離婚時の「子の養育費の算出基準」が増額見直しの方向へ

子のいる夫婦が離婚する場合、子の養育費について大きな問題となります。裁判で離婚する場合、養育費の額がまとまらない場合は、家庭裁判所は実務上「算定表」と呼ばれる一覧表を使用して子の養育費の額を算定します

裁判離婚に限らず、子のある夫婦が離婚する場合、子の養育費は本来、夫婦が話し合って決めます。まとまらなかった場合は家庭裁判所などに養育費支払いを申し立てることになります。

この場合、養育費の算定方法は法律で定められているわけではなく、それぞれのケースで離婚理由など諸事情を考慮した上で裁判官が複雑な計算をして算定していました。これには時間や手間もかかることから、平成15年に東京と大阪の6人の裁判官らの研究会が法律雑誌に「簡易算定方式」なる算定方式を発表しました。

夫婦の収入と子供の年齢や人数ごとに、養育費の目安をマトリクス表で示したもので、一目で養育費の額が判定できることから、素早い紛争解決につながるとして、裁判の現場に広く定着してきました

簡易算定方式では、配偶者の総収入から税金や経費を差し引いた金額を「基礎収入」として養育費を算出しますが、基礎収入は総収入の4割程度と低くなるため、「養育費が低すぎる」「税率改正や物価変動を反映していない」という指摘がありました。例えば、養育費を支払う夫の年収が450万円、15歳の子を養う妻の年収が100万円なら、1カ月あたり「4万円から6万円」と算定されます。

勿論、家庭裁判所は、「算定表」から導き出される金額をそのまま適用するわけではなく、夫婦や子供の置かれた状況を鑑みて、具体的な養育費の額を決定しています。しかし、ベースとなる金額として「算定表」を使用する関係上、金額決定には「算定表」は大きな影響力があります。

このような状況を踏まえて、最高裁判所の司法研修所が昨年7月から「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究を開始しました。東京、大阪家裁の裁判官4人を研究員に選び、今年の3月29日までの計画で調査研究を行っていました。研究成果について、本年5月中を目途に報告書にまとめる計画としていました。そして、その結果の詳細が本年12月23日に公表される運びとなりました。

詳細な内容は、発表を待たないと分かりませんが、概ね、現行基準の1.5倍程度の支給額の増額となることが想定されているようです。「現行の算定表では金額が低く、母子家庭の貧困の原因になっている。」との批判に対して、社会情勢に合わせた改定を行うということになります。

問題は「算定表」が「新算定表」になったとしても支払う配偶者の支払い能力が問題となります。支払う配偶者の年収が低ければ、結局、養育費の額自体は低くなりますので、抜本的な問題解決にはならないかもしれません。相応の年収が期待できるのであれば、強力な法的ツールとして活用が期待できます。

日本の養育費は諸外国に比べて低いと言われています。支払う側の収入を基準とする限り、最低生活費を保障できないケースが生じてしまいます。最低生活費が確保できないような場合は、関係官庁と連携して、公的な支援が受けられる仕組みを設計することも必要だと思います。また、養育費の支払いが途中で止まることも多いので養育費を確実に取り立てる方法についても簡易で安価な方式の実現を図ってもらいたいと思います。

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