遺産相続が終わって新たな財産が発見された場合どうなるのですか

遺産分割協議を行った後、相続人が認識していなかった新たな遺産が判明することがあります。相続手続をする場合、相続財産について調査を行いますが、被相続人が事前に財産目録等を作成して準備していない限り、全ての財産を漏れなく調査することは難しい場合があります。

高額当選の宝くじが発見されることは滅多にないと思いますが、最近はネットバンキングを利用されている方が多くなっているため、預金取引の発見が遅れる場合があります。ネットバンキングの場合、通帳がないことが多く、また取引明細もスマホやパソコン上で確認するため取引明細が郵送されないケースも多くなっています。

また、遠隔地にある山林などの不動産について非課税扱いとなっている場合は、相続財産の調査で漏れる場合があります。(きん)などの現物資産についても保管場所によっては発見が遅れる場合があります。

このように遺産分割協議が終了した後に新たな遺産が発見された場合、行われた遺産分割協議は遺産の一部を脱漏した遺産分割であり、「一部分割」となります。

この「一部分割」の有効性については、原則として有効である考えられています。但し、未発見の財産が遺産分割時に発見されていたならば、そのような遺産分割をしなかったと考えられる場合は、遺産分割協議を錯誤により取消すことができる場合があります。この場合は、遺産分割協議をやり直すことになります。

最初の遺産分割が有効である場合は、新たに発見された財産についてのみ遺産分割を行えばよいことになります。この場合、最初の遺産分割の結果も考慮して遺産分割を行うことができます。最初の遺産分割で多めの財産を取得した相続人の事情を考慮して今回の遺産分割協議を行うことができます。もちろん、相続人が納得するのであれば考慮しなくても構いません。

注意すべき点は、相続財産の増加が発生しますので、相続税について再確認する必要があることです。最初の遺産分割時点では相続税が非課税であっても追加の財産を加えると免税額を超える場合があるからです。また、相続税を納付している場合でも追加財産の分配方法によっては、相続税額の増減が発生する場合があります。

相続税が新たに発生する場合は、修正申告が必要になります。修正申告で新たに納付すべき相続税額が生じたときは、原則として、過少申告加算税延滞税が課されます。但し、税務調査により更正があることを予知してなされたものでない自主的な修正申告の場合は、過少申告加算税は免除されます。

追加で行う遺産分割協議書は、次の例のような感じになると思います。

<追加で行う遺産分割協議書の文例案>

被相続人甲の遺産について、令和3年×月×日付遺産分割協議 (以下「前回遺産分割協議」と言う。) 以降に別紙預金目録記載の遺産が新たに判明したことから、共同相続人A及びBは、次の通り遺産分割協議をした。

  1. A及びBは、前回遺産分割協議が有効であることを確認する。
  2. Aは、別紙預金目録記載の預金を相続する。
  3. Aは、本協議により増加した相続税について、修正申告及び納付する。

‥‥

いずれにしても、相続手続を行う前提としての遺産の調査はしっかりと行う必要があります。調査漏れが後日発見されますと、余分な手続きが発生しますので注意が必要です。できれば、生前に終活の一環として財産目録の整備を行っておくと良いと思います。

 

 

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