成年後見人への報酬の算定方法が見直されます。

認知症などで判断能力が低下した方を支援する制度である「成年後見制度」の運用面の見直しが最近相次いで実施されています。今回、最高裁判所は各地の家庭裁判所に対し成年後見人の報酬基準の改定を求める通知を発出しました

今回の見直しは、成年後見人に弁護士や司法書士等の専門職が就任した場合の報酬のあり方に関するものです。今回の改定は専門職後見人に限定したものではありませんが、成年後見人に親族がついた場合、通常、報酬は付与されませんので、事実上専門職後見人に対する話と言うことができます。

 

見直しのポイントは、専門職後見人への報酬の算定方法を、従来の「保有資産の財産額」基準から専門職後見人が行った「業務の難易度」基準に変更する点です。

現在の報酬の決め方は、各地の家庭裁判所によって決定されていますが、各家庭裁判所では、報酬額の目安を定め運用しています。

例えば、東京家庭裁判所の例では、基本報酬額は月額2万円となっています。そして、被後見人の保有資産が1千万円超~5千万円以下の場合は、月額3万円~4万円、5千万超の場合は、月額5万円~6万円となっています。

専門職後見人への報酬額が、資産に比例して支払われる基準の考え方は、「資産が多ければ専門職後見人の為すべき業務も多いはずだ。という考え方に基づいています。しかし、現実には、専門職職後見人の毎月の業務が、定例の振込作業だけのケースもあり、被後見人の親族から見ると支援サービスに対して報酬が高すぎるように見える場合がありました。

今回、最高裁判所が各地の家庭裁判所に通知した内容は、専門職後見人が行った支援業務の内容に応じて金額基準を定め、これにより報酬額を決定するというものです。被後見人にとって必要な介護サービスや福祉サービスを選定し契約を結ぶ等の日常業務に対して報酬を決めていくということになります。

この改定により、具体的に働かない専門職後見人の報酬は低下し、被後見人にとって必要な業務を熱心に行う専門職後見人の報酬は増加することになります。

専門職後見人に就任しても、本人に面会することもなく、管理は介護施設の担当者に月1回程度の電話確認と必要な費用の振込処理のみ行っている専門職の報酬は大幅に低下することが予想されます。今後は、毎月本人と実際に面会し、生活状況を具体的に観察して、必要な支援業務をこまめに行うことが必要になってくると思います

課題としては、保有資産があまり多くない方で本人の状況により、多くの支援が必要とされる方について費用負担が増加する懸念がある点です。これらの方の場合、報酬額が現在より高くなってしまう場合が想定されます。このようなケースの場合には、上限額を抑えるなどの支援策も併せて必要になって来るのではないかと思います。

新しい運用方法はこれからですので、実施に当たっては、運用上の課題や問題点を抽出して更なる改善に結び付けてほしいと思います。

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