新型コロナウィルスは「相続」に何か影響がでますか

新型コロナウィルスの感染拡大が終息の方向へ向かいつつあります。全国に発令されていた緊急事態宣言も一部の地域で解除されています。東京圏や大阪圏の解除はこれからですが、いずれ全ての地域で宣言は解除されると思います。しかし、ウィルスの特性として、今後も2次、3次の感染の発生は予想されていますので全く予断を許さない状況だと思います。

このような状況の中で大切な方がお亡くなりになり相続手続を行わなければならない場合、新型コロナウィルスの影響はあるのでしょうか。結論的には、社会活動の多くが自粛状態にあるため色々と影響があると思います

相続の発生により死亡届を始めとする各種届出が必要になりますが、現在の役場はコロナ対策の色々な影響から非常に込み合った状態になっています。死亡に起因する各種届出の処理に影響は少ないかもしれませんが、届出期限のあるものは余裕をもって行うことが肝要だと思います

また、相続手続では戸籍や住民票、印鑑証明書など公的証明書が必要になりますが、こちらも余裕をもって取得しておくことが肝要となります。

さらに、葬儀をどのように行うかも悩みが多くなります。家族葬が多くなったとはいえ一定人数の親族が通夜から葬儀にかけて集合し3密になる場合が多いと思います。従来型の葬儀を行う場合は、参列人数も多くなるため葬儀会社と綿密に対応方法を相談する必要がでてきます。

遺産承継(相続)手続にも色々と影響がでてきます。遺産承継手続では最初に亡くなった方の遺産を調査する必要がありますが、遺産の中に負債がある場合、判断が難しくなる場合があります。新型コロナウィルスの関係で企業業績が悪化しているため、資産の中で「株式」や「不動産」の資産価値が銘柄や所在地によっては今後値下がりしていくことが予想されるからです

相続財産の金銭的評価は亡くなった時点を基準に判断しますが、資産価値が将来値下がりする可能性が高い場合、負債との関係で相続財産がプラスとなるのかマイナスとなるのか判断に迷う場合があります。資産が負債に比べて圧倒的に多ければ問題ありませんが、将来資産価値が下がって負債の方が大きくなることが予想される場合が問題となります。

負債の方が多ければ「相続放棄」を選択する必要がありますが、相続放棄の申立は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期間制限があります。これを越えてしまうと、原則として、相続放棄を選択することができなくなります。3か月の期間は葬儀や法要、諸届などの時間を考えると決して長いものではありません。

3ヶ月以内に判断が難しいと考える場合は、相続放棄の「熟慮期間の延長」をすることができます。家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の申立てを行えば、期間延長を認めてもらえます。心配な方は3ヶ月以内に申立ててください。

同様に相続税の申告期限についても亡くなってから10か月以内の期間制限がありますが、新型コロナウィルスの影響で申告が間に合わない場合は、期間の延長の申請をすることができます。所轄の税務署と事前によく相談することが必要となります。

相続放棄の判断や相続税の申告にあたって税額に大きな影響を及ぼすものとして「不動産」の評価額があります。相続税の基準となる不動産の評価額は、建物は固定資産税評価額、土地は「路線価」を基準に判断します。

金額的に大きいものは土地ですが、土地の路線価は国税庁が毎年7月に公表しています。その価格は、同年の3月に国土交通省によって公表されている「公示価格」の約8割が目安となっています。この公示価格は同年の「1月1日」時点の市場価格をベースとしています。

つまり、毎年1月1日時点の土地の市場価格をベースとして3月に公示価格が発表され、この公示価格の約8割(0.8倍)が路線価ということになります。新型コロナ拡大前の1月1日時点の価格をベースに相続税の負担額が決定されます。新型コロナウィルスの影響で不動産価格が今後低下していく場合、より高い相続税を支払う必要が出てくるということです

相続した不動産を売却して納税資金を考えている場合、不動産によっては売却に想定以上の時間がかかることが予想されます。売却価格も想定以下になることが考えられます。新型コロナウィルスのワクチンや特効薬が実用化されるまでは、経済活動の縮小が当面続くものと考えられるため、想定通りの金額や期間で売却できる保証はないことになります。

今後しばらくは、「マイナス」成長ということを前提として相続手続を考えていく必要があるということです。新型コロナウィルの影響がなくなるまで暫くの間は難しい判断が相続手続にも求められるということです。

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