新型コロナウィルスのワクチン供給は慎重にお願いします

新型コロナウィルスの国民へのワクチン供給とその確保をめぐり、厚生労働省が精力的に活動しています。7月31日、厚生労働省は、米製薬大手ファイザー社との間で、同社がワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに6,000万人分の供給を我が国が受けることで基本合意したと発表しました。

また、イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」社がオックスフォード大学と共同開発中のワクチンについても、日本政府が近く、1億回分以上の供給を受けることで合意する見通しであることが報道されています。

日本の大学・研究機関や製薬会社でもワクチン開発は進められていますが、海外の製薬会社の方が先行して開発が進んでいます。海外では、最終の治験段階に入ったワクチンについて、世界中の国々が、自国への供給確保のための争奪戦を繰り広げています。

これまでワクチンを開発するには、通常は何年も時間を要してきました。現在、ワクチン開発で世界の最先端を走る製薬会社は、バイオテクノロジー技術を駆使した「遺伝子ワクチン」という開発技法を採用して開発を進めています。これにより、従来に比べて開発期間を大幅に短縮することが可能であるとされています。

上記の製薬会社でも、この技術を駆使して開発を進めています。その結果、「ワクチンを被験者に接種したら抗体ができた。」とその効果の高さを既に発表しています。

しかし、ワクチン開発の専門家の中には、新型コロナウィルスの性急なワクチン開発に警鐘を鳴らす人もいます。従来、ワクチン開発は長い期間をかけて慎重に開発が進められてきました。過去のワクチン開発では、9年から17年程度の開発期間を要していました。それを1年程度の短期間で開発することに一抹の不安を感じているのだと思います。

ワクチン開発のポイントは、ごく簡単に言えば、ワクチン接種によって、抗体が体内にできるのか、できた抗体は十分な量ができるのか、できた抗体でウィルスに対して効果があるのか、できた抗体の体内での保持期間は十分なものか、そして、人体への安全性に問題はないのか、となると思います。

臨床試験の段階でワクチンを摂取した被験者に抗体ができたとしても、それが十分な量でウィルス除去に十分な効果があるかどうか分かりません。また、仮に効果が認められたとしても、その効果がどれくらい長続きするかも見極める必要があります。

そして、人体への安全性についても特に慎重な治験が必要になると思います。「欧米人への影響と東洋人への影響に差異はないのか」、「すぐには発現しないが時間を経て発現する副作用はないのか」、など治験自体に時間を要するものがあると思います。

専門家の中には、安全性や予防の効果を見極めるには、大規模な接種から1年程度経過しないと分からないと考えている方が多いと聞いています。今後、厚生労働省は、海外で認可されたワクチンについて国内での承認手続きをどのように行うか分かりませんが、特例承認によって早期に承認するかもしれません。

厚生労働省としても過去の苦い薬害事件の経験もあり、安易な承認手続をすることはないと信じていますが、政府の中には、来年の東京オリンピック開催や経済の早期の回復との関係で承認手続のスピードアップを求める方もいるかもしれません。

承認手続きは、必要な手順を踏んで、十分な治験データを基に慎重に判断してもらいたいと思います。仮に特例承認された場合、自分自身がワクチンを接種をしたいかと問われると、急いで摂取する気持ちにはなれないかもしれません。

ワクチンは99%の方に有効でも1%の方に副作用が出れば問題となります。特に、重篤な副作用が出れば大変なことになります。99.999%など、どこまで9を満たすことができるか、人類の英知で9を限りなく追及してもらいたいと思います。

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