老後の資金作りの方法「リバースモーゲージ」にリスクはないですか

老後の資金作りとして自宅を担保に融資を受けることのできる「リバースモーゲージ」が、最近話題を集めています。テレビ等でも色々な会社がCMを流しているため、言葉は聞いたことがあるかもしれません。


自宅はあるが、日々の生活資金を年金と預貯金の取り崩しで生活しているシニア層が多くなっています。これらのシニア層は、できればもう少し生活に潤いが欲しいと考える方が多くなっています。ある程度のまとまったお金があれば、体が元気なうちに旅行や好きな趣味などに使いたいと考えています。


また、子供への相続に関する考え方も、これまでは子供にある程度の財産は残したいと考える方が多かったのですが、核家族化の広がりの中で「持てる財産は自分のために使って、子供には特に何も残さない」という考え方も徐々に増えています。

また、お金を貸す金融機関にとっても「マイナス金利」が長期化しているため、利潤の見込める貸出先の開拓に四苦八苦をしています。このような状況の中で、金融機関が目を付けたのが、「リバースモーゲージ」でした。


従来より「リバースモーゲーシ」という融資手法は存在していましたが、ある銀行がこの手法を高齢者の自宅をターゲットにした終活商品として開発したところ、多くの高齢者から好評を得ました。そこで、二番煎じを狙って、色々な金融機関が新商品を開発して市場参入しています。

「リバースモーゲーシ」の仕組みは、自宅の土地や建物を担保に、生活費などの老後資金を借り入れ、借入利息だけを毎月返済することによって、そのまま自宅に住み続けることができるというものです。毎月の利息の支払いがない商品もあります。借り入れた本人が亡くなったら、自宅を売却して一括で返済するという仕組みです。

通常の住宅ローンは、住宅の新築・購入資金としてお金を借り入れて、毎月元本と利息を返済していくものです。ところが、この「リバースモーゲージ」は、お金を借りて元本の返済をせず、亡くなったときに住宅を売却して一括で返済するというものです。

ポイントは、借入金の返済をせずに借りた資金を自分の好きなことに使うことができる点です。海外旅行や孫のお小遣いなど自由に使うことができます。この点がシニア層に受けて人気となっていると思います。

 

ところで、金融機関も融資案件ですので返済が確実な貸出先を選ぶことになります。自宅がある方ならだれでも良いという訳ではありません。

具体的には、次のような貸出条件が金融機関毎に定められています。

(1) 申込時の申込者の年齢

普通は、55歳から60歳以上という条件が付いています。上限年齢は付けないケースが多いと思いますが、設定する場合は80歳以下としている銀行が多いと思います。若い方は利用することができません。

(2) 土地建物の所在地

「都市部の駅近物件」のように人々に人気のある物件が最適です。商業施設に近く、交通の便が良い物件がリバースモーゲージを利用しやすくなります。最終的に売却しますので少しでも高く売れる物件かどうかがポイントになります。この点は各金融機関毎に評価の考え方が分かれるかもしれません。


(3) 住宅の種類

土地付き一戸建てが基本になると思います。マンションは条件が厳しくなると思います。金融機関は担保としての不動産の価値を土地の評価額をベースに判断しますので、戸建ての方が評価が高くなります。リバースモーゲージは長期間の契約ですので建物価値は相当低くなってしまうからです。

(4) 同居者の有無

子供と同居していると融資は難しくなります。配偶者との同居の場合は問題ないと思います。契約終了時は、自宅を売却しますので居住者がいれば売却の障害になる恐れがあるからです。

(5) 資金の使い道

基本的には、何に使っても良いのですが、例外として、投資資金や事業性資金には充当できないとする金融機関が多くなっています。それ以外は、何に使っても問題ありません。よくあるのが、自宅の改修資金や子供への生前贈与の資金です。

「リバースモーゲージ」を利用する場合のリスクは次の通りとなります。

(ア) 長生きリスク

リバースモーゲージには、「契約期間」の定めがあります。例えば、60歳で25年間の契約期間で契約した場合、本人が85歳までに亡くなれば問題ありませんが、85歳以上長生きすれば問題となります。85歳時点で自宅は売却されますので路頭に迷う可能性があります。当初の契約で契約期間を長くするほど借りられる金額は少なくなってしまいますので、超長期の契約期間を設定することは現実的ではありません。この点が最も悩ましい点です。

(イ) 土地の評価額の下落リスク

金融機関は、定期的に土地の評価替えを実施します。担保に取っている土地の評価額を定期的に洗い替えしています。当初想定した担保価値に比べて著しく評価額が低下している場合、差額分を追加で請求される場合があります。当初の契約内容をよく確認する必要があります。

(ウ) 金利上昇リスク

金利が上昇した場合、契約の定め方によっては、追加で金利負担を求められる場合があります。契約自体が長期契約となっているため、全期間固定金利という訳にもいかないため金利変動リスクが発生する可能性があります。

なお、配偶者と同居している方がリバースモーゲージを利用する場合、契約者が亡くなった場合、配偶者に契約を引き継げる商品が普通ですので、その点は問題ないと思います。契約者が亡くなった時点で配偶者の住むところがなくなることは避けることができます。

また、契約の種別に「リコース型」「ノンリコース型」があります。「リコース」とは、「償還」や「遡及」の意味です。「ノンリコース型」とは、遡及されない融資の意味です。

自宅の売却額が借入金に届かない場合、差額は借金として残ります。通常は本人は亡くなっていますので借金は相続人が負担することになります。このとき「ノンリコース型」を選択しておけば、借金は相続人に遡及せず相続人の負担はありません。但し、「ノンリコース型」は「リコース型」に比べて金利が高くなります。


このようにリバースモーゲージには、リスクもありますがメリットも多いと思います。終活時の資金確保の1つの手段として活用できるかもしれません。なお、活用時は、複数の金融機関の商品を比較検討することが大切になります。

特に自宅の資産価値の評価については、各金融機関毎の「相見積り」を取った方が良いと思います。取引相手は金融機関ですので「ぼったくり」的な評価を出してくるものは少ないと思いますが、お客の無知に付け込んで低い査定を提示してくる可能性もあります。「他の金融機関でも評価依頼してもらっています」くらいのことは言っても良いと思います。

 

Follow me!