成年後見制度の運用が平成31年4月から一部変わります

認知症などで判断能力が不十分となった人を支援する成年後見制度について、最高裁判所は、平成31年4月より本人の能力判定に使う診断書の様式を変更するとの報道がありました。

成年後見制度には、判断能力の強弱に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があります。判断能力が最も低くなっている方に対して、本人の権利能力を著しく制限する類型が「後見」です。この状態に至らない方に対しては、その低下のレベルに応じて「保佐」「補助」の類型が用意されています。「補助」類型の場合は、本人の判断能力の衰えはごく一部ということであり、通常の方に近い状況であると言うことができます。

現在の運用では、判断能力が衰えているとして成年後見制度の申立を行うと、通常、医師が本人の問診を行い診断書を作成します。これを基に家庭裁判所が「後見」「保佐」「補助」の中から相応しい類型を判定しています。

但し、現在の診断書の様式が「後見」を中心とした項目が中心となっている為、判定が「後見」となってしまう割合が高くなっています。平成17年の統計では、「後見」と判定される方が全体の79%となっています。「保佐」は16%、「補助」は5%に過ぎません。

「後見」と判定されれば、本人の権利能力は大幅に制限されてしまう為、申立に躊躇(ちゅうちょ)してしまう傾向が見られています。「保佐」や「補助」類型の様な緩やかな権利制限によって本人の権利保護を図る制度の活用を希望していても「後見」と判定されてしまう恐れが高くなっています。 一旦出された判定は簡単には変更できませんので、申立がより慎重になってしまっています。これでは、制度の活用が進まないと思います。

今回、このような不具合点を解消するために診断書の様式変更を実施することになりました。具体的には、従来の判定項目は財産管理能力のみに着目した診断項目でしたが、これに記憶力やコミュニケーション能力などの診断項目を新設し、日常生活能力を正しく反映できる内容としました。

従来、家族の助けがあれば意思疎通ができるが、多額のお金の計算や管理ができない方は、「後見」と判定されていました。今後は状況によっては、「保佐」や「補助」に判定される可能性が高くなると思われます。

診断書の改訂に加えて、付属資料の新設も行われるようです。福祉関係者が本人の生活状況を観察して記入する「本人情報シート」が追加されます。日常におけるコミュニケーション能力や介助の要否、外出の頻度など診断書では表現できない本人の日常生活状況をきめ細かく裁判所に伝達する手段が増えることになります。これにより、家庭裁判所はより的確に後見類型を判断することが可能になると思います。

高齢化の進展で成年後見制度の利用は今後待ったなしで拡大していくと思います。後見類型を本人の生活能力に応じてより適切に判定対されるようになれば、制度の利用促進も進んでいくと思われます。その意味で今回の運用変更は大変望ましいものということができます。今後とも制度の見直し改善を進めて頂きたいと思います。

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