富士山噴火時の火山灰被害想定を政府が検討中

富士山が噴火した場合、大量の火山灰が東京方面に向けて首都圏に降灰することが予測されていますが、この被害想定案について政府が検討中であることが報道されました。それによると、過去の噴火の推計から東京二十三区で1~10センチ以上の降灰が予想されるとのことです。

火山灰の降灰によって都市機能は多方面に渡って深刻な影響を受けます。まず、交通が大混乱となります。道路上に堆積した火山灰の為、自動車はスリップを起こしやすくなり制動が利きにくくなります。また、フロントガラスに大量に降灰しますので、視界が利かなくなる場合があります。

鉄道も線路上の火山灰の為、車輪やレールが導電不良となり、送電できなくなる場合があります。これにより、信号系統や踏切も動作できなくなります。

航空機は、エンジンに火山灰を吸い込めばエンジンが故障してしまいます。噴火情報が出れば、離陸は難しくなります。飛行中の航空機は、進路変更を余儀なくされます。

家庭においてもライフラインが厳しい状況になります。まず、電気について、火山灰の重みで電線が切れたり、雨を含んで漏電を起こして送電設備が故障する恐れが出て来ます。これにより大規模な停電の発生が想定されます。

水道についても、浄水場や河川への降灰により給水が難しくなる恐れがあります。ガスは、もともと密閉状態を維持していますので、影響は少ないと思います。但し、交通網や電力網の障害により、設備自体は健全でもエネルギー供給できない恐れはあります。

商業活動や工業活動についても、人々が職場に出勤できたとしても、職場で稼働するコンピュータが灰の影響を受ける可能性があります。コンピュータに限らず精密機械は、一般的に灰などの微粒子の進入が最も苦手です。影響が出れば設備全体が稼働を停止してしまいます。

また、食料面についても首都圏近郊の田畑は降灰により、作物の収穫は激減すると想定されます。洗って食べれる状態だとしても売り物には到底ならないことになります。また、日照不足の影響による生育障害の影響が大きいかもしれません。

さらに最も深刻となるのが、人体への直接的影響です。外出するとなれば、強力な防塵対策を施さなければ、目・鼻・気管支への影響が深刻なものとなります。喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎などの症状悪化が懸念されます。乳幼児や高齢者の呼吸器疾患も心配となります。

富士山の大噴火は、直近のものは、1707年の「宝永の大噴火」です。このときは、都心付近で約4センチの降灰があったと記録されています。300年間大噴火はありませんが、そろそろ警戒する時期なのかもしれません。

政府の検討資料案では、次の想定となっています。

① 降灰1センチまで‥‥一部交通機関に遅延や停止発生
② 降灰10センチまで‥社会・経済活動に障害発生
③ 降灰30センチ以上‥社会・経済活動がほぼ不能

富士山噴火時の降灰予測地図(ハザードマップ)によれば、富士山周辺では、降灰50センチ以上となり、神奈川県では、県内全体が、ほぼ10センチ程度になる範囲に含まれます。横浜市は、県の最東部にある為、影響はこれより少ないと思われます。

万が一、富士山が噴火する危険が高まった場合、気象庁より火山噴火警戒情報が発表されますが、これと併せて、降灰対策に役立たせる為、平成20年3月より「降灰予報」の運用が開始されています。

これは日本国内の火山で一定規模以上の噴火が発生した場合に、おおむね6時間先までに降灰が予想される地域が発表されます。いつ、どの地域に、どのくらい、火山灰が降るか、についての予報が出されます。

降灰量に関する情報は、利用者に分かりやすいよう、降り積もった際の厚さによって「多量(1mm以上)」「やや多量(0.1mm~1mm)」「少量(0.1mm未満)」の3階級で表現されます。

従来は噴火後に予報を発表していましたが、現在は噴火前、噴火直後、噴火後の3段階に分けて予報が発表されます。平成27年3月から、これまでの降灰予報を大幅にバージョンアップし、より詳細な情報を伝える新しい降灰予報運用が開始されています。

気象庁の早期警戒情報を有効活用して、万が一の富士山大噴火発生時の対応体制を整えておくことが必要な時期ではないかと思います。

 

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