空気中から養分を生成する肥料の要らない作物の研究に進展が

名古屋大学の研究チームが、空気中の窒素を作物の体内に取り込んで養分に変える研究に成功したと発表しました。世界で初めての成功だそうです。通常、作物の栄養素として窒素系の肥料を与えますが、これを全く与えなくとも、作物自身が空気中から窒素を取り込んで成長ができるという画期的な研究です。

植物の細胞の中にある葉緑体に似た微生物に、空気中の窒素を取り込んで自身の養分に変える機能を持たせる方法に成功したとのことです。将来的には、空気から養分を作り出す機能を植物に持たせ、肥料の要らない品種を開発することができることが期待できます。

植物の成長には窒素系の栄養素は欠かせません。通常は、地中にいる微生物やバクテリアが酵素の力によって、窒素系の栄養素を生成しています。この栄養素を植物は根から吸い上げて栄養分にしています。植物栽培において土中の微生物やバクテリアの状態は、非常に重要になってきます。

但し、現代の農業では一定の期間に大量の収穫を上げる必要があることから、このような地中の微生物が作り出す窒素系の栄養素だけに頼ることが出来ません。そこで、普通は化学合成された窒素系の化学肥料を土中に大量に入れることになります。

今回の研究の基本原理である、植物の体内にある微生物や葉緑体等への遺伝子操作によって栄養素を合成できる能力を持たせる具体的な仕組みは良く分かりませんが、この研究の凄い点は、化学肥料の使用を世界中から大幅に減らせる可能性がある点だと思います。

化学肥料の問題は、収穫された作物への影響の問題は別として、その製造過程における工場やその周辺への土壌汚染や水質汚濁の問題があります。世界中の多くの国々で現在も大きな社会問題となっています。世界では、まだまだ食料の確保が最も大切な国の中心施策となっています。その為、大規模な化学肥料製造工場が沢山作られています。

また、化学肥料の工場は、窒素化合物である肥料の製造に莫大なエネルギーを消費しています。名古屋大学の研究チームの発表によれば、窒素化合物の製造に世界中で原発150基分の電力が現在消費されているそうです。このエネルギーが不要となれば、エネルギー問題や環境問題の解決にもつながります。

現在、世界中で稼働している原発の基数は次のとおりです。総数は、443基です。(日本のものは、現在は稼働していないものもあります。)

(原発の基数)

1位 アメリカ 99基
2位 フランス 58基
3位 日本 42基
4位 中国 37基
5位 ロシア 31基
6位 韓国 24基
7位 インド 22基
8位 カナダ 19基
9位 ウクライナ 15基
10位 イギリス 15基
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31位 アルメニア 1基

全世界の原発数 443基

これから見ても、原発150基分の大きさが如何に大きいかが分かります。肥料の要らない作物の開発と対応品種の拡大は、全世界の食糧事情や環境問題、エネルギー問題に大きなインパクトを与えるものとなることが予想されます。世界中で研究開発を加速して、夢の作物の実現を図ってもらいたいと思います。

 

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