「先祖名義の土地・建物がある」方は早めに司法書士にご相談を

相続問題の解決で非常に苦戦する場合があるのが、「先祖名義の不動産の相続手続」です。従来は、相続のたびに不動産の名義を書き換えなければならないという定めはなく、登記費用も掛かることから、先祖名義のまま放置されている土地や建物が多くありました。

特に、田舎の土地や山林などは放置されているものが多くなっていました。また、都市部においても終戦後に建てられた古い建物の中には、建物の登記 (表示登記や保存登記) がされていないものも見られました。現在でも、そのまま放置されているものが多く存在します。


先祖代々の土地・建物は、直系の長男などの事実上の相続人の方が現に自宅等として使用していることが多いと思います。
その不動産を売ったり、担保に入れる必要がなければ、使用にあたって、特に不便を感じることもなかったと思います。

ところが、最近は「相続問題」に対する世の中の関心が高くなっていることから、親が亡くなって相続が発生すると相続人の間で「遺産分割」について話題になります。誰がどの財産を相続するかについて非常に関心が高くなっています。


土地などの不動産については、資産価値が高い場合が多いため、遺産分割方法について相続人の間で話し合いが行われると思います。
このとき不動産の登記簿まで取得して誰の名義になっているかまで確認しないことが多いと思います。

相続人の間で遺産分割について合意ができた場合、近くの司法書士事務所に相続による不動産の名義変更手続きを依頼しに行くことになると思います。そんなとき相談先の司法書士から「この土地の名義人は先々代のままですので簡単には手続ができないかもしれませんよ」と言われることがあります。相続人が合意しているのだから簡単に相続登記ができると期待していたのにショックを受けることになります。

土地や建物の相続による名義変更のことを「相続登記」といいます。相続登記は、全ての相続人の合意が必要になります。先々代名義の不動産に関する相続人は、先々代の相続人、その相続人、その相続人の相続人、等となり人数が膨れ上がり、数知れなくなる場合があります。


関係する全ての相続人を戸籍から調査して、さらに現在の住所を調べ上げて相続手続についての協力を依頼しなければなりません。
相続人の中には、海外在住の方もいるかもしれません。行方不明の方がいるかもしれません。病気や認知症で意思表示が難しい方がいるかもしれません。


いずれにして、全ての相続人を見つけ出して1人1人とコンタクトをして相続登記への協力を依頼しなければなりません。
遠い親戚の場合、初めは何のことだか分らないかもしれません。新手の詐欺だと勘違いされるかもしれません。しかし、相続登記は1つ1つ問題を解決しながら全ての相続人の合意を取ってく手続きが必要になります。


相続登記は、手続きが面倒だからと放置すればするほど問題がより解決困難な方向に進んでしまいます。
相続人の数が少なければ少ないほど解決は楽になります。先祖名義の登記を発見したら、できるだけ早く対応を考える必要があります。

そうはいっても、手続が面倒で費用も掛かるのであれば、引続き放置したいと考える方もいると思います。しかし、そうするとその土地・建物を将来、売ったり担保に入れることはできなくなります。建物の場合、取り壊して新築したいと思っても難しくなります。

さらに、相続登記については、令和3年4月の法律改正で「相続登記の義務化」法案が可決されたことから、さらに対応が急がれることになりました。「相続登記の義務化」法案とは、不動産に相続が発生した場合は、3年以内に「相続登記」をしなければならないというものです。違反者には、10万円以下の罰金(過料)が課せられることになりました。

法律の付則を見ると、新法施行前の相続についても新法を適用するとなっていますので、これまで放置してきた先祖名義の登記も対象になります。新法の施行日は数年先ですが、それまでに何ら手当がされなければ、違反者として摘発される可能性があります。

先祖代々の土地の相続登記手続きは、残念ながら、もはやご自身で解決することは極めて困難であると思います。相続人の調査には一定の権限とノウハウが必要になります。また、一定の裁判手続きを関与させなければ解決できない場合も想定されます。

そのため、できるだけ早く相続登記に詳しい司法書士に相談する必要があると思います。専門家でも解決困難な場合もありますし、解決できたとしても数か月から年単位になる場合もあると思います。

(まとめ)

先祖名義となっている土地などがある場合は、できるだけ早く司法書士に相談されることをお勧めします。時間が経てば経つほど相続登記が難しくなってしまい解決に時間と費用が掛かることになります。

 

 

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