コロナによる「借金が返せない」相談が今後増えてくる懸念があります

コロナの影響で収入が大幅に減った方が増えています。収入減少にとどまらず、雇い止めや解雇になり職を失った方もいると思います。コロナ感染の初期の段階では人流が抑制されたことから、派遣社員、タクシー運転手、イベント会社の社員、飲食店やホテルの従業員などに大きな影響が出ました。行動制限の緩和された最近では、コロナの後遺症で思うように働けない方が増えています。


(コロナ下での政府の対応)

政府も対策として様々な施策を展開してきました。企業に対しては、通称「ゼロゼロ融資」と言われる融資制度で支援しました。コロナの影響で売り上げが低下した企業に対し、無担保・無利子で融資する制度です。個人事業主や零細企業は最大6,000万円、中小企業は最大3億円が借りられました。

ゼロゼロ融資には信用保証協会が保証をしており、返済できない場合は信用保証協会が立て替えることになります。信用保証協会が保証している保証債務残高は40兆円を超えているとされています。このゼロゼロ融資の返済(利払い)が2023年5月より開始されます。

個人に対しては、「コロナ特例貸し付け」と呼ばれる制度で支援をしました。2020年3月に開始された制度で、最大20万円「緊急小口資金」制度と最大60万円を3回まで貸す「総合支援資金」制度の2つがありました。合計200万円まで借りることができました。いずれも無利子となっています。1兆円4千億円が貸し出されています。緊急小口資金は2年以内、総合支援資金は10年以内に返済が必要で、早い人は2023年1月より返済が開始されています。


(コロナ終息後に待ち受ける「借金問題」)

コロナの感染による社会的な影響は徐々にコントロールできるようになり、行動規制も緩和されています。病気自体も徐々にインフルエンザ並みの対応になりつつあります。しかし、コロナ下で事業の生き残りや生活支援のために借りた「借金」の返済はこれから始まります。

世の中は世界的な資源高による「物価高騰」が続いています。各国の金融当局は物価高を抑え込むため利上げを行っています。日銀が短期金利などの「利上げ」に踏み込むのも時間の問題となっています。利上げに踏み出せば、今後、住宅ローン金利は上昇し毎月のローン返済額が増加します。

また、公的な融資だけでは足らなくなり、銀行のカードローンやクレジットカード、サラ金などで借金を重ねて「多重債務」状態に陥ってる方もいると思います。

このようにコロナによる危機を公的な融資やその他の借入で何とか乗り切ってこられた方にとって融資の返済が始まる令和5年以降が大変なときとなります。特にコロナで離職されて求職中の方やコロナの後遺症で療養中の方にとっては「借金の返済」は多くの困難が伴うと思います。

(借金問題の解決方法)

借金を解決する方法として、まず最初に考えることは親兄弟などの親族に援助を要請することです。親族に資力があり救済の手を差し伸べてくれれば解決の光が見えてきます。しかし、多くの場合、親族に頼ることは難しいのが現実です。

親族に頼ることができない場合は、自力で解決しなければなりません。公的な融資や銀行での融資などは、借金の返済が難しい場合は、まず、それぞれの相談窓口で相談してみる必要があります。一定程度の期限の猶予や利子などの減免については応じて貰える場合があります。

しかし、小手先の調整だけでは返済の目途が立たない場合は、単なる相談では有効な解決策を見つけることは難しくなります。クレジットやサラ金業者などからは容赦なく借金の督促状が届くことになります。この状況になると日々の返済に追われて物事の判断が正常にできなくなる場合があります。

こうなれば、法的な解決方法を考えていくことが必要になります。


(借金問題の法的な解決方法「債務整理」について)

借金問題の法的な解決には、次の4段階があります。⓪は正常な返済行為です。

⓪ 元利金を期限通り返済する。
① 元利金を期限の猶予をしてもらって分割して返済する。
② 元利金を期限の猶予と利息の一部免除をしてもらって分割して返済する。
③ 元利金の一部を免除してもらって分割して返済する。
④ 元利金の返済を免除しもらう。

