新型コロナの影響で生活保護申請が大幅に増加しています

緊急事態宣言が全都道府県で解除され「新しい日常」が本格的に開始することになりました。緊急事態宣言によって傷ついた経済状況のV字回復は「新しい日常」での制約の多さから難しい状況となっています。事業者にとって半減以下となっていた売上が7 ~8割まで回復したとしても事業の存続は大変厳しいものと考えられます

新型コロナウィルスの特定警戒都道府県に指定されていた道府県庁所在地の多くで、4月の生活保護申請件数が前年と比較して2~5割増加していることが共同通信社の調査で分かりました。休業要請に伴い雇用情勢が悪化しているためと考えられます。東京都は未集計のため調査されていませんが、大きく増えていることが予想できます。県庁所在地以外の申請件数も今後徐々にに増加していくことが考えられます。

生活保護申請に至らないまでも収入の減少により生活が苦しくなっている方は多いと思います。個人の生活は、会社のように事業が立ち行かなくなれば、廃業・倒産で終了という訳にはいきません。日々生活していく必要がありますから経済的に立ち行くようにしなければなりません。

個人として収入が減少し今後も回復の目途がない場合、生活水準の切りつめで乗り切れれば良いのですが、それが難しい場合も多くなっています。特に、借金を抱えている方は問題の解決がより難しくなります

借金の中で多いものは、「住宅ローン」の返済です。現在、多くの金融機関では返済方法の見直し相談に応じてくれるところが多くなっています。早めに相談に行かれることをお勧めします。

住宅ローン以外の借金としては、「自動車ローン」や「教育ローン」があります。これらもローンを組んだ金融機関や提携会社に見直しを相談することが必要ですが、住宅ローンのようには簡単には応じてくれないと思います。但し、相談する価値はあると思います。

また、生活費など使途が自由な「消費者ローン」や「カードローン」による借金があります。こちらは個人のレベルで交渉しても簡単には見直しに応じてくれないと思います。

個人レベルの交渉では解決の目途かつかない場合は、法律の専門家による解決を考える必要があります。借金問題の解決を広く「債務整理」と言いますが、この中には色々な解決方法があります。その方の置かれた状況に応じて最適な解決手法を選択することが必要です。

債務整理には通常4つの方法があります。借金の返済を前提とする方法と返済を諦めて借金を棒引きにする方法があります。返済する方法には「任意整理」「民事調停」「民事再生」の各手段があります。借金棒引きは、「自己破産」となります。

まずは、「任意整理」です。これは法律の専門家が債権者と交渉をして、借金の元本は維持したままで、過去の延滞利息や将来の支払利息を免除してもらうものです。また、返済期間も返済ができるように長くしてもらいます。金利が高い消費者ローンなどに向いている方法です。借金の返済の困難さが比較的軽い場合に選択できる方法です。

次に「民事調停」です。「特定調停」とも言います。これは、裁判所に申立てて借金の整理を調整してもらうものです。法律の専門家に依頼しても良いのですが、ご自身で実施することもできます。裁判所では調停委員が債権者との間の話し合いを仲介してくれます。債権者との話し合いがまとまれば、調停が成立することになります。調停案は、通常、元本と過去の延滞利息は維持したままで、将来の支払利息を免除してもらいます。また、借金の返済期間も長くしてもらいます。任意整理よりもご自身で対応すれば手続費用が安く済みます。こちらも任意整理と同様、借金の返済の困難さが比較的軽い場合に選択できる方法です。

さらに「民事再生」があります。「個人再生」とも言います。これは、法律の専門家が裁判所に申し立てて借金の大幅な削減を申立てるものです。住宅ローンを抱えている方で、持ち家と住宅ローンは維持したまま、それ以外の借金の大幅なカットを希望している方に向いています。但し、住宅ローン以外の借金を5分の1 (借金の額によっては10分の1)にできることから、返済のできる収入が見込めることなど、法律上の要件が厳しく定められています。圧縮された借金を原則3年間で返済することになります。手続き費用や時間がかかることから、ある程度の借金がないと行うメリットがありません。

最後は、「自己破産」です。借金をご自身の返済能力では返せる目途が立たない場合に法律の専門家に依頼して借金をゼロにしてもらう方法です。裁判所に申し立てて行います。住宅や車などの保有資産は全て手放さなければなりませんが、申立後に稼いだ収入は自己の財産として保持できます。手続きは保有資産の売却手続と免責(借金をゼロとする)手続に分かれますが、保有資産が少なければ売却手続きは実施されません。(これを「同時廃止」と言います。) 借金をした事情が悪質な場合など、一部のケースで免責が下りない場合もあります。

新型コロナウィルスの影響による危機的な状況の中では、自己破産の申立も今後増加してくるものと思われますが、失業なども伴っている場合が多いことから、自己破産の申立と共に生活保護の申請も併せて必要になってくるケースが増えてくると思います。

生活保護申請は、自身を守るための最後のセーフティネットとしての権利ですので必要な方は積極的に活用をご検討ください。

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