身近なトラブルは「民事調停」での解決も選択肢の1つです

「民事調停」と言っても一般の方にとっては馴染みはないと思います。離婚を考えたことのある方は、調停制度の中の「離婚調停」について勉強されたり、実際に経験されたことがあるかもしれません。しかし、多くの方にとって「調停」制度は縁遠い存在だと思います。

交通事故や欠陥住宅など身近な紛争を当事者どおしの話し合いで解決する裁判所の制度が「調停」制度です。紛争の当事者が裁判所に出向き、裁判所に用意された専用の一室で話し合いを行うものです。


当事者どおしの話し合いによる解決をサポートするため、裁判官調停委員が調停に参加して紛争解決の仲介役を担います。調停委員は一般市民の中から最高裁判所が任命します。人生経験豊富な現役を引退した高齢者などが選ばれることが多くなっています。調停委員は、それぞれの当事者から紛争の要点や言い分を聞いた上で、調停委員としての考え方を説明して、お互いの妥協点などを探っていきます。


調停での話し合いの中で調停委員からの話も参考にして、お互いが納得できる条件で紛争の解決案をまとめていきます。十分な話し合いの結果、双方が納得した解決案については、担当した裁判官が「調停調書」に記載します。これによって、調停案は裁判による判決と同じ効果が得られることになります。その後、当事者が合意案に従わなければ、調停調書を判決代わりとして「強制執行」を行うこともできます。


このように簡便に紛争の解決を図る制度が「調停制度」です。調停制度には、「民事調停」のほか「家事調停」「特定調停」があり、全部で3つの種類があります。

「民事調停」は、交通事故の損害賠償、家賃の不払い、敷金返還、マンション管理上のトラブル、売買代金の不払い、欠陥住宅の紛争、ごみ問題、騒音やペット等による近隣紛争、など身近なトラブルに対応しています。


「家事調停」は、離婚、遺産相続問題など家事事件に特化した調停です。離婚訴訟の前の話し合いで利用される場合が多いと思います。また、最近は相続による遺産分割上のトラブルで利用される場合も多くなっています。


「特定調停」は、サラ金やクレジットによる多重債務、災害や感染症による経済的困窮者対策、など特定の分野に特化した調停です。消費者金融による借金返済が困難になった場合に返済猶予などの調停案を求めて行われることが多いと思います。


この中で「民事調停」のメリットについて見て行きます。

(民事調停のメリット)

1.手続きが簡単

申し立てるのに特別の法律的な知識は不要です。簡易裁判所に行けば、申立用紙と記入方法を説明したものが窓口にありますので、それを利用して申立てを行います。その後の手続きも難しくはありませんので、1人で対応することもできます。

2.できるだけ円満な解決が図れる

紛争の当事者が納得した上での解決になりますので、後に遺恨を残さないことができます。


3.費用が低額で済みます

裁判所に納める手数料が訴訟に比べて安くなっています。例えば、10万円の貸金の返還の場合は500円です。20万円なら1,000円です。100万円でも4,000円です。

4.秘密厳守です

調停は裁判とは異なり非公開の場で行いますので、他人に調停の内容を聞かれることはありません。

5.裁判に比べて比較的早く解決できる場合があります

調停ではポイントを絞った話し合いを行うため、解決までの期間は比較的短くなっています。申し立てから2~3回の調停期日が開かれ、概ね3か月以内で調停が成立するなどして事件が解決することが多くなっています。

(民事調停の手続きの流れ)

民事調停は、次のような段取りで手続きが進んでいきます。

① 裁判所への申立
② 調停期日の指定 (裁判所への出頭期日が指定されます)
③ 当事者双方の呼び出し
④ 調停期日での話し合い
⑤ 調停成立

複数回話し合った結果、妥協点が見いだせず調停が成立しない場合は、「調停不成立」となります。この場合は、改めて、対応策を検討する必要があります。必要な場合は「訴訟手続」を選択することになります。

(民事調停制度の積極的な活用推進)

民事調停制度は、使い勝手が良く比較的安価な費用で利用できる制度です。しかし、世間の認知度が低いため、あまり活用されていません。身近な紛争を自分自身で解決することのできる場が用意されているのに制度を知らないため活用が進んでいません。

また、司法制度改革によって弁護士の合格者が増え、世の中に弁護士の数が増えたため、身近な紛争についても弁護士に解決を依頼することが増えたのかもしれません。認定司法書士も簡易裁判所で訴訟活動をすることができるので司法書士に依頼する場合もあるのでしょう。

しかし、専門家に依頼すれば相応の報酬がかかります。自分自身で解決を模索して、だめなら弁護士などに依頼しても遅くはないかもしれません。


最高裁判所も民事調停の利用件数が低迷しているため、積極的な利用推進を目指して認知度向上の広報活動を進めています。

身近な紛争トラブルについては、民事調停も選択肢の一つとして検討下さい。自分1人で対応するのは不安な方は、司法書士が支援できる場合もありますので、お近くの司法書士にお尋ね下さい。

 

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