過熱する返礼品の「ふるさと納税」に法規制が検討されています

「ふるさと納税」制度となっていますが、実際に故郷(ふるさと)宛てに納税している人は非常に少ないと思います。返礼品を簡単に選択できるWebサイトが色々ありますので、ショッピング感覚で返礼品を選択し、その結果として納税地が決まるようになっています。

勿論、都会で働いている方で自分の故郷の為に制度を利用して納税している方もいるでしょうし、最近の頻発する自然災害の被災地に寄付として納税される方もいると思います。

しかし、「ふるさと納税」制度が本来の趣旨から大きく乖離して、各自治体の過剰な返礼品の提供による税金の奪い合いの様相を呈するようになってきています。政府としても何らかの歯止め策を考える必要に迫られており、今回の法規制の検討開始となったものと思われます。

そもそも当初の制度設計段階では、このような過剰な返礼品の提供による税金の争奪戦になることは予測できなかったかもしれません。導入当初は、利用者は非常に少なかったと思います。制度について知らない国民が多く、税金の還付申告手続も良く分からない方が多かったと思います。

徐々に国民に情報が知れるようになるとともに制度自体の利用方法も色々と改善され、簡単に制度が利用できるような改正が実施されてきました。また、民間業者が、返礼品の選択や納税方法のガイドをWebサイトで提供するようになり、利用者が急激に増加した経緯があります。

これにより、都市部の自治体では、本来予定していた税金が入らなくなり、予定していた事業が実施できなくなる等の弊害が出てきています。都市部は元々人口が多い為に、保育所の整備や高齢者の医療・介護施設の整備に予算が掛かります。また、水道や道路などの社会インフラ整備にも多額のコストがかかりますが、一部で予算不足になって事業の執行が苦しくなっています。

<税収が出超(マイナス)となる自治体>  (平成16年度分 億単位)

東京23区 129億円
横浜市    56億円
名古屋市   32億円
大阪市    24億円
川崎市    24億円
神戸市    17億円
さいたま市  16億円
京都市    15億円
福岡市    15億円
札幌市    10億円
西宮市     9億円
堺市      8億円
豊中市     7億円
仙台市     7億円
吹田市     6億円
千葉市     6億円
市川市     6億円
船橋市     5億円
藤沢市     5億円
北九州市    5億円

今回の法規制のポイントは、① 返礼品は地場産品に限る。② 調達額を寄付額の30%以下とする。③ これに違反した場合は、寄付しても納税の優遇は受けられなくする。というものです。来年の通常国会に法案を提出し、同年4月からの早期施行を目指すようです。

現状では、例えば、簡単な試算として、100ある税金を都市部から「ふるさと地」に移転し、「ふるさと地」では、100から50を返礼品の調達費として業者に支払い、残り50から役所の事務経費に10を使って、残り40を税金として使うことになるのでしょうか。

都市部であれば100を全て税金として使用できたものを「ふるさと地」では色々引かれて40だけが税金として使うことが出来ることになる。悪く言えば、税金が制度を通して目減りしてしまう制度の様にも見えます。

そうは言っても、折角定着してきた制度でもあり、そもそもの制度趣旨から考えて存在意義は十分にある制度です。ここらあたりで一部手直しを実施して、より良い制度として継続的に発展できるようにしてもらいたいと思います。

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