不動産の相続による名義変更が義務化される見通し

親が亡くなり相続が発生した場合、不動産の名義変更を行います。これを相続登記と言います。この相続登記をするかしないかは、従来は相続人の自由でした。これが今回法律改正をして強制的な義務化の検討が開始されました。

一般的には、親などが亡くなった場合、相続人の間で遺産の分割の為の話し合いが行われ、話し合いの結果、不動産を取得した相続人が相続登記を行うことが多いと思います。しかし、特に相続登記をしなくても日常生活に困らない為、登記をしないで親などの名義のままにしている方も多いと思います

特に親と同居している場合は、親名義の不動産に住み続けるだけですので特に不便は感じない為、名義変更の意欲がわかないかもしれません。また、都会に住んでいる方が、田舎に住んでいる親の住居や山林などを相続した場合、登記の費用や手間を考えると、ついつい後回しになりがちで、そのまま放置されるケースも多いと思います。

このような状況が長らく続いてきた結果、相続登記がされていない不動産が非常に増えた状況になっています。この問題と最近の少子高齢化の問題が複合化して「空き家問題」という新たな社会問題を生み出しています。

空家問題とは、住む人がいなくなった建物の後始末ができない社会問題です。この空家問題は、最近では地方の過疎地の問題だけでなく都市部でもごく普通に見られる一般的な問題となって来ています。

老朽化した建物が危険である為、対策をしたくとも建物の所有者が不明なため交渉相手が見つからず手続きがストップしています。建物の登記を見ると明治生まれの方の所有名義になっていたりします。その方の相続人は誰なのかを調査する必要がありますが、数代に渡る場合、相続人の数は何十人にもなることが普通です。

東日本大震災の発生により、復興事業として土地の区画整理事業が必要になりましたが、土地の所有名義人が誰か不明の為、この作業が大変難航しています。これを「所有者不明土地問題」といいますが、復興作業にも大変な足かせとなっている状況です。

この空家問題や所有者不明土地問題の解決の為、法務省は平成31年2月8日、民法と不動産登記法を見直すと発表しました。具体的には、相続登記の義務化や所有権の放棄を認める制度の創設、遺産分割の話し合いができる期間の制限などが柱となる模様です。法務省は、本年2月14日の法制審議会総会で諮問し、2020年の臨時国会に改正案を提出したい考えのようです。

現在、所有者不明の土地面積は合わせると九州の面積を超えると言われています。このままこの問題の対策を打たなければ、日本国の国益を損ねる事態になりかねない問題となっています。その為、権利関係を外部からわかりやすくするため、法務省は相続時の登記の義務化を検討し、登記していなければ罰金などを科すことも視野に入れている模様です。

ただ、売買や贈与など一般的な取引上の行為については登記は義務化されていない為、相続登記のみ義務化することは、立法技術上難しい面もあると思います。実施までには、色々な調整が必要になると思います。

「不動産の相続が発生したら相続登記をしなければならない」という法規範の国民への啓もう活動も必要になってくると思います。また、相続登記手続自体をより簡便に出来るようにする仕組みの検討も併せて必要になってくると思います。これからの政府の対応を見守りたいと思います。

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