日本のスーパーコンピュータ「富岳」が世界一に

日本のスーパーコンピュータ「富岳」が世界でスーパーコンピュータの性能評価を行う専門家プロジェクト「TOP500」で世界一位と評価されました。世界一位の記録は「京」が2011年に達成して以来9年ぶりの快挙となりました。

「富岳」は、日本の理化学研究所 計算科学計算センターで開発されたものであり、民主党政権時に「2位ではだめなのか」と事業仕分けの俎上に上った「京」に続く後継開発マシンです。今回は、計算速度以外の評価対象となる部門全てで一位を獲得し「四冠」達成という驚異の成績となりました。

世界最速の処理性能は、毎秒41京5,530兆回で2位の米国「サミット」の毎秒14京8,600兆回を大きく引き離しています。3位は米国の「シエラ」で毎秒9京4,640兆回となっています。なお、「富岳」は先代の「京」の100倍の性能です。

計算速度以外の部門でも一位となっていますが、具体的には、「産業利用でよく用いる計算手法の性能」部門、「人工知能(AI)の分野で使う計算性能」部門、「ビジネスデータ解析の指標となる解析性能」部門の三部門で一位です。

従来のスーパーコンピュータの性能競争は、計算速度を高めることが最大目標となっている感があり、そこに集中して性能開発を繰り返してきました。その結果、開発コストは高まり、完成したスーパーコンピュータは計算速度は確かに早いが、それを有効に使いこなすには高い技術力とコストが必要となり、十分に使いこなすことが難しいものとなっていました。

「富岳」は、実際の使用状況を想定して、使えるスーパーコンピュータを目指して開発されました。開発にあたって目標としたのが、「省電力」と「汎用性」でした。汎用性とは簡単に言えば、使い勝手の良さのことです。

スーパーコンピュータの開発競争は、計算速度を高めるために汎用のCPU(中央演算装置)に代えて、GPUという特殊な演算装置を多用していました。GPUとは「Graphics Processing Unit」の略で、高速処理を必要とするパソコンケームを楽しまれる方なら周知のユニットですが、3Dグラフィックスなどの画像描写を行う際に必要となる計算処理を行う半導体チップ(プロセッサ)のことです。

GPUを多用すると処理性能はより高まりますが、用途が限られる欠点が出てきます。また、GPUはCPUに比べて価格が高く、電力も余計に食うものとなります。これに対し、富岳に搭載されている約16万個のCPUは、既存のスマートフォン向けCPUをベースに計算性能と省電力性能を大幅に改良したものを使用しています。

富岳はCPUが汎用性のあるものとなっているため、これまで使用してきたソフトウェア資産やソフトウェアの技術をこれまで通り活用することができることから実際の運用面で大変使い勝手の良いコンピュータとなっています。まさに処理速度以外の部門での一位が重要なポイントとなっているのです。

現在問題となっているのコロナウィル対策についても、ウィルスの飛散状況に関するシュミレーション解析で既に富岳は試行活用され、ウィルスの飛散状況を目に見える形で提供しています。汎用性のある富岳は、自然災害予測や宇宙開発、AIへの活用など、今後さまざま分野で活用が期待されます。

最近、日本の科学技術に対する信頼性にやや陰りが見え始めた中で今回の偉業達成は、日本の技術力の高さを改めて世界に示すことができ大変誇りに思います。目先の利益に拘泥せず本質を追求したことが成功の鍵だったような気がしています。

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