円満な相続を行うためのポイントはありますか

親などが亡くなったときに相続問題が発生します。相続人が1人であれば揉めることはないと思いますが、通常は配偶者や子供など複数の相続人が存在します。従来は仲の良かった家族が遺産分割の場面になると、それぞれが自身の権利を主張して険悪な状況になる場合が増えています。たとえ険悪な状況になったとしても、遺産分割の話がまとまれば問題はないのですが、状況がこじれますと「争族」問題に発展します。

このような状況に陥らないための秘訣や妙薬はないかと問われることがありますが、残念ながら「ない」と思います。相続税をいかに少なくするかについては、税務会計の技術的なノウハウにより最適解を見出すことができるかもしれません。しかし、相続税がいかに最小化されたとしても遺産分割で「争族」状態となってしまうと収拾がつかなくなります。

生前に遺言書を作成する場合も増えています。しかし、遺言者の思いだけで作成された遺言書の場合、本人が亡くなった後、相続分が少ない相続人から不満がでます。極端に相続分が少ないと「遺留分」を主張して裁判沙汰になる場合もあります。

円満な相続を行うための秘訣や妙薬はないと言いましたが、できる限り争いを生じさせないようにする方法はあると思います。特別なノウハウや法的技術ではなく、ごく基本的な相続問題への取り組みを行うことによって解決することができると思います。

具体的には、以下のポイントを押さえて相続問題に取り組んで頂くことです。

◆ 相続についての知識を持つ

相続について解説した書物や雑誌も色々ありますのでよく勉強して頂きたいと思います。相続が発生した時点で慌てないように事前に相続に関する基本的な知識を収集してもらいたいと思います。

◆ 生前によく話し合う

被相続人が元気なうちに家族で相続問題について話し合いの場を持ってもらいたいと思います。最初から具体的な遺産分割方法について話し合うのではなく、今後の事について、それぞれの思っていることを話し合ってみることから始めるのが良いと思います。そして段々と話を具体化していくことが大切だと思います。場合によっては、生前贈与の活用などの話も出てくるかもしれません。

◆ 遺言書を作成する

話し合った結果を遺言書として作成する。話し合いの結論を形として残すことが大切になります。単に話し合って結論を得ただけでは、実現可能性は低くなります。結論部分を書面でしっかりと固めておくことが後々の「争族」問題を防止することになります。なお、公正証書で作成することが信頼性や確実性の面で推奨されます。

◆ 遺言書には、遺言執行者を定めておく

遺言者が亡くなった後、遺言書の定めに従って、遺産承継の処理を行う者を遺言書に定めておくことが必要になります。この者を遺言執行者と言いますが、どなたでも良いので信頼のおける方を遺言書で指名します。通常は、相続人の1人か弁護士や司法書士等の専門家を指名します。定めておかないと相続人全員で遺産承継の処理を行う必要があり、円滑に進まないことがあります。

◆ 相続人の話し合いの中では、お互いの立場を理解して思いやりを持つ

ご自身の権利主張することは大切だとは思いますが、お互いの立場や置かれている状況には十分理解を示して配慮してあげることが大切になります。親の介護を長年行ってきた相続人とそれ以外の相続人は、法律的には法定相続分は等しいですが、相続分で一定の配慮も必要となります。

◆ 親族関係を平素より良好に保つ

親族関係が疎遠になり、お互いの状況が分からないと円滑な話し合いは難しくなります。盆暮の親族での集まりやスマホ等のITサービスを活用したお互いの連絡など親族間の情報交換を行ってもらいたいと思います。相続人の中に行方不明者が1人でもいると相続手続は大変難しいものとなってしまいます。

以上、当たり前のことばかりかもしれませんが、結局、これらが揉めない円満な相続を実現するための近道だと思います。簡単そうでなかなか難しい事柄もあると思いますが、1つでも2つでも実践することが、円満な相続に繋がっていくと思います。

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