認知症の親の預金を子供が代理して引き出せるようになるようです

金融庁は、認知機能が低下した高齢者が預金の引出しに困らないように、一定のルールを設けた上で家族らによる代理の引出しを認めるなど、柔軟な取扱いを金融機関に求める方針を固めました。この方針は、全国銀行協会等を通して各金融機関に要請されるものと思われます。

令和2年8月5日、金融庁は、金融審議会の報告書(「市場ワーキング・グループ報告書 ~顧客本位の業務運営の進展に向けて~」)を公表しました。この報告書の中で、「認知判断能力や身体機能が低下した高齢顧客に対する対応」という項目を設け、高齢者の金融取引での代理等のあり方について提言を行いました。

この報告書の中で、高齢者は認知機能の低下や身体機能の低下から、従来のような金融取引が困難になった場合、その家族が本人に代わって金融機関の窓口に預金の引出しに行く必要がありますが、本人意思が確認できない等の理由で手続きが受け付けられない事例が多く見られるとしています

報告書では、さらに本人の医療や介護のため必要な預金の引出しであるにもかかわらず、家族などによる預金の引き出しを認めないことは、顧客の利便性の観点から好ましくないとしています。併せて、各金融機関がより顧客に寄り添った対応を行いやすくなるよう、顧客の財産保護や金融機関のリスク等にも留意しつつ、新しい指針作りを金融機関に要請しています

具体的には、例えば、医療や介護など明らかに本人のための支出であり、病院に医療費を金融機関から直接に振り込む場合など、手続が担保されているのであれば、認知判断能力の低下した高齢顧客本人のほか、本人に代わって取引を行う者であっても、手続を認めるなどの柔軟な対応を行っていくことが顧客の利便性の観点からは望ましいとしています。

今回の金融庁の要請を受けて、各金融機関は全銀協 (一般社団法人 全国銀行協会)と協議をするなどして、統一的な指針又はガイドラインを策定するものと思われます。これにより、高齢者の家族が高齢者本人に代わって(又は代理して)、預金の引き出しなどの銀行取引を行うことができるようになると思います。

もちろん、家族の銀行窓口での簡単な申告のみで預金の引き出しが出来るようにはならないと思います。高齢のご本人が銀行の窓口に来られず、かつ銀行取引(預金の引出し等)が必要な理由が合理的に説明できることが必要になると思います。指針やガイドラインによって、必要な書面(証拠書類)や資料が明示されると思いますので、証拠書類は必要になると思います。

使い勝手が良いものになるかどうかは分かりませんが、現在のように門前払いされる状況ではなくなることは期待したいと思います。現状では、高齢者が認知症になった場合、正式には成年後見人を選任して対応する必要がありますし、意思能力には問題はないが、病気や怪我などで動けない場合は、家族に委任契約(代理権授与契約)をする必要があり、簡単には対応できない状況でした。

この点の煩わしさがなくなって対応できるようになることは、高齢の親を持つ家庭にとっては朗報だと思います。

但し、今回の指針やガイドラインが策定される分野は、金融機関窓口での預金の引き出しなどに限定されてることには注意が必要です。親名義の株や保険を子が勝手に処分することや親名義の不動産を売却することは、たとえ親が介護施設に入所するため必要だからとしても認められません。

認知症の高齢者は、2025年には700万人程度(65歳以上の5人に1人)になると予想されています。また、認知症の高齢者が保有する金融資産が215兆円となる試算もあります。今回のような対応を急がないと、これらの金融資産が塩漬けになる恐れがあるわけです。

できるだけ早急に使い勝手の良い指針が策定されて、全国的な金融機関による啓蒙活動と実施態勢の構築が行われることを期待したいと思います。

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