長期間相続登記未了の土地相続人に対して、国が登記を促す通知を出し始めました。

長期間にわたり相続登記がなされていない土地について、相続登記の申請を促すための通知が、各地の法務局から各相続人等に対して順次発送されています。この通知を受け取られた相続人等の方は、少し驚かれるかもしれません。今流行りの「何とか詐欺」ではないかと訝(いぶか)しく思うかもしれません。

現在、国は「所有者不明土地問題」の解消に向け取り組んでいます。東日本大震災の復興事業で土地の整備をしたくとも、所有者不明の土地が多数存在する為に、復興作業が円滑に進まず、大幅な遅れが生じてしまう原因となっています。また、被災地以外でも各種公共工事の現場で、土地所有者が不明の為、土地の収用手続が進まず、事業が遅れてしまうケースも見られています。この為、国は所有者不明土地問題の解決に力を注いでいます。

しかし、所有者不明土地の解消作業は容易ではありません。具体的には、土地の相続登記が長期間放置されている為、現在の所有者が誰であるのか容易に探索することが出来ないからです。相続が数次に渡っている場合、法定相続人の数は大変な数になります。その方々を調査・探索して相続手続を行わない限り、相続登記を行うことが出来ません。

しかし、相続登記が困難だからと言って、このまま放置していても問題の解決にはなりませんし、時の経過とともに事態はより悪化の方向に進んでしまいます。そこで、今回、国が本腰を入れてこの問題の解決に乗り出したわけです。

具体的には、長期間にわたり相続登記がされていない恐れのある土地について、登記簿と戸籍(除籍等含む)を調査して、相続が発生していないか、相続が発生している場合に、相続人として登記名義人となり得る者が誰かを登記官が調査します。ポイントは、登記官(=国)が調査する点です。国自らこのような相続人の調査・探索をすることは極めて異例だと思います。当然、相当の費用(予算)をかけて行っています。国の本気度が感じられます。

相続人の調査・探索の結果は、法定相続人を一覧にした図を作成します。そして、法定相続人に対して通知を発出して相続登記を促します。(正式には、相続登記申請を「勧告」する、です。)また、調査したことを示す情報を登記事項として記録 (付記登記)します。具体的には、該当の土地の登記簿に「長期相続登記等未了土地」と登記官が職権で記載します。

これにより、土地の登記簿を見れば、長期相続登記未了土地であることが一目でわかるようになります。

尚、調査対象となる土地は、一定の条件を満たすものとなっています。全ての相続登記未了土地について調査を行うことは事実上不可能ですので、優先度の高いものを行うということでしょう。

具体的には、①「相続登記未了の状態が30年以上継続している土地」について、②「土地収用法第3条各号に掲げるものに関する事業を実施しようとする区域の適切な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるもの」とされました。

今後、通知が届く方もいるかと思いますが、通知が届いたら相続登記手続を行って頂きたいと思います。勿論、強制ではありません。相続登記をするかしないかは相続人の任意です。

しかし、そのまま放置しても問題は何も解決しませんので、通知を機会に手続をお願いしたいと思います。尚、手続きしたくとも手続き方法が不明の方は、法務局かお近くの司法書士にお尋ねください。

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