①と②を法的に行うことを「任意整理」や「特定調停」といいます。③は「個人民事再生」といいます。④は「自己破産」といいます。

「任意整理」は、弁護士や司法書士が債務者の代理人としてサラ金などの債権者と交渉して返済期限の猶予や利息の一部免除などを交渉するものです。交渉が合意できれば、合意内容に従って借金を返済していきます。

「特定調停」は、債務者である本人が裁判所に調停を申立てて、裁判所でサラ金業者などの債権者と返済期限の猶予などの交渉を行うものです。裁判所が両者の間に立って交渉の合意に向けて動いてくれます。合意が成立すれば、合意内容を裁判所が確定し、それに従って返済していきます。

「個人民事再生」は、このままいけば破産の恐れがあるため借金の一部を分割して返済することを条件に残りの借金を免除してもらうものです。借金の免除額は、借金の額や保有している資産に応じて変わりますが、通常5分の4が免除されます。例えば、500万円の借金の場合、100万円を分割して3年間で返済できれば、残りの借金400万円は免除されます。

債務者が裁判所に申立てて行います。原則として、債権者の過半数の同意が必要になります。

同意しなければ破産の可能性が高くなることから債権者の多くは同意することが多いと思います。給与所得者の場合は、分割して返済する金額を決める基準を厳しくすることによって、債権者の同意を不要とする制度を利用することもできます。

また、住宅ローンの返済は継続しつつ、それ以外の借金だけ債務整理できる制度(「住宅資金特別条項」)を個人民事再生では利用することができます。

「自己破産」は、借金の返済の目途が立たない場合、債務者が裁判所に申し立てて保有財産の処分と債務の免除(「免責」といいます )をしてもらうものです。保有している資産のうち一定のものを除いて全て処分して借金の返済に充てる必要があります。処分する財産がなければ、処分行為は発生しません。

債務の免除にあたっては、一定の免責不許可事由が定められており、債務者の行状によっては免責が認められないケースも稀にあります。また、借金のうち税金や社会保険料、養育費など免除されないものがあります。


(債務整理の前提事項)

「任意整理」、「特定調停」、「個人民事再生」は、借金の返済を前提としています。そのため、大前提として、借金返済のための資金確保の目途がなければ交渉の余地はありません。特に「個人民事再生」は、将来的に安定した収入の目途が必要になります。「無職」や「休職中」では申立できません。

従って、何らかの理由で無職の方は、まず最初にハローワークなどで職を探して安定した収入を確保することが必要になります。病気などで通常通り働くことが難しい場合は「生活保護」の申請も視野に入れて考えることが必要です。低収入でも一定の収入を確保できるのであれば、生活に必要な差額を生活保護で埋めてもらうような生活設計も選択肢となります。


また、「自己破産」の場合は、破産後の生活設計が重要になります。破産時に無職の場合は、まず定職を探す必要があります。病気などで就職が難しい場合は「生活保護」の申請を考えます。借金はゼロにできてもその先の生活の目途が立たなければ問題の解決になりません。

自己破産をして免責を受けると再度の自己破産は7年間はできません。つまり、7年間は法的な最終手段は使えないことになります。そのため、自己破産を選択する場合は、その後の生活設計をきちんと作っておくことが何よりも大切になります。現在、安定した職がある方は、破産後の収入は自分の財産として自由に使うことができます。借金の返済に後から追徴されることはありません。

(まとめ)

コロナ後の大きな問題として「借金」問題の発生が憂慮されています。借金で困っている方は市町村役場で相談するのも良いと思います。役場によっては、地区の社会福祉協議会と連携して、担当のカウンセラーがついて支援してくれる場合があります。

本格的な法的支援が必要な場合は、弁護士や司法書士が「債務整理」事件として受任することになります。専門家への報酬は、「法テラス」を活用することにより、国に立て替えてもらうことができる場合があります。生活保護受給者については立て替え金の返済が免除されることがあります。


1人で悩まないで、まずは公的機関を利用して相談されることをお勧めします。

 

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