「相続の相談」はどこにしたら良いですか

相続の相談をどこにしたら良いか分からなくて悩んでいる方が世の中には多いと思います。役所などで時々開催される無料相続相談会の相談員をすることがありますが、「相続は手続が色々あり過ぎて、何からどのようにしたら良いか全く分からない」「誰に相談したらよいか分からない」という声をよく聞きます。


相続の相談には、生前の相続対策のための相談と本人が亡くなった後の色々な手続の相談があります。まず、本人が亡くなった後の問題について考えてみます。


本人が亡くなると葬儀社を手配して通夜と葬儀の準備をします。この中で、葬儀社より「死亡診断書」や「埋葬許可証」、「死亡届」等、まず最初に行わなければいけない公的書類の手配について案内されます。まずは、この案内に従って手続きを行っていくことになります。

次に、案内に従って市区町村役場に「死亡届」を提出すると、役所から行わなければならない手続の一覧が渡されると思います。健康保険や介護保険の手続、年金の手続など役所関係の必要な手続きが一覧化されています。それに従って手続きを行っていくことになります。不明な点は役所の担当者に確認すれば親切に教えてくれます。年金事務所などは手続きに事前の予約が必要なところもあります。


そして、本人の口座から公共料金の引落しがされている場合は、引落先に連絡して引落口座の変更を依頼します。本人名義の預貯金口座は、相続手続の開始により凍結されますので、金融機関などへの本人死亡の連絡はタイミングに注意する必要があります。公共料金の引落先の変更手続については、電力会社などの引落先に確認すれば丁寧に教えてくれます。

ここまでが手続きの第一段階となります。これらについては、専門家に相談しなくても手続は相続人で何とか対応できると思います。


次に「遺産相続」手続となります。相続財産には、自宅などの不動産、預貯金、投資信託、株式、生命保険、車、書画骨董、貴金属などがあります。これらについては「名義変更」手続が必要なものがあります。不動産の名義変更手続のことを「相続登記」といいます。預貯金などの金融資産や車も名義変更手続 (又は解約手続き)が必要になります。生命保険は保険金請求手続きが必要になります。


これらの遺産相続の手続は、それぞれが専門的で面倒な手続であるため不安な方は専門家に相談する必要があります。相談先としては、相続財産に不動産が含まれている場合は、相続に詳しい「司法書士」が良いと思います。これは不動産の相続登記のために取集し作成した書類が、預貯金などの金融資産の名義変更にも活用できるからです。つまり、手続き全体が無駄なくスピーディにできるからです。

司法書士に相談すると次のような段取りで不動産の相続手続きを行います。

① 必要な戸籍、住民票、不動産の固定資産税評価証明書などの書類収集
② 相続関係説明図(家系図のようなもの)の作成
「法定相続情報一覧図」(金融機関等で戸籍や住民票の代わりに使用できる書面)の作成
④ 遺言書の有無確認、自筆証書遺言がある場合は家庭裁判所への検認手続き
⑤ 必要な場合「遺産分割協議書」の作成
⑥ 不動産登記の法務局への登記申請 (不動産の名義変更である「相続登記」の実行)
⑦ 法定相続情報一覧図の法務局への作成申出
 (※この例では、「法定相続情報一覧図」の取得依頼があったケースで説明しています。)

この手続きにより、不動産の名義変更(「相続登記」)が実施されると同時に「法定相続情報一覧図」が、その後の手続で必要な枚数分取得されます。


次に預貯金などの遺産承継手続(名義変更手続)を行いますが、上記で作成した「遺産分割協議書」や「法定相続情報一覧図」を使用して手続きを円滑に行うことができます。ご自身で手続きをしても良いですし司法書士に引続き依頼することもできます。

なお、亡くなった方に借金がある場合、司法書士に依頼しした場合、借金の額を見極めた上で必要な場合は、家庭裁判所への「相続放棄」の手続きを依頼することができます。

遺産分割協議書を作成する過程で「相続税の申告」が必要と判断される場合は、司法書士から税理士を紹介してもらえると思います。

また、遺産分割方法について相続人間に争いがある場合は、いきなり裁判になる前に家庭裁判所の「調停」手続を利用して解決を図ることができます。司法書士に依頼すれば、裁判所への申立書類の作成手続きを行ってくれます。家庭裁判所で調停委員の作成した調停案に相続人が合意できれば、円満に解決することができます。(もちろん、調停が不調に終われば、弁護士に依頼して審判手続に移行する必要があります。)

自働車の名義変更は、陸運局で手続きができます。手続きに不安な方は、自動車ディラーなどに相談すれば良いと思います。


次に本人が亡くなる前の相続対策の相談先について考えてみます。

この場合も相続予定財産の中に不動産がある場合は、相続に詳しい司法書士に相談するのが無難だと思います。商売をされていて顧問税理士がいる場合は、まず税理士に相談されても良いと思います。相続税の申告が予想される場合は、税理士に相談された方が良いと思います。

生前の相続対策として司法書士が対応する代表的なものは、次のものです。

① 自筆証書遺言の作成支援
② 自筆証書遺言の法務局保管制度の利用支援
③ 公正証書遺言の作成支援
④ 家族信託の組成
⑤ 死後事務委任契約の組成  など

(まとめ)


相続登記の義務化制度が令和6年4月1日より開始されます。不動産の相続による名義変更がこれからは義務化されます。過去の相続分も含めて義務化されます。このようなことから、今後は相続が発生したら、まず不動産の名義変更(相続登記)を行う必要があります。

従って、相続に関する相談先としては、まずは近くの相続に詳しい「司法書士」が無難なところになります。相談した結果、税金問題や紛争などが予想される場合は、税理士や弁護士などを紹介してくれると思います。

 

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