絶妙なタイミングでの新紙幣発行計画の発表

平成31年4月9日、財務省は新紙幣を令和5年の前半(2024年)に発行すると発表しました。新紙幣への刷新は20年ぶりということです。新元号「令和」の発表に続いての公表ということでお祝いムードが重なる形になっています。

紙幣や硬貨は、高度な偽造技術の伝承の為に定期的に新しいものに変更していく必要があります。日本の偽造防止技術は、現在、世界最高水準を維持していますが、今後とも維持されていくことと思います。

今回、発表のタイミングがすこし早すぎるのではないかと言われています。今回と過去の発表タイミングは、次のようになっています。

前々回 1981年発表 1984年発行 (発表と発行までの期間 3年4か月)
前回  2002年発表 2004年発行 (    同上     2年3か月)
今回  2019年発表 2024年発行 (     同上     5年程度 )

確かに、5年前の発表は少し早い気がします。そこに何か政治的な思惑があるかどうか分かりませんが、結果としてこの時期の発表は、大変良いタイミングだと思います。

新紙幣の刷新には、大きな経済効果が見込まれます。新元号と同じように紙幣の登場人物への関心が高まり、由縁のある場所への観光需要の発生や関係書物、関連グッズの販売などが発生します。さらに紙幣や貨幣の場合は、当然、これに止まらず産業全体への波及効果があります。

経済効果の試算として、紙幣の印刷や硬貨の鋳造の為の原材料やインク関連で約6,000億円、ATMや券売機の改修や買い替えで約4,000億円、自販機の改修や買い替えで約6,000億円、合計で1兆6,000億円程度の経済効果が見込まれています。

世界経済の減速傾向や本年10月からの消費税の増税等、経済環境が厳しさを感じ始めている時だけに元号変更や新紙幣の発行は、2020東京オリンピックや大阪万博に続く経済へのカンフル剤として効果が期待されます。

新紙幣や新硬貨の発行に伴うATMや自販機、切符の券売機等の改修・買い替え対応は、金融機関や飲料メーカー、鉄道会社等にとって重い負担となります。しかし、5年前の早めの発表は、非常に良いタイミングであると思います。

最近は電子マネーが次々と発行されて世の中がキャッシュレスの時代へと進んでいるように思います。諸外国に比べて通貨の偽造が少ない日本において、人々は紙幣や硬貨に対して高い信頼性を持っています。結果として、偽造が横行している諸外国に比べてキャッシュレス化の波は出遅れています。しかし、最近はようやく波が高まりつつあるように思います。

特に銀行などの金融機関は、マイナス金利の影響で経営が苦しくなっている中、ATM等の設置費用や運営コストに頭を悩ませています。メガバンクですら三菱UFJと三井住友がATMの共同利用を計画してコスト削減を計画しています。

このような状況の中での新紙幣や新硬貨への改修対応は、金融機関等に対しては、大変厳しいものがあるように思えます。しかし、キャッシュレス化がいかに進んだとしても紙幣や硬貨が世の中からなくならない以上、機器の改修対応は必要ということになります。

そう考えると5年前の早すぎる新紙幣や新硬貨の刷新計画の発表は、大変良いタイミングということができます。金融機関や鉄道会社、飲料メーカーにとって、計画的に改修計画が立てられることになります。

古くなったので機器を改修したり買い換えた途端、新紙幣対応の為に再投資するリスクを回避することができるからです。二重投資を回避することが可能となります。機器自体が古くなっても何とか使いまわしをして新紙幣や新硬貨対応のタイミングで改修や買い替えを行うことができるのです。

お金は天下の回りものですが、お金が回らなくなれば経済は死んでしまいます。今回の発表を受けて令和の年も経済が順調に発展していくことを望みます。

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