手続き)

① 遺体の引き取り
② 役所への死亡届の提出
③ 相続人その他の関係者への連絡
④ 通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬手続
⑤ 未払いの医療費、入院費、税金などの支払
⑥ 住居の借家契約の解約手続
⑦ 家財の処分と明け渡し
⑧ 水道光熱費、電話、インターネット、新聞などの解約手続と未払い代金の支払
⑨ 健康保険や公的年金の資格喪失届の提出
⑩ 永代供養の依頼

これらの手続きを通常は相続人が行うことになりますが、身寄りのない高齢者の場合は問題となります。遠い親戚しかいない場合も同じような状況となります。

預貯金などの財産がある場合は、お世話になった方などに遺贈するため「遺言書」を作成する場合があります。この遺言書の中で上記の手続きについて遺言執行者にお願いすることがあります。遺言執行者は遺言書の中で適任者を指名しておきます。

遺言者が亡くなった時、遺言で指名された遺言執行者は、残された預貯金を使用して上記手続を行い残った金額をお世話になった方に遺贈するというものです。遺言執行者とお世話になった方が同一人物であれば、その方に遺贈することになります。

しかし、遺言は、本来、遺産の承継について定めるものであり、このような遺言は、遺言執行者が遺言の執行として手続を行うには難しい内容のものが含まれています。例えば、葬儀や残存家財の跡片付けなどは遺産の承継とは言えません。遺言書をもとに遺言執行として作業を行うことは法的に不安な面があります。

そこで、通常は、遺言書とは別に、作業を行う方(受任者)との間で「死後事務委任契約」を締結して、受任者に上記事務手続きを依頼することになります。

受任者と遺言執行者が同一の方でも良いのですが、遺言書の作成とは別に委任契約を結んでおいた方が、亡くなった後の手続きが円滑に進むということです。

また、身寄りのない高齢者の場合は、死後事務委任契約の受任者として適当な方がいない場合も多いと思います。死亡届の提出や各種契約の解約処理などであれば身近な友人でも対応できますが、葬儀や残存家財の後片付けとなると、しり込みしてしまう方も多いと思います。

そのような場合は、公益社団法人や公益財団法人などが受任者として対応している場合があります。住居地の県庁・市役所や公共機関などに問い合わせれば受任者として適当な法人などを紹介して頂ける場合があります。公益法人などの主なサービスは、数十万円程度の預り金で葬儀や残存家財の後片づけを行っている場合が多いと思います。

但し、公益社団法人や公益財団法人では、入院費や税金などの未払い費用の支払については対応していませんので、遺言執行者が遺言執行として残された預貯金などの中から行う必要があります。

ところで、民間賃貸住宅で高齢の入居者が亡くなった時、相続人が分からず残存家財などの処分に困るとの心配から、新規の入居を断られる事例があります。このような状況に対応するため、国土交通省と法務省は、高齢者が賃貸住宅に円滑に入居できるように、家財などの遺品処分の委託先を生前に定めるルールを整備するとの報道がありました。

国が契約書のモデルひな形を令和3年3月までに作成して、民間の賃貸契約時に普及させ家主の不安払拭につなげようとしています。賃貸入居契約の際、高齢者は、契約解除権限や遺品処分の委託先を選んで委託契約をしておき、同時に処分用の報酬も前もって支払っておくというものです。

委託先としては、相続が見込まれる方(相続人や受遺者)が基本ですが、適当な方がいない場合は社会福祉法人や民生委員などの第三者も想定されています。高齢者が亡くなった時、委託先は契約に従って賃貸借契約を解除し遺品の処分を行います。

超高齢化社会の進展に伴い単身の高齢者の心配事は増加していくものと思います。色々な解決手段がありますので公的機関や相続の専門家に相談されると良いと思います。

 

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