新幹線の安全神話は、本当に大丈夫か。

JR西日本の新幹線のぞみの台車に亀裂が発生し、あわや大惨事を招く寸前の事故について、会社から原因の調査結果の発表がありました。原因は、台車を製造したメーカーの製造不良とのことでした。

台車の製造メーカーである川崎重工業から納入された新幹線の台車枠が設計上の厚さに足りない不良品だったことが判明しました。不良な台車は、全部で147台もあったとのことです。JR各社は、順次、台車の交換を進めるとのことでした。

川崎重工業の説明によると、メーカーの製造過程で台車と軸バネ座と呼ばれる部分の溶接段階で、溶接の隙間を小さくするために鋼材を一部削ったことを認めています。メーカーの社内規定では、鋼材を削ることは禁止されていたようですが、製造現場では、これが守られていなかったようです。

また、溶接作業自体に一部瑕疵があり、溶接部分に傷があったとのことで、この傷と鋼材の厚み不足が競合して今回の事故に繋がったと説明しています。製造された台車の該当箇所の出荷検査は、特に実施されていなかったとのことです。

さらに、その後のJR側の調査では、こうした溶接部に傷がある台車は、JR西とJR東海の台車製造元の中で川崎重工業製に集中していることが分かりました。川崎重工業製では6・9%に上り、他社製(0・8%)の8倍以上とのことでした。

JR2社は同型の台車について、目視できない内部の状態を確認するため、超音波の探傷検査を実施して確認作業を継続中とのことです。

今回の事故は、新幹線の安全品質に重大な汚点を残しました。幸い人命に繋がる事故の発生には至りませんでした。名古屋駅に停車した段階で、JR東海の現場の点検員の判断により列車を緊急停止させたことは、重大事故の発生を未然に防ぐことができたと思います。JR東海の管理運営能力に救われた形です。

しかし、今回の事故は、一連のミスの連続により発生しています。製造段階での製造内規に違反しての「鋼材削り」は、鋼材を削ることが禁止されていることを知らないで現場が行っていたとしたら、完全な教育不足です。また、知っていて行っているとしたら問題外であり、企業としてのコンプライアンスが完全に失われています。

その後の「溶接不良」についても、他社と比較して不良率が高いのであれば、要員スキルがかなり低いのではないかと思います。さらに、製品出荷段階での台車の「検査作業不足」についても、メーカーでは台車部分の該当出荷検査は実施していないとのことでした。台車の溶接状況の確認は、品質のかなめと思われますので、今後の製品出荷検査のやり方を改善してもらいたいと思います。

その後は、JR西日本の列車「運行管理上の不手際」が重なってしまいました。本来、もう少し早く列車を停車させ、緊急点検を実施すべきであったにもかかわらず、漫然と列車を運行させたことは、大いに反省が必要であり、マニュアルの改訂も必要と思います。

新幹線は、その安全な運行管理も含め、海外に輸出して外貨を稼ごうとしている日本が世界に誇れる社会インフラの1つです。今回の事で、日本の新幹線の安全品質に少しでも傷がつくことのないようにしてもらいたいと思います。

ただ今回は、事故の調査はまだ継続中ですが、ここまでの発表を見ると、内容を隠蔽することなく正直に発表していると思います。その点は良かったと思います。真の原因を正確に把握しないと適切な対策はできないと思います。現状の問題点は課題として全て洗いざらい出して、一つ一つ必要な対策を講じていく姿勢が、品質のさらなる向上に必要だと思います。

その意味で、メーカー各社やJR各社の更なる品質向上を期待したいと思います。

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