身に覚えのない借金の相続に巻き込まれる突然相続が増えています

ある日突然、金融業者などから身に覚えのない借金の請求書が届くことがあります。請求書の内容を見てみると次のような趣旨のことが書かれています。『あなたの親戚であるAさんが亡くなりました。Aさんの相続人を調査した結果、あなたがAさんの相続人であることが判明しました。よって、あなたがAさんの借金を相続人としてお支払い下さい。』と書いてあります。書き方は色々ありますが、趣旨は同じです。

請求主(債権者)で多いのは市町村などの地方自治体です。請求される借金の内容は、不動産の固定資産税とその滞納分です。何年分も溜まっている場合があります。勿論、サラ金などの金融業者の場合もあります。

具体的な事情を確認すると、大抵は次の様な状況になっている場合が多いです。

①遠い親戚で現在交流のないAさんが多額の借金を残して亡くなりました。
②Aさんの第一順位の相続人である配偶者や子は、借金を背負わないように相続放棄を行いました。
③その結果、Aさんの借金はAさんの第二順位の相続人である父母に承継されました。しかし、両親は既に他界しているため、借金は第三順位の相続人に引き継がれることになりました。
④最終結果として、第三順位の相続人であるAさんの兄弟やその子が借金の相続をすることになりました。

第三順位の相続人が相続放棄をしなければ、Aさんの借金は全て第三順位の相続人が相続することになります。

亡くなった方の相続人が借金の肩代わりを望まない場合は、「相続放棄」という手続をとることができます。これは、家庭裁判所に相続放棄の申述を申立てることによって行います。相続放棄により、亡くなった方のプラスの財産もマイナスの負債も一切相続しないこととなります。相続人の間で遺産分割協議書などに「相続を放棄する」、「遺産は一切要らない」と書いても法的には相続放棄とはなりませんのでご注意下さい。

また最も注意すべき点は、相続放棄の申立は、自分が相続人になっていることを知ってから3か月以内に行う必要があるという点です。

通常は、兄弟や叔父叔母が亡くなれば葬儀などに参列しますので亡くなったことは知ると思います。しかし、その時点で自分が相続人であるとは思わないと思います。その後、借金の請求書が届いて初めて自分が相続人になったことを知ることができます。この時点(郵便物が届いた日)が3か月のスタート日となります

調査等のため3ヶ月以内に申し立てが難しい場合は、期間延長の申立もできますが、郵便物が届いた日から3か月以内に延長の申立をする必要があります。

ある日突然、身に覚えのない借金の請求書が届いた場合、ここから申述期間が進行しますので、できるだけ早く対応する必要があります。最近は、金融機関や官庁名での郵便物による詐欺事件が多発していますので、詐欺メールだと勝手に勘違いして放置してしまうと大変なことになります。

身に覚えのない借金の請求書が届いた場合は、お近くの司法書士等に内容を確認してもらうことをお勧めします。司法書士等の専門家であれば、内容の真偽は判別できますので、真正な請求書であれば、亡くなった方の資産調査を早急に行い相続放棄が必要な場合は、急いで手続きをするように助言されると思います。

最近は、夫婦が離婚して母親が子供を引き取り、その後父親が借金を残して亡くなった場合のように、母親に引き取られた子供に借金が降りかかるケースもあります。

親族関係が疎遠になりつつある今日では、親族間の情報交換の場も少なくなっています。盆や正月などに親族が集まって情報交換する機会が減れば、このような突然相続の話は起こりやすくなると思います。

